もくじ
第1回燃え殻さんが、ほぼ日オフィスへやってきた 2017-10-17-Tue
第2回人前に出るのは苦手な燃え殻さんと
心にYAZAWAがいる糸井さん
2017-10-17-Tue
第3回燃え殻さんの肩書きは、たくさんある。 2017-10-17-Tue
第4回ぼくは、確かに、ここにいる。 2017-10-17-Tue
第5回燃え殻さんの行くさきは。 2017-10-17-Tue

新卒入社した会社で営業配属となってから、気が付けばもう1●年。畑違いからですが、ものをかくことに憧れて、30代にしてはじめて、たのもー!と夢の扉を叩いてみました。

燃え殻さんはどこからきて、</br>何者で、どこへいくのか

燃え殻さんはどこからきて、
何者で、どこへいくのか

担当・ながの。

第2回 人前に出るのは苦手な燃え殻さんと
心にYAZAWAがいる糸井さん

燃え殻
ぼく、人前で話すということ自体が苦手なんです。
苦手だったんです。
プレゼン機会があるサラリーマンもいるじゃないですか。
ぼくは、それもなく、こもって作業するというサラリーマン。
それで、友達とかに聞くと、プレゼンもしていると聞く。
どうにもこうにも自分は話すことが足りていないと思って。
糸井
対談じゃなくてしゃべるのはOKですか。
燃え殻
社内ミーティングみたいなものがあるんですが、
ぼく、それで話をするのも苦手でした。
糸井
苦手かどうかで言えば、それはぼくも同じですよ。
燃え殻
え、そうですか?
糸井
うん、本当に同じだと思うな。
普段、ものすごく社内ミーティングをしていて、
1人で話しまくってますけど、
得意かっていったら、得意じゃなくて、苦手だね。
燃え殻
今でも苦手だなと思います?
糸井
思います、思います。
だから、燃え殻さん風に言うと、俺は、
線を引いて、どちらかに行かない!としないように、
得意・苦手の行き来を少しずつ意識してきたんだと思う。
 
それは、主に社長になってから。
社長という名前は、まあ、ものすごく大きいと思う。
部長というのがあったとしたらどうかわかんないけど、
フリーじゃないですか、ぼくも。
だから、あんまり人にこうあってほしいという
筋合いはないぐらいに思ってたから。
だから、そこのところはね。弱いです。
燃え殻
その毎週のミーティング、その日の朝は緊張するんですか。
糸井
緊張はしないけど、その時、永ちゃんが出てくるんですよ。
永ちゃんが出てきて、「矢沢、楽しめ」って。
俺に声かけるんですよ。
燃え殻
糸井さん、心の中に永ちゃんを飼っている…?
糸井
俺は、明らかに心の中に永ちゃんがいる。
もうレストランの社長みたいなもんよ。
「矢沢さんのおかげでここまで来たんです」って(笑)。
燃え殻
ピンチのときや、自分がウッてなったときに、
心の永ちゃんが語りかけてくる?
それとも、何か曲が流れるんですか。
糸井
そんなふうにはなんない。
それは、また別のシチュエーションで、今の話で言うと、
永ちゃんが、「俺もステージの前はドキドキする」って話を
真面目にしてるわけよ(笑)、俺と話してて。
燃え殻
へぇー。
糸井
さらに永ちゃんは続けるわけだよ、
「ドキドキするのは当たり前なんだよ」みたいな感じで。
若いときだったら、もっと気が小さいから、殊更にって。
洗面所とか前の日のお風呂とか、鏡に向かって、
「できる。おまえならできる」って言い聞かせてたって。
燃え殻
えぇー。
(感嘆の声)
糸井
永ちゃんね、ウソはつかないのよ。
で、さあ始まるときっていうのはまた別で、
やっぱりえらいことだと思ってて(笑)、
負けねえぞと思わなきゃいけないんだよ。
鏡に向かって、「おまえならやれる」ていう。
「頑張れ、矢沢。おまえ、よくやってるなあ」とか、
終わってから、「よくやったよ、永ちゃん」みたいな。
燃え殻
また、語りかけて。
糸井
うん。
それで、ある段階まで行ったら、今度は
「矢沢、楽しめ、OK」。
永ちゃん、多いステージだと8万人とかいるわけじゃない。
「楽しめ」って言葉、俺は何度も原稿にも書いたけど、
その言葉の持つ意味って、多分ものすごくてさ。
楽しみにしている人と、俺とが楽しめばいいと思えば、
勝ちも負けも失敗も成功もなくて、
「楽しめ」、「おお、そうかい」って出てくるんだって。
燃え殻
ああ、でも、そうかもしれない。
糸井
ものすごいそれはうれしくなっちゃうわけで、
苦手だったことは、嫌に決まっていることだらけだよ。
でも、その「楽しめ」を俺が覚えていたおかげで、
どれだけ、辛い場をしのいだか。
別に永ちゃんの言葉が聞こえてくるわけじゃないよ(笑)。
「そうだ、楽しむんだ」。
燃え殻
「楽しむんだ」っていう。
ぼく、新潮社の編集の人に、「嫌だ嫌だ」って言ったんです。
またトークショーみたいなのがあって(笑)。
始まる前にも、「ああ、嫌だ」みたいなことを言っていて、
そしたら、その方に、
「いいんですよ。動いてるの見たいだけなんですから」
と言われたんですよね。
糸井
ああ。なるほど。
燃え殻
「行ってください」って言われて、ああ、そうかと。
また別のときは映画監督の大根さんが対談相手で、
「いいこと言わなくていいよ」って言ってくれたんです。
それこそ話していて、そのまま、「それでさ」って感じで
登っていったんですよね。
何ていうんだろう、そのままでいいじゃないかという感じで。
その前は何か1ついいことを言わなければって思ってて、
名言が思いつかないから、それで嫌だったんです。
糸井
うん、よくわかります。
燃え殻
でも、
「そんなこと誰も期待していない。上がりなさい」って
言われて上がって、大根さんも「それでさ」ぐらいの話で。
そうしたらできたんですよね。
糸井
特に対談は、相手が何とかしてくれることは大いにあるから。
1人で講演をしろって話じゃないから。
燃え殻
ああ、そうですねえ。
糸井
だから、例えばの話、ご飯粒がついてたら、
「ご飯粒」って言ってくれるじゃない。
燃え殻
そうですね。
糸井
だから、何でもいいのよ。
とくに新人の立場で対談だったら、もうノー問題。
これからも、だから、100受けても大丈夫。
相手が「いいこと言わなきゃタイプ」の人だったりすると
面倒くさいから断ればいい。
「お互いにいいこと言いましょう」的な人もいるから、
世の中には。
燃え殻
ああ、なるほど。
糸井
見分ける方法はあんまりないけど、勘でわかると思うよ。
例えば、宣伝が目的で出てくるような人とかね。
つまり、商業活動として対談しに来る人は、
自分が舞台でいいことを言って売り込むのが仕事だから。
だから、「20回フラれても19回モノになるナンパのし方」
みたいな本を出してる人がいたとするじゃない。
そしたら、そいつは、その宣伝に来てるわけで、
そのお客さんに自分のことをそう思ってほしいわけだから、
「燃え殻さん、今のはこうじゃないですか?」と、
本に書いているようなことを言うみたいなさ。
大根さんとかだったら、そんな心配はないよ、何も(笑)。
燃え殻
何もない。
糸井
ただ、ただ「会って話そう」だよ(笑)。
燃え殻
そうですね。
糸井さんも、きっとその方が面白いって思っていますよね。
だって、前回も「10分前に来て」だったじゃないですか。
糸井
前回って、あの銀座?
燃え殻
銀座ロフト。
10分前に入ってくれればという話だったんですけど、
それでもう何もなく、ドーン、行こうじゃないですか。
糸井
このことだけは伝えなきゃみたいなことは1つもないから。
燃え殻
ああ(笑)、そうか。
糸井
あるとぼくはできなくなっちゃうんです。
このことを伝えなきゃって仕事になっちゃうから。
燃え殻
「これだけは言ってくださいね」みたいな。
糸井
もしそういうことがあるんだったら、
時間区切って、急に言ってくださいみたいにしたほうが。
もし、ギクシャクした言い方になったら、
「ギクシャクしてますね」って言って(笑)、
また違う話をしたいんですよね。
燃え殻
ああ、そっちのほうがいい。
糸井
ロフトの対談、楽だったでしょう?
燃え殻
楽でした。
あ、それだったらぼく、勉強してないのかな。
ぼくの対談、楽にさせてくれる方ばっかだ。

(第3回につづきます)

第3回 燃え殻さんの肩書きは、たくさんある。