3月3日、日曜日。
朝、長女が、「今日は私の日ね!」という。
何かと思ったら、妹が友達と出かけるので、
半日、長女と私の2人だけで渋谷に行こう、ということらしい。
ええー。宿題がー。
でも、そんな風に声をかけてくるのも、もはや珍しい。
ついていってみよう、と思い直し、支度をした。
すべて、元気印のJK(女子高生)の御意のままに。
まず行ったのは、
渋谷スクランブル交差点に面した
しゃぶしゃぶ食べ放題の店、「しゃぶ葉」。
友達と渋谷で遊ぶときは、
いつもここで腹ごしらえをしてから遊ぶらしい。
ランチは1199円から豚しゃぶ食べ放題。
確かに、野菜とつけダレが種類豊富でおいしいのだ。
80分、ひたすら2人で野菜と肉を食べまくる。
試しに、本の話をしてみる。
「最近、なんか本読んだ?」
「え。時間ないから読んでない」
あ、そう‥‥。
あれだけYoutubeの動画は見てるのにねぇー。
そんな娘にまずこれだけは、と決めているのが、
『男も女も みんな フェミニストでなきゃ』
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(河出書房新社)
原題は、We should all be feminists.
アメリカに住むナイジェリア人作家、
アディーチェの本だ。
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
1977年、ナイジェリア生まれ。19歳で奨学金を得て渡米、
修士まで修めながら次々と作品を発表。数々の章を受賞。
現在もアメリカとナイジェリアを行ったりきたりしながら
執筆を続けている。2017年の早稲田文学増刊 女性号
(川上未映子さんが編集した宝石箱のような本)
に載っている「イジェアウェレへ、十五の提案に込めた
フェミニスト的マニフェスト」も、女の子を型にはめない
育て方のアドバイスが力強くて美しく、力をもらえます。
この本は、2012年にアディーチェが行った
TEDトークを文字に起こしたものだ。
30分ぐらいの動画、
彼女のきらめきとユーモア、そして賢さを
ぜひ眺めて、感じてほしい。
「わたし自身の、フェミニストの定義は、
男性であれ、女性であれ、『そう、ジェンダーについては
今日だって問題があるよね、だから改善しなきゃね、
もっと良くしなきゃ』という人です」
このトークに心打たれたビヨンセが「Flawless」という
曲にアディーチェの語りをそのまま入れたり、
2016年秋のパリ・プレタポルテコレクションで
クリスチャン・ディオールが白いTシャツに
We Should All Be Feministsというフレーズを
ロゴとして入れたことでも知られている。
海外文学好きの友人に教えてもらってから、
アメリカに住むアフリカ人女性としての、のびやかで
美しくて勇敢な文章にすっかり心を奪われた。
これを読んだあとは、分厚い恋愛大河小説、
『アメリカーナ』がオススメだ。
フェミニスト、っていう言葉、私もなんだか
強くて苦手だった。
でもアディーチェの言葉は、そんな気持ちを含めた、
心の中のいろんな枠を、さらりとはずしてくれる。

さて、渋谷のつづき。しゃぶ葉の次は、
センター街のカラオケ、ビッグエコーへ。
日本の新星アイドル「キング アンド プリンス」と、
韓国アイドル「防弾少年団」の歌を
ハングルで歌いまくる娘。
1時間きっかり歌って、次はLOFTで文房具を買い、
さらっと紀伊國屋書店を流してから、
渋谷ヒカリエ2階のタピオカ屋さん「Bull Pulu」へ。
「ここのタピオカの大きさと柔らかさが一番好き」
なんだそうで、確かに長い長ーい行列。
アディーチェへの道のりも、長そうだ‥‥。
そんなことを思ってたら、タピオカティーを飲んだ娘は、
上の階の化粧品店「MAC(マック)」へ向かう。
ついたらこちらをふり返り、
「ママ、もう少しちゃんとお化粧したらいいと思うよ」
年末の初の郵便局アルバイトの初給料で、
母にほんのり赤くてピンクな口紅を買ってくれた。
うれしくて、びっくりした。
(あと1回だけ、つづきます)
