ぼくはあの人のお母さんに会った。
「えー?!そんなもらってきたって
置いとくスペースないよー!」
と言われた。
いや、ぼくはそれほど大きくないではないか。
それに、目的があってきたのだ。
もうちょっと丁寧に扱っていただきたい。
特にあの直後に入った機械は
なんなのだ。
高速観覧車みたいにぐるんぐるん
まわされたあげく、水と泡の
ダブルパンチを食らうなんて、
とても辛い。
あの地獄の機械から出てきた後、
お母さんに渾身の
にらみをきかせてみたのだが、
通じただろうか。
ただ、あの高速観覧車に乗ったあと、
ひとつだけいいことがあった。
それは、あの人がより一層かわいがって
くれるようになったことだ。
おんなじベッドに寝かせてもらえるようにさえなった。
まあ大抵は夜中に、突然床へとすとんと落とされて
しまうのだが、距離が近くなったことは確かだ。

一人っ子であるあの人の、おうちでの
第一の遊び相手はぼくであったと
自負している。
その日あったことを包み隠さず話してくれるし、
マギー審司とラッキーのまねを、ぼくを
ラッキーと見立ててやり始めることもあった。
(ぬっふぃー!)
学校での友だちの発言に
「もうほんとありえない!」と
あの人は怒ることもあった。
ぼくはだまってそれを聞いた。
仲直りの術を言うことはできないけど、
なんかぼくに話すことであの人は
すっきりしていたみたいだから、
よかったのかなあ。
実はぼくとあの人は日本ではなく、
外国で出会ったのだけど、
あの人が日本へ帰国するとき、
ぼくはあの人と一緒に飛行機にのった。
ぼくにとっては初めての機内である。
でも、あんまり華やかな飛行機デビューでは
なかった。
なぜなら、あの人は飛行機が嫌いで、
離陸のときなんかは、ぼくをもうしぼるように
握ってきて、ちょっと窒息寸前だったからだ。
あの人以上にひやひやして、
目の前が真っ白になった。
でも、ぼくはあの人の支えになったと
自負している。だから、初めての飛行機体験
が台無しになったのも、かまわない。
こんな風にしてぼくはあの人と友だちのように
なっていったのだけど、そんなぼくとあの人だけで
過ごす日々はそう長くは続かなかった。
あいつがやってきたからだ。
(つづきます)