- 糸井
-
燃え殻さんが書いていることって、
パノラマとか、スケッチみたいですよね。
- 燃え殻
-
そうですね。
景色さえ決まってしまえば、
あとはどう展開しても大丈夫なんじゃないかなって。

- 糸井
- 絵だね。絵は描いたりしてた?
- 燃え殻
- 昔はやってました。
- 糸井
- やっぱり。
- 燃え殻
- どうしてですか?
- 糸井
- いや、文章がとてもビジュアルっぽいから。
- 燃え殻
- ぼく、週刊朝日の似顔絵塾に、ずっと投稿してたんです。
- 糸井
- それで入選したの?
- 燃え殻
-
通算20回以上は載っていると思います。
今でも、掲載されたものは全部持ってますよ。
- 糸井
- それは知らなかった。
- 燃え殻
-
いろんなバリエーションで、
竹中直人さんの似顔絵を描いていました。
学ランでエプロンつけている竹中直人さんとか(笑)。
- 糸井
- (笑)。

- 燃え殻
-
そこでぼくは、自分の価値を見出していたんです。
エクレア工場でバイトしてた頃なので、
審査を通過した自分の作品が掲載されることで、
「生きている」っていう実感を得ていたというか。
- 糸井
- ただの石ころじゃないぞと。
- 燃え殻
- そう(笑)。
- 糸井
- それはどのくらい続けてたの?
- 燃え殻
-
高校3年生から、
専門学校を卒業してバイトしてた時も、
ずっとやってましたね。
- 糸井
- それは、大事な何かがあったから続いたんだね。
- 燃え殻
-
自分という存在が認められて、
「そこにいていいんだよ」って言われたような
気がしていたんです。
- 糸井
-
燃え殻さんの語りは、
いつも何か人の思い出を堀り起こすよね。
ぼくも、今思い出したんだけど‥‥。
- 燃え殻
- いやぁ。
- 糸井
- 「ブレーン」という雑誌があって。
- 燃え殻
- はい、ありますね。
- 糸井
-
その雑誌の中で、ぼくも同じような経験をしたよ。
ぼくが原稿を書いたとかいう話ではないんだけど、
「若手コピーライターのIが」と書かれた記事を見て、
それだけでもうれしかった。
- 燃え殻
- わかります、わかります。
- 糸井
-
そうなんだよね。
その「いてもいいんだ」感が大事なんだ。
(つづきます)