もくじ
第1回母からもらった文庫本 2019-03-19-Tue
第2回渋谷のしゃぶしゃぶデート 2019-03-19-Tue
第3回必要以上に力まずに。 2019-03-19-Tue

編集者。青空と雨の日、森と海の中、散歩とサウナとカレー、コモンとアンダーソン・パークに、元気をもらっています。

海からの贈りもの 2019

海からの贈りもの 2019

担当・えだまりこ

第3回 必要以上に力まずに。

3月5日、火曜日。

『ピンヒールははかない』
佐久間裕美子(幻冬舎)

ニューヨークに住むジャーナリストの佐久間さんが、
周囲の女友達について書いた本。
中でも私が好きなのは「インセキュアな自分へ」という章だ。
自分の容姿や仕事、性格まで、ニューヨークの女性も
うじうじ悩み、でもそれを見せないようにする、とか、
やっぱり何重にも大変な思いをしているらしい。

それを見て、佐久間さんは書くのだ。
「必要以上に力まずに、
自分という存在にセキュアでありたい。
単に日本語に訳すと『自信がある』になってしまうが、
ちょっとニュアンスが違う。(中略)
つまり、自分という存在に、過剰に不安になったり、
過剰に自信を持ったりすることなく、等身大で
いられるということだと思う」って。

書誌を調べていたら3カ月前に、佐久間さんの新刊
『MY LITTLE NEW YORK TIMES』(NUMABOOKS)
が出ていると知って、銀座の蔦屋書店に寄り道。
佐久間さんが1年間、毎日書き続けた日記だ。
『ピンヒール~』の発展系として、#metooとか、
フェミニズムとか、さらに女性の生き方方向に
がんがん攻めた索引がすごく充実しているのも面白い。

3月7日、木曜日。

『82年生まれ、キム・ジヨン』
チョ・ナムジュ(筑摩書房)

女の人に贈りたい本を考えているせいか、
そんな本ばかりが目に飛び込んでくる。
こうしてあえて意識してみると、
いま、女性のための本って、本当に多い。
あちこちの本棚から、大声援を贈られている感じだ。

仕事で寄った二子玉川の蔦屋書店で、
韓国で3年前に100万部以上売れたというこの本を、
つい買ってしまった。

韓国社会がいまだにどれだけ女性に抑圧的かという物語が
これでもか、これでもか、と出てくる‥‥のだが、
いっぽうで、就活が決まらない娘に、
「おまえはおとなしくこのまま家にいて、嫁にでも行け」
と言った父に対する、お母さんの爆発的なセリフ
(98ページ)が、とにかく痛快で最高。
その瞬間が気持ちいいので、引用は遠慮します。

会社からの帰り道。
ひと駅歩いて隣の駅から電車に乗って、
ひと駅手前で降りる。
雨が上がったばかりでキラキラしている
商店街を、歩いて帰る。

ずーっと考え続けるテーマがあるって、幸せなことだ。
考えごとをしたい、という理由で、ついつい、
いつもいっぱいで入れない、
メキシコ料理屋があいていたので、つい、寄り道。

でも、となりの30代のお姉さんたちによる
「出会い系アプリの成果としての
アイルランド人彼氏との恋愛」トークが面白すぎ、
本を読むフリをしただけで終わった‥‥。

3月9日、土曜日。

『Popteen』
(角川春樹事務所)

まったりした、土曜日の朝。
長女は学校に行っていて、
次女は暇をもてあまし、雑誌の整理をしている。
ビリビリ、ビリビリ‥‥。
破って、好きなところだけ残してるのは、
「ポップティーン」。

1980年創刊というから、もう来年は40周年という
10代少女向けの雑誌。
昔はもっとギャルやヤンキーちゃんのイメージだったが、
見たらなんか普通の子がたくさん出ている感じだ。

次女が切り取っていたのは、
大好きなモデル「ねおちゃん」が出ているページと、
「恋愛リアリティーショー」の話が出ているページ、
あとは読者やモデルさんたちが集まるイベントや、
ファッション、メイクのページ。

「オルチャンメイク」という言葉が目についた。
なに? オルチャンって。

次女は、そんなことも知らないの?という顔で
「え、韓国語ですごくかわいいっていう意味だよ」

いまのポップティーンのお手本は、
韓国の女の子なのだ。
次女は、女の子グループ「TWICE」が大好きで、
姉と同じくハングルの歌を自由に歌いこなし、
友だちと、ハングルで短い手紙を交換したりしている。

なんでこれがかわいいの?
どこが面白いの?
質問攻めにしていると、
「なんでそんなことばっかり聞くの? 
ほぼ日のため?」
と、ニヤニヤされた。

こうやってみると、私が母として女子道たるものを
子に伝える、なんていう野望のはるか先を、
娘たちはとっくに自分で走り出している、
といわざるを得ない。

まあそんな感じで、
結局、本を探す試みは、
かなり行き当たりばったりに終わった。

いま、女の子でいるって、楽しそうだ。
どこから苦しくなることが出てくるのか、
それとも、これからはだんだん減ってくるのか。
でも、本屋に行けば、あなたの味方や応援団は
きっと、必ず、いるからね。
それだけでも伝えられたらいいな、と改めて思う。

読んで下さって、ありがとうございました。

(おしまい)