いまだに自分のお酒の限界がわからない。
どれだけ飲んだら、次の日丸一日を無駄にするような
二日酔いになってしまうのか。
どこまで飲んだら、ぷつんと記憶がなくなってしまうのか。
何かを5年間も続けていたら、
だいたい向き合い方もわかってきそうだけれど、
お酒に関してはほとんど成長していない。
ひどい二日酔いに苦しめられたり、
二度と思い出したくもないような恥をさらす度に、
「もうお酒なんて飲まない」と心に決めるけど、
一度でも誘われれば、その決心は簡単に揺らいで、
懲りずに飲み屋街に繰り出し、
またひとつ、思い出したくもない恥を積み上げる。
それでもお酒は好き、だと思う。
疲れた時に飲むビールは格別だし、
難しいことはわからないけど、
ワインとか日本酒の味について、
自分なりの好みみたいなものもある。
だからといって、お酒が無いと
生きていけないかというと、そこまででもない。
お酒を飲むのもだいたい週に1回くらいだし、
最近は、もうお前は無茶をする年齢じゃないんだ、
という身体からの警告なのか、
確実に翌日までお酒が残りやすくなってきてもいる。
お酒はわたしにとって、
十分条件ではあるけれど、必要条件ではない。
好きと言いつつ、本当に好きなのかどうか、
ここまで書いて自分でもわからなくなってきてしまった。
わたしよりも、日本酒バーでバイトをしていた
大学時代の親友の方が
お酒への愛も造詣も絶対に深いだろうし、
好きだと言える権利があるような気がする。
彼女に比べれば、わたしのお酒に対する熱量なんて、
きっと足元にも及ばない。
それでも、会社のひとつ上の先輩とふたつ下の後輩に
「好きなこと」をテーマにエッセイを書いていると話したら、
「溝部が好きなのはお酒でしょ」
と口をそろえて言われた。
なぜか、わたしにまつわるキーワードとして
「お酒」が出てくることは少なくない。
わたしが勤めている会社で、
入社したその年の夏頃に配布される
新入社員を紹介するリーフレットでも
わたしは「お酒大好きキャラ」を標榜して紹介されている。
入社して半年も経たない内に、
このキャラクターを与えられているのもなんかすごい。

ここまでわたしを「お酒好き」
たらしめているものは何なんだろう。
お酒に対する好きが揺らいでいる本当の自分と
みんなから見た自分のイメージが
乖離しているように感じて、
モヤモヤとした気持ちを抱えていたとき、
先述のひとつ上の先輩に言われて
その霧が晴れた気がした。
「溝部は誘われたら
どんな飲み会にも行くからすごいよね。」
‥‥それだ!
確かにわたしは、飲み会に誘われたら
できるだけ断らないようにしていた。
特に社会人になって一年目の頃は、
仕事もそんなに忙しくなく、
上京したばかりで会社の外に
知り合いがあまりいなかったのもあって、
声をかけてもらったらほぼ確実に
飲み会に参加していたし、
自分からも度々同期を誘って飲みに行った。
おかげでエンゲル係数はとても高い生活だったけれど、
初めての東京での生活でも、
寂しい思いはしなくて済んだ。
あれ、でもそれだと、わたしが好きなのって
お酒じゃなくて飲み会なのかも‥‥?