“豆絞り”とは、
豆粒のようなドットをあしらった模様のこと。
この手ぬぐいは、前の職場で一緒だった
パートさんにいただいたもの。
そのパートさんは社内で唯一の
手ぬぐい好き仲間だった。
おでかけ好きの彼女は
今までに旅先で出会ってきた、
ステキな手ぬぐいを沢山持っていた。
母と同じくらいの年齢で、
地元を離れて働くわたしにとって、
話すとホッとする存在だった。
お互いに、その日の手ぬぐいを見せ合い
「かわいいですね、いやいやそちらも」という
やりとりが好きだった。
3カ月前、わたしは転職のため
愛媛から東京へ引っ越した。
わたしが愛媛を離れることを告げると、
彼女は涙を流して寂しがってくれた。
そして最後の出勤日、彼女から
一枚の手ぬぐいをもらった。
愛媛らしいものを贈ろうと探していたのに、
ときめいたのは、明るい赤の豆絞りでした。
この模様はおめでたいイメージだから、
旅立つあなたにぴったりです。使ってね。
そう添えられた手紙。
赤 という色を選んでもらったのは
初めてかもしれない。
わたしのまわりには、
落ち着いた色のものばかりで、
人から何かをいただくときも
その辺で選んでもらうことが多かった。
元気いっぱいの赤い豆絞り。
すごく、すごくうれしかった。
これからきっと色々なことが起こるだろう。
多分、辛いこともあるけれど、
頑張れるような気がした。
使いはじめて間もない、
パリッとした生地。
触れると少しざらついていて、
あの気持ちよさは、正直まだない。
東京という街に慣れていない
自分のようだなと思う。
この手ぬぐいと一緒に、使うごとに
柔らかく、馴染んでいけるといいのだけど。
* * *
手ぬぐいは、使うたびに
大切な人を思い出させてくれる。
手ぬぐいは、使うたびに
柔らかく馴染んでくれる。
自分とともに変化して、
その月日を感じさせてくれる。
だから、好きだ。
がんばった日の汗も、
悔しかった日の涙も、
いっぱい吸い込んだ手ぬぐい。
黙ってそっと、見守ってくれている。
「手ぬぐいって、お守りみたい」って、
あの子も言ってたっけ。
わたしもいつか
大好きな人の大切な瞬間に、
手ぬぐいを贈りたい。
(おわり)
* * *
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。