糸井

燃え殻さん自分では気づいていないけどすごいですよって、はっきりぼくが思っているものがあって。

燃え殻

はい。

糸井

それは、あのとんでもない角度からいろいろ質問を受けている文春オンラインの人生相談。

燃え殻

ああ。

糸井

あれに答えている燃え殻さんはすっごく同じ場所に立ってて、一生懸命考えてて、ものすごい発見もあって、全部面白い。

燃え殻

えー、ありがたい。あれ、全く同じことはないけど、そういう気持ちに俺もなったことあるよっていうことばかりなんですよ。

糸井

うんうん。

燃え殻

性別とか年代とか、生きてた場所とか職業は違うけど、ああ、場面は全然違うけど小学生のときにそれに近い気持ちになったみたいな。だから、まずはそのぼくの話をしようと思うんです。

糸井

ああ。

燃え殻

そうすることで、その人と握手したいというか。

糸井

うん。

燃え殻

直接一緒じゃないかもしれないけど、ぼくはこういうことであなたと同じような気持ちになった。で、この話なんだけど、もしかしたらこうなんじゃないかな。もし、ぼくがあなたの立場だったらこう思う。違ったらごめんなさい、ぐらいまで伝えるっていう感じです。

糸井

そうですね。何よりもぼくがいいなと思うのは、燃え殻さんのいい意味での気の弱さがあるおかげで、相談してきた人に嫌な思いをしてほしくないっていうことなんですよ。

燃え殻

ああ、嫌な思いをしてほしくないってのは、本当にそう思います。

糸井

一番真実に近いところで回答するんだったら、その人を一回傷つけてでも、これはこうしたほうがいいんじゃないかってことはあるじゃない。

燃え殻

うん。

糸井

今は悲しいかもしれないけど絶対このほうがいいからっていうのは、ぼくは言うことがあるんです。

燃え殻

うん。

糸井

だけど燃え殻さんは、その人が嫌な思いをしませんようにっていうのを前提にしてて。

燃え殻

いや、もうそうです。悩み相談、投稿者のものを拙くてもそのまま載せてもらってるんですよ。

糸井

へえ。

燃え殻

そうじゃないとつまらないんで。

糸井

うん。

燃え殻

で、そうするとなんか、レスキューじゃないですか。悩みがあって、さらにそれをネットにメールするって、熱量の落ちなさが半端ないというか、相当悩んでる。

糸井

うん。

燃え殻

もしくは、答えが欲しいというか、それくらい真剣。ということは十分傷ついたり、悩んだりしたんで、もういいじゃないかってぼくは半分思ってて。それを投げ出さなかった時点で、すごいなあみたいな。

糸井

だから、あれは人生相談に答えているというよりは、その人と隣り合わせで慰めてるんですよね。

燃え殻

ああ、そうです。そう思ってました、ぼくは。

糸井

燃え殻さんの人生相談は、それなんですよね。

燃え殻

うん。

糸井

悲しみをごまかしてはいけないって言う人もいるかもしれないけど、でも、この境遇を慰めて明日もしかしたら笑って過ごせるかもしれないということ。

燃え殻

そう。

糸井

その道を取っちゃって、ほかの道っていうのを責任持ってくれるのか。

燃え殻

そうなんですよ。

糸井

弱いところの自分と、それを抱きしめたい、撫でたいという、そっちがもっと大事になると思うんですよね。これはぼくに案外なかったところなんで。

燃え殻

ああ、ぼくが思っているのは、そういうことだと思う。傷がかさぶたになって、それが取れて、きれいになりましたってすごく素晴らしいですけど、そんなことばっかじゃないから。

糸井

そうそう。

燃え殻

そのかさぶたでもいいし、血を止血しながらでも生きていかなきゃいけないじゃないですか。

糸井

うんうん。

燃え殻

そういうこと、まあ、悩みで言えば、「一旦保留にしようぜ」っていう人生相談ってなんでなかったんだろうって。

糸井

いや、あれがやってますよね。

燃え殻

うん、ぼく、一旦保留にして生きてこれたというのがたくさんあって。手帳もそうかもしれないですけど。

糸井

うんうん。

燃え殻

一旦端に置いといて、将来の自分が解決してくれたり、将来の自分がやっぱりもう一回置いとこうかって思ったりしながら生きていくとぼくは思うんですよね。

糸井

うん。

燃え殻

そういうほうが、なんていうんだろう、リアルなような気がして。全部がきれいに片付いてくるほうが、そのほうがいいけど、でも。

糸井

ぐしゃぐしゃしたことでも、語っているうちに泣いちゃって大声出したりしたらすっきりしたり。テーマ忘れて泣き止むかどうかになりますよね（笑）。

燃え殻

わかります、わかります。

糸井

なんか泣いてるだけって状態に対する手を差し伸べるのがなんか上手で、「燃え殻さん、もう一生の仕事にしなさい、それを」って言いたくなる（笑）。本当、だから、あなた、モテるんですよ。わかるでしょう。

燃え殻

モテない、モテない（笑）。でも、答えいらないときって多いと思うんですよ、ぼく、人生で。

糸井

ご飯食べるとかね。

燃え殻

ああ、おなかいっぱいになるといいですよね。

糸井

あとは、歩くとか。そういうことでごまかせたり解決されたりすることってありますよね。

燃え殻

うん。

糸井

一番大事なヒヨヒヨした粘膜の中側のところに傷が行かないっていうような技術は、技術なんだけれども、子どもに教えたい。

燃え殻

わかりますね。

糸井

えっと、いくら続けてもいいんですけど、そろそろ。今日の話をほぼ日でも紹介して、世界中にこの喜びを・・・

燃え殻

何言って（笑）。

糸井

いっぱいしゃべってる無口じゃない燃え殻さんが味わえたと思います。どうもありがとうございました。

燃え殻

ありがとうございました。

（おわり）

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「ボクたちはみんな大人になれなかった」の感想に、燃え殻さんがお返事します。