【数分で読める!】燃え殻×糸井重里 対談
担当・あいうえお

第4回 お父さんの股引はかわいい。
コロッケは落としても食える。
- 燃え殻
-
『イトイ式』が好きで。
糸井さんが答えを出さない番組だったから、
糸井重里はこう言ったけど、俺、こう思うんだよなとか、
やっぱりそういう自分語りをしたくなるようなものというのが
小説でも映画でもぼくはすごい好きで。
そういったものを自分が作れたならば、とても嬉しいというか。
- 糸井
-
できてますよね。
- 燃え殻
-
だと嬉しいです。
- 糸井
-
ぼくが一番好きなのは場を作ること。
読者が集まって何かをするって場を作るのは、
もう趣味であり、稼ぎにはならないけど物凄く大好きで。
例えば80年代始めぐらいにやってた連載の「ヘンタイよいこ新聞」。
「かわいいものとは何か」ってお題に対して、
「お父さんが股引で家の中を歩くのは妖精のようでかわいい」
というのがあって。
お父さんの股引に「かわいい」を持ってくる人がいるってだけで、
ちょっとジーンと来ます。
- 燃え殻
-
その場を大切にしとこうかっていう。
- 糸井
-
今の若い子は何でも「かわいい」で済ませるって批判があった時に、
「かわいい」の中にはそこまで含まれるってことを知ってるから、
「かわいい」で表現する人たちに物凄くぼくは温かいんです。
- 燃え殻
-
寛大な気持ちになれる(笑)。
- 糸井
-
「かわいい」という言葉の使い方を、ぼくが拾って出すことで、
世の中の「かわいい」の許容量が変わるじゃないですか。
それは物凄く嬉しいこと。
万流コピー塾をやってる時も、「コロッケ」ってお題で、
松という一番いい位を取ったやつが、「落としても食える」。
凄いでしょう(笑)。

- 燃え殻
-
凄いですね。
- 糸井
-
そうでしょう? コロッケの表面のバラつきというか(笑)、
あれがないと落としたら食えないですよね。
だから「みたらし団子」ってお題で「落としても食える」つったら、
「おまえ、それ好きなだけだろ?」っていう。
コロッケは大丈夫。拾いたくなる何かがあって。
で、食いたいからこそって感じが、
落ちてるとこから拾う運動の中に全部入ってるじゃないですか。
これはもう永遠にぼくの頭の中に‥‥
- 燃え殻
-
インプットされてるんですね。
- 糸井
-
そう、ここの会場に来た人もコロッケを見たときに、
「そうだよな、落としても食える」(笑)。
- 燃え殻
-
(笑)
- 糸井
-
人はね、素晴らしい工夫をするから、
「3秒ルール」というのを発明してね。
- 燃え殻
-
はいはいはい。
- 糸井
-
あれも、なんとか拾う側の弁護人になりたかったからですよね。
ああいう人間をぼくは、増やしていきたい(笑)。
- 燃え殻
-
(笑)
- 糸井
-
それが寛容‥‥
- 燃え殻
-
ということなんではないかと。
- 糸井
-
日本寛容党。
- 燃え殻
-
(笑)。糸井さん、今日、何の話でしたっけ。大丈夫ですか。
やっぱり打ち合わせしたほうがよかったかな(笑)。
- 糸井
-
寛容になりたまえ。
