中学・高校になると携帯を持つ人が増えて
「あけおめーる」が主流になった。
デコレーション絵文字は容量が大きく通信量を食う。
パケットし放題に入っていない私は
1月の携帯料金を見た親からこっぴどく怒られた。
あけおめーるでサーバーを圧迫させながら、
同時に私は消しゴムはんこの年賀状を送り続けた。
新しく知り合った人にはあけおめーる、
仲の良い友だちには年賀状。
進学先が分かれて会えなくなった友だちも年賀状をくれた。
小さいスペースにみっちり書かれた近況を読むのは
メールとは全く違う嬉しさがあった。
その頃から年賀状が好きな気持ちが募っていった。
自慢の消しゴムはんこを刷った年賀状に、
ひとりひとりとの思い出を振り返りながら
「お世話になりました」と書き、
来年はこの人とどんなことしようかなと考えながら
「今年もよろしく」と書く。
しばらく会えてない人には「お元気ですか」、
お世話になった先生には「お身体気をつけてください」。
1年を振り返って次の年に思いをはせる、
この時間がとても特別なものに感じるようになったのだ。
でも1回だけ消しゴムはんこをサボった年がある。
高校3年生のときだ。
受験に専念したいからと最もらしい理由をつけたのに、
結局こたつでだらだらして年末年始が終わってしまった。
受験はことごとくダメだった。
年賀状くらいで結果は変わらないと気づいた浪人の年は
デカデカと謹賀新年と書かれた威勢の良いモチーフを彫った。

そしてその春、私は無事に大学生になった。