もくじ
第1回今日もカバンに、手ぬぐいを。 2019-02-26-Tue
第2回遠くのあの子と「恐竜模様」 2019-02-26-Tue
第3回夏の母と「かきごおり」 2019-02-26-Tue
第4回パートさんと赤い「豆絞り」 2019-02-26-Tue

愛媛から、
はるばる上京、
3カ月。

好きな食べ物は「数の子」です。

わたしの好きなもの、手ぬぐい

わたしの好きなもの、手ぬぐい

担当・本郷結花

第4回 パートさんと赤い「豆絞り」

“豆絞り”とは、
豆粒のようなドットをあしらった模様のこと。
    
                
この手ぬぐいは、前の職場で一緒だった
パートさんにいただいたもの。

そのパートさんは社内で唯一の
手ぬぐい好き仲間だった。

おでかけ好きの彼女は
今までに旅先で出会ってきた、
ステキな手ぬぐいを沢山持っていた。

母と同じくらいの年齢で、
地元を離れて働くわたしにとって、
話すとホッとする存在だった。

お互いに、その日の手ぬぐいを見せ合い
「かわいいですね、いやいやそちらも」という
やりとりが好きだった。

3カ月前、わたしは転職のため
愛媛から東京へ引っ越した。

わたしが愛媛を離れることを告げると、
彼女は涙を流して寂しがってくれた。

そして最後の出勤日、彼女から
一枚の手ぬぐいをもらった。

愛媛らしいものを贈ろうと探していたのに、
ときめいたのは、明るい赤の豆絞りでした。
この模様はおめでたいイメージだから、
旅立つあなたにぴったりです。使ってね。

そう添えられた手紙。

赤 という色を選んでもらったのは
初めてかもしれない。

わたしのまわりには、
落ち着いた色のものばかりで、
人から何かをいただくときも
その辺で選んでもらうことが多かった。

元気いっぱいの赤い豆絞り。
すごく、すごくうれしかった。

これからきっと色々なことが起こるだろう。
多分、辛いこともあるけれど、
頑張れるような気がした。

使いはじめて間もない、
パリッとした生地。
触れると少しざらついていて、
あの気持ちよさは、正直まだない。

東京という街に慣れていない
自分のようだなと思う。

この手ぬぐいと一緒に、使うごとに
柔らかく、馴染んでいけるといいのだけど。

* * *

手ぬぐいは、使うたびに
大切な人を思い出させてくれる。

手ぬぐいは、使うたびに
柔らかく馴染んでくれる。

自分とともに変化して、
その月日を感じさせてくれる。

だから、好きだ。

がんばった日の汗も、
悔しかった日の涙も、
いっぱい吸い込んだ手ぬぐい。

黙ってそっと、見守ってくれている。

「手ぬぐいって、お守りみたい」って、
あの子も言ってたっけ。

わたしもいつか
大好きな人の大切な瞬間に、
手ぬぐいを贈りたい。

(おわり)
* * *
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。