最後に二つ、『ファン』ということ
について、筆者自身の印象に残っている言葉を
引用させていただきたい。
まず一つ目は、有吉弘行さんの
公式ツイッターから。
これは2年前、ラグビーW杯で日本が
強豪・南アフリカに勝利し、
世間が五郎丸フィーバーに沸いていた際の
つぶやきだ。
ニワカの良いところは、もっと好きになれるという伸びシロだ。
買っちゃった。。。 pic.twitter.com/0R0oRNyX8W— 有吉弘行 (@ariyoshihiroiki) October 18, 2015
「伸びしろ」とはつまり、
「より深く知り、より好きになれる可能性」
という意味が込められているだろう。
こういう人を、受け入れる懐の深さこそを
古参のファンが持つことが、
プロ野球が永久不滅、最強の娯楽になるためには
極めて肝心であるはずだが、
こうした『ニワカ』を受け入れない
言動や行動も散見されるのも事実である。
みんなが、お互いにファンとしての伸びしろを
埋めていく、ファンがファンを生んでいくという
循環が当たり前のようにできてくると、
誰もがハマりやすいプロ野球、
になっていくのではないだろうか。
そして2つ目は、
筆者が尊敬するスポーツライターの一人である
プロ野球死亡遊戯こと中溝康隆さんのコラムから
抜粋させていただきたい。
Number Web(文藝春秋)に掲載された、
『ハマスタに野球ファンの楽園を見た……。
プロ野球が染みた街・横浜での日本S。』
というコラムで語られた言葉だ。
スタンドには大洋時代のユニフォームから歴代のベイスターズユニ姿もチラホラ見える。
ポンセ、遠藤一彦、三浦大輔、ブラッグス、仁志敏久――。
そのネーム入り背番号を見ているだけで楽しい。あらゆる世代のファンが19年ぶりのハマスタ日本シリーズ開催に集結した。
オールドファンと若い男性や女子の新規ファンが共存する空間。
神奈川県内の子どもたちに72万個を無料配布したDeNAの野球帽を被ったキッズファンも多い。
ある意味、プロスポーツとして理想的な風景だと思った。
球場揚げたての“ベイメンチ”を買い求める老若男女の列に並びながら、新日本プロレス木谷オーナーの「すべてのジャンルはマニアが潰す」という言葉を思い出した。
あれは要は「マニアの共食い」だ。
自分の方が正しい詳しいとお互いの応援スタンスや贔屓の選手をディスり合う。
それを見てライトユーザーはドン引きの悪循環。
毎日のようにプロ野球死亡遊戯ブログを更新している頃に悩まされたのも、コメント欄で繰り広げられるマニア同士の言い争いだった。
でも、今のハマスタでは共食いではなく「マニアの共存」がさらに新規ファンを入りやすくしているような印象を受けた。
マニアがジャンルを潰すことなく、
老若男女問わず、古参も新規も、
全てのファンが共存し、それぞれの
楽しみ方で試合を観戦する。
筆者自身は、横浜スタジアムで行われた
この日本シリーズを観に行ったわけではないが、
それこそが球場のあるべき姿であり、
追い求めるべき理想なのだろうと、
この言葉を読みながらしみじみと
感じせられた。
この中溝さんのコラムでも
取り上げられていた
横浜DeNAベイスターズは、
神奈川県内の72万人の子供たちに、
ベイスターズの帽子を配ったり、
選手たちがサインなどのファンサービスが
できる機会を増やしたりと、
古参にわか関係なく、全てのファンが
ベイスターズで一つになれる、
そして誰もがファンになりやすいような
取り組みを率先して進めている球団だ。
現在取り組んでいる
『COMMUNITY BALLPARK
PROJECT』という計画では、
野球が大好きな人でなく、
一度も体験したことのない人も含め、
集まった人たち全てが
野球をきっかけにが取れる、
『コミュニティボールパーク』という場に
今あるスタジアムを変えていきたい
という狙いが込めらているそうだ。
横浜を筆頭に、
こうした取り組みを積極的に行う
球団が今後増えてくるかもしれない。
そんな時、ファン同士が足を
引っ張りあっているようでは、
こうした球団の取り組みが
水泡に帰してしまう
可能性だってありえる。
こうした動きがあるということは、
まだまだプロ野球そのものにも
伸びしろがあるということだ。
その伸びしろを埋められるのも、
間違いなく私たちファンのはずである。
ファンの多様化を積極的に受け入れ、
心無い言葉を発するのではなく、
おもてなしの心で新規ファンを受け入れる。
今問われているのは、
そうした私たち古参ファン器量と
言えるのかもしれない。
(終わります)