もくじ
第1回服屋は服馬鹿じゃないと 2017-12-05-Tue
第2回毎月ひと型のオリジナル 2017-12-05-Tue
第3回言葉の裏にあるものは 2017-12-05-Tue
第4回服馬鹿は世界を広げる 2017-12-05-Tue

兵庫県の北で育ち、浅草生活10年目。書くお仕事を経て、メーカーの販促をやっています。和菓子に目がありません。

服馬鹿が教えてくれること。</br>-The Three Robbers つかもとたかしさん-

服馬鹿が教えてくれること。
-The Three Robbers つかもとたかしさん-

担当・ニイミユカ

第2回 毎月ひと型のオリジナル

——
私がスリラバに通う理由のひとつに、
毎月ひと型ずつ発売される
オリジナルアイテムがあるんです。
デザインはベーシックな印象なんですけど、
生地や縫製のこだわりを聞いたり、
着こなし方を教わるのがおもしろくて。
そもそも、なんで月にひと型なんですか?
つかもと
ひとりで店をやってるっていうのもあるけど、
昔、俺がほかの服屋に通ってたときに、
全部ほしいけど買えないっていうことがあったんだよ。
秋冬の立ちあがりってなったら、
だいたいのブランドは
ジャケット5型、パンツ5型、靴5足とか、
一度に発表するでしょ。
ひとつに絞れない、でもほしい。
そのときに、俺が服屋をやることになったら、
月にひと型にしようって思ったの。
真っ当に働いたら、月に一度は給料もらえるじゃん。
一着なら服買えるじゃん。
ふたり
(笑)。
つかもと
だから、基本的にはシーズンが立ちあがったら、
ジャケット、トップス、ボトムス、靴って、
毎月揃えたら半期でひと通り揃うようにしてる。
——
ほかのアイテムは売らないんですか?
つかもと
それ以外では、ときどきヴィンテージを放出したり、
限定アイテムを少し売ってるだけ。

——
オリジナルのデザインはつかもとさんが?
つかもと
デザインはほとんどしないね。
俺、服の基本は
ワーク・スポーツ・ミリタリーだと思っていて。
そのアーカイブを手に入れて、
この縫製や手法を今の技術でできないかな? って
専門の職人さんに相談しに行くの。
決めるのはそのシーズンのテーマぐらい。

——
テーマがあるんですね。
ちなみに、今シーズンのテーマは?
つかもと
ニットかな。
今、ニットが楽しくて仕方がないの。
俺、20才からずっと
ファブリックものの服はやってきたから強いけど、
ニットは切って縫ってっていう
カット&ソーじゃないから奥が深い。
やばいくらい、金かかるの。
——
編むから。
つかもと
編むから。
あと、ファブリックなら反物をつくって、
そこから何着分とれるかっていう発想だけど、
ニットはグラムで買わなきゃいけないの。
だから何着つくるってなったら、
グラムで計算して進めなきゃいけない。
——
グラムなんだ。
つかもと
そう。
これもうちょっと目をつめたほうがいいねっていうのも、
つくってみないとわかんないし。
——
試作して。
つかもと
もうちょっとってなったら、
もう一度編まなきゃいけない。
カシミア100%のサーマルって
ニイミちゃん、買ったっけ?
——
いや、残念ながら買い逃しました。
でも実物は見ましたよ。
軽くてあったかそうだった。
つかもと
カシミア100%のサーマルなんて絶対にないから、
職人さんがビビッたぐらい。
要はサーマルってハチの巣織りでしょ。
あれって引っ張りながら編み地をつくるの。
だからカシミア100%じゃ切れちゃう。
それを職人さんと試行錯誤しながら、実現できたんだよね。

——
そういうアイデアって、
どうやって思いつくんですか?
つかもと
さんざん着てきたから、
俺だったらこうするって考える癖があったのよ。
——
考えていた。
つかもと
そう。
そもそもサーマルって肉厚のコットン製なの。
それをウールでやろうとしたら
今の市場ではポリ混に頼るしかないわけ。
なら、さらに弱いカシミアでやったら俺、
歴史に名前残るなーって。
じゃあ、職人さんに聞いてみようって、
職人さんの熟練の技を聞いて、
一生懸命、どうやったらできるんだろうって考えるわけ。
——
弱い素材だけでかたちにするぶん、
時間も手間もかかったんじゃないですか?
つかもと
編み地をつくるのに3年かかったよ。
——
3年!
つかもと
それを「完売したよ」って伝えたら、
職人さんが泣いて喜んでた。
——
へえー、それはお互いにうれしいですねえ。
 
職人さんと接するときに、
大切にしていることってありますか?
つかもと
俺はとにかく実現したいから、お金のことは言わない。
職人さんが言うには、
「今のものづくりは、
まずお金の話からされることがほとんどだ。
値段を下げるために
職人がいるみたいになってる」。
——
切ないですね・・・・。
つかもと
職人さんたちも、なんのために俺たちはって思うよ。
だからじゃないけど、お金の話はしないね。
俺はこうしたいっていうアイデアがかたちにできるなら、
いくらになったっていい。
——
かっこいい!
ふたり
(笑)
つかもと
お客さんは大変だけどね、
値段があがっちゃうから。
でもじゃあなんでその値段なのか、
職人さんの仕事ぶりも含め、
俺がまた一生懸命喋ればいいと思ってる。

(つづきます)

第3回 言葉の裏にあるものは