もくじ
第1回初めてのはんこ 2019-02-26-Tue
第2回葛藤する年女 2019-02-26-Tue
第3回特別さに気づいたとき 2019-02-26-Tue
第4回続けられる理由 2019-02-26-Tue

大学4年生で春から社会人。ライターをするのは初めてです。好きなものはお米。

私の好きなもの</br>消しゴムはんこの年賀状

私の好きなもの
消しゴムはんこの年賀状

担当・トミカ

第3回 特別さに気づいたとき

中学・高校になると携帯を持つ人が増えて
「あけおめーる」が主流になった。
デコレーション絵文字は容量が大きく通信量を食う。
パケットし放題に入っていない私は
1月の携帯料金を見た親からこっぴどく怒られた。

あけおめーるでサーバーを圧迫させながら、
同時に私は消しゴムはんこの年賀状を送り続けた。
新しく知り合った人にはあけおめーる、
仲の良い友だちには年賀状。
進学先が分かれて会えなくなった友だちも年賀状をくれた。
小さいスペースにみっちり書かれた近況を読むのは
メールとは全く違う嬉しさがあった。

その頃から年賀状が好きな気持ちが募っていった。
自慢の消しゴムはんこを刷った年賀状に、
ひとりひとりとの思い出を振り返りながら
「お世話になりました」と書き、
来年はこの人とどんなことしようかなと考えながら
「今年もよろしく」と書く。
しばらく会えてない人には「お元気ですか」、
お世話になった先生には「お身体気をつけてください」。
1年を振り返って次の年に思いをはせる、
この時間がとても特別なものに感じるようになったのだ。

でも1回だけ消しゴムはんこをサボった年がある。
高校3年生のときだ。
受験に専念したいからと最もらしい理由をつけたのに、
結局こたつでだらだらして年末年始が終わってしまった。
受験はことごとくダメだった。

年賀状くらいで結果は変わらないと気づいた浪人の年は
デカデカと謹賀新年と書かれた威勢の良いモチーフを彫った。

そしてその春、私は無事に大学生になった。

第4回 続けられる理由