もくじ
第1回「どうして夜中にやってたの?」 2019-03-19-Tue
第2回「私の『MOTHER2』は、やっぱりこの4人なの」 2019-03-19-Tue
第3回「心が帰る場所」 2019-03-19-Tue

1993年生まれのライター・編集者です。Mr.ChildrenとMOTHER2と、かりんとうが好きです。

課題3

課題3

担当・サノトモキ

第2回 「私の『MOTHER2』は、やっぱりこの4人なの」

ぼく
それじゃそろそろ、『MOTHER2』をしましょうかね!
赤色に光ってるボタンを押してもらえますか?
お母さん
はい、はい。

ぼく
さて、今日はどこまで進むかなあ~。

お母さん
…うわ、これ、1994年のゲームだってさ。
ぼく
ははは。ぼく、1歳だ。

お母さん
ああ、やったなあ。ここ、ここ、行ったねえ。ほんとに変わってないんだね。
ぼく
当時とまったく同じだよ。
 
…でもあれだね、全然コントローラーを手に取ろうとしないね(笑)。
お母さん
だって、昔のと違うから! 使い方わかんない。
ぼく
とりあえず、Aを押しましょう。今も昔も、Aを押しておけばたいてい大丈夫です。

ぼく
さ、出たよ。この野球帽が、主人公。あとは、リボンが似合う女の子、メガネをかけたおともだち、柔道着を着た王子さま。旅する4人の少年少女に、好きに名前をつけてください。
お母さん
私ねえ、じつはもう昨日から考えてたの。
昔はさ、お兄ちゃんがこれに、家族4人の名前をつけたでしょ。つばさ(兄)、るみ(お母さん)、ともき(ぼく)、こうじ(お父さん)。
やっぱり、『MOTHER2』はこの4人だなと思うの。離婚してしまった今でも、白い柔道着を着た人は、お父さんです。
ぼく
そっか。ぼくが小学校5年生のときだから…離婚して10年以上経つけど、それでも。
お母さん
うん。私にとってはもう、決まってるの。この4人じゃなきゃ、このゲームじゃないの。
 
…でも、いいのかしら、これ(笑)。今の旦那さんの前でやるのはなんとなく気まずいよね(笑)。結局、また夜中だよ、これやるの!

お母さん
あら、わんちゃんなんていたっけ。
でも、やっぱりノエルだよね。あのときはまだいなかったし、今ももういないけど。
ぼく
うん、ぼくもそうすると思う。家族だもんね。
お母さん
ノエルも今、膝のうえに乗ってたらよかったね。
ぼく
うん。

ぼく
やっぱ、この4人だよね。
お母さん
うん。これが私の『MOTHER2』の、当たり前。

お母さん
ああ、懐かしいなあ。これ、199X年が舞台なんだね。糸井さん、どうして20XX年とかにしなかったんだろう。(『MOTHER2』は、ほぼ日の社長・糸井重里さんが作っています)
ぼく
たしかに。すごく近い未来だね。

ぼく
さて、ゲームのはじまりは主人公の家から。町に隕石が落ちてきたようです。家を出て、ようすを見に行きましょう。

お母さん
そうそう、急に夜の町に放り出されるんだよね。怖かったよ、昔も。


ぼく
全員に話しかけていくのね(笑)。真面目だ。
お母さん
なんか話しかけちゃうね(笑)。
昔こんなにしたかは覚えてないけど、今の私はしてしまうね。昔より面倒くさい人になってるかもしれない。

お母さん
ああ、お隣さんだ。ずいぶん立派な、アーリーアメリカンな家だね。
でも、隕石落ちたばっかりだし、今は入りづらいなあ…。

お母さん
あら、ダメだ、この先に隕石があるのに、進めない。いったん警察に任せて、お家に帰ればいいんだっけ?
ぼく
ふっふっふ、どうでしたかね?
お母さん
あっ、ママ。家の前で待ってるじゃん。心配になって、出てきちゃったんだ(笑)。帰ろう、帰ろう。
ぼく
よかったよかった、無事到着。

お母さん
あっ、おうちの電話が鳴ったよ。出ればいいの?
ぼく
パパからだね。あのさ、このゲームって、こうやってお父さんが電話でしか登場しないじゃん?
お母さん
たしかに、一緒に暮らしてないよね。
ぼく
これって、ゲームを作った糸井さん自身が一度離婚をしていて、子どもと離れて暮らしていたから、このゲームもパパは電話だけなんだって。「離れてるお父さんに愛されてる」という、世界でたったひとりのお子さんに対するメッセージだったみたい。
お母さん
そうなんだ。でもたしかに、家族を思わせるね、このゲームはね。
…「パパだってヒーロー! …のちちおやになれるならわるいきはしないぞ」だって(笑)。このパパ、すっごくうちのお父さんっぽくない? 言いそうだもん。
ぼく
それはね、わかります(笑)。「わかいときのくろうはかってでもしろ」も、ぼくが新卒入社した会社を辞めるか悩んでたとき、同じようなことを言われたな。
お母さん
でも、こうやって、子どもがいて、パパとママがいる、そういう家族が懐かしいなとは……ちょっと、思うよ…。

そう口にすると母は、コントローラーを机に置きました。

第3回 「心が帰る場所」