もくじ
第1回ぬふぃー、参上 2017-12-05-Tue
第2回家族の一員になった 2017-12-05-Tue
第3回あいつが家にやってきた 2017-12-05-Tue
第4回変わらないものがあるということ 2017-12-05-Tue

めずらしい名字、手書き文字、言語学やコメディーに興味があります。
お菓子づくりも好きです。

ぬふぃーとわたし

ぬふぃーとわたし

担当・ぬふぃー

第4回 変わらないものがあるということ

ダンボールの中で、ぼくは自分の
役目について思い返した。

ぼくがあの人に拾われた時、
あの人はちょうど転校したばかりだった。
そして、それ以降もころころと
あの人を取り巻く環境が変わっていくのを
ぼくは知っていた。

でも、ぼく自身はいい意味で変わることが
できない。

いや、確かに前より格段と毛のつやを
失った。
あと、一緒に寝ているとよく
つぶされるから、ぼくは
だいぶスリムになった。

でも、ぼくは何年も前とおんなじ目をしている。
口のニヒル具合も、おんなじだ。

もちろん、昔と同じであることは時として
よくないこともある。

もし「今」というときが大事ならば、
「今」になることはもうない過去に固執せず、
未来の「今」と呼べるときに目を
向けるのもいいと思う。

でも、人によっては前と変わらないもの
をみて、安心することがある。
サザエさんを日曜日に見て、
「また一週間がはじまる!」と
儀式のように感じるのと同じで、
変わらずあるものは案外大事だ。

ぼくは、そんな存在になるべくして、
あの人のもとへといくことになった。
これがぼくの目的であり、役割だ。

でも、犬のDの存在とかもあって、
あの人との関係が変化していたことを感じた。
ぼくは変わらない存在であるために
あの人の元へ行ったのに。

船便の箱にいれられたとき、
前一緒に乗った飛行機を思い出して、
ちょっとこころのはしっこがきゅーっと
痛くなった。
ぼくのお役目は終わったのかなぁ。

でも、日本に着いて、ふたを開けてみると、
ぼくはあの人の目に見える位置に置いてもらった。
「シューノースペース」や、
「トランクルーム」などには入れられなかった。

あれ?意外と、ぼくを必要としてる?
でもまあ、10年前みたいに話しかけて
くれる訳でもないし、やっぱり
ぼくの引き時かな・・・・と思った。

そして今日、あの人が疲れて寝ている間に
開いたまんまのパソコンをのぞくと、
ん?ぼくの名前が画面にあるではないか。
「ほぼ日の塾」という場に。

ぼくはびっくりした。と、同時にうれしかった。
照れで「まぎらわしい」などと最初は
言ってしまったけど、
実はふつふつとうれしさがこみあげてきていた。

・・・・ひとつ秘密を教えよう。
ぼくには、本来ぬいぐるみによくあるはずの
タグがついていない。
必死にタグを切り取った付け根を探そうと
しても、ないものはない。

だって、ぼくはタグのないぬいぐるみたち
の集団から派遣されているのだ。
その名も「no-feuille (ノーフイユ)」。
直訳すると「葉っぱのない」。
ぼくたちはタグのことを葉っぱとよぶ。
そのタグが、ぼくたちにはついてない。
なのでみんな出身地はわからない。

で、落ち葉が突然風にのって部屋に入ってくるように、
ぼくたちも誰かのもとへとふっと現れる。

ぼくたちの役目は、飼い主にとっての変わらない
存在であり続け、その人の日常にとけ込むこと。
ルールは、飼い主がぼくたちの名前さえ
思い出せないようになったら、次の人のもとへ
行くこと。

だから、名前を使ってくれたということは、
ぼくにとってはうれしいことなのだ。
ぼくがずっとそばにいたことを、ちゃんと
知っていてくれた気がして。

あと、ぬふぃーという名も変えたくない。
ぬふぃーのスペルはNoofy。あの人の直感らしい。
No-feuille はノーフイユと読む。

そう。ぬふぃーは、偶然だけど、ぼくの
所属団体と名前がとっても似ている。
最初はあまりにも似ているから、
団体の存在がばれた?と思ったほどだ。

ぼくにはぬふぃーの名がしっくりくる。
だから、ぼくはあの人のもとに
できるだけ居続けたい。

みなさんのそばにも、一緒にいると
なぜだかほっとするぬいぐるみは
いませんか?
その子は、意外と役目を持ってあなたの
もとにいるのかもしれません。
そして、そのぬいぐるみも、あなたの
存在をうれしく思ってるかも知れませんよ。

・・・・なんて書いてたら、あの人がそろそろ
起きそうだから、いったんここで終わろうと
思います。ではでは!

(おわります)