私に映画を「語る」資格があるのか
「趣味は何ですか?」
「休みの日とか何してるんですか?」
などと聞かれたときは、
たいてい「まあ、映画観たりとか……」
と答えています。
この「まあ…とか……」という答え方!
我ながらすっきりしないな、と思っています。
どうして「映画が好きです!」と
きっぱりと言い切れないのでしょうか。
それは、「好き」と断言できるほど、
私は映画のことをよく知っているのか、
ちょっと自信がないからです。
趣味として挙げるかどうかはともかく、
「好き」か「嫌いか」のどちらかで言ったら、
映画が「好き」という人は多いと思います。
もちろん、中には「映画なんてめったに観ない」という人
もいると思いますが、
それでも多くの人は、何かお気に入りの一本や、
子どもの頃に大好きだった作品、
などがあるのではないでしょうか。
だから、映画は私にとって
コミュニケーションのツールでもあります。
「最近どんな映画観た?」とか「どんな映画が好き?」
というのは、楽しい話題の一つ。
出会ったばかりの人で共通の話題が少ないとき、
長時間一緒に過ごして、話すことがなくて困ったとき……
映画の話題が助けてくれることがあります。
そんな風に気軽な話題になる一方で、
映画について、こうして文章で書こうと思うと、
正直、気が引けてしまいます。
勝手なイメージかもしれませんが、映画を語るには、
年間何百本も観ていないといけないんじゃないか、
古今東西の名画を知り尽くしていないといけないんじゃないか、
監督の演出方法や俳優の演技について、
詳細に分析できないといけないんじゃないか……
などと考えてしまうのです。
実際、私がどのくらい映画を観ているかと言うと、
最近は、月に2~3回くらい映画館に行く、
DVDは気が向いたときにたまに観る、という程度です。
これを多いと感じるか少ないと感じるかは
人によると思いますが、
世の中には、私なんかより、
もっともっと映画について語れる人たちが
たくさんいるはずです。
その存在を想像してしまうと、
「私なんかが語っていいのか……」と
足がすくんでしまうのです。

映画に救われた、人生の“もやもや期”
それでも今回、映画について書こうと思ったのは、
映画に助けてもらったことが何度もあるから。
振り返ってみると、
私が映画を好きになったのは、両親の影響だと思います。
小さい頃から、よく休みの日には映画館に連れていってもらいました。
また、ときどき近所のレンタルビデオ屋さんに行って、
兄と私と、一本ずつ好きな映画を借りて帰るのも楽しみでした。
でも、子どもの頃はそこまで「映画が好き」
という意識はなくて、
一番たくさん映画を観たのは、
大学を卒業して、働き始めて最初の5年くらいだと思います。
なぜ観るようになったかと言うと、一つには環境です。
最初の2年くらいは高田馬場で働いていたのですが、
高田馬場には「早稲田松竹」という名画座があります。
名画座では、ロードショーが終わった映画や、
過去の名画を上映しています。
二本立てで1300円というお得感もうれしくて、
よく仕事帰りに通っていました。
その後、転職した会社は渋谷にありました。
渋谷には、シネコンからミニシアターまで、
さまざまな映画館があるので、
いつも何かしら観たい作品を見つけることができました。

でも、やはりこの時期によく映画を観ていたのは、
当時の私が「映画を必要としていたから」かなと思っています。
私は、就職活動がうまくいかず、
いわゆる「新卒」で会社に入ることができませんでした。
アルバイトから始めて、契約社員になって、6年目に、
ようやく「正社員」という立場に。
当時の私は、同級生がみんな
内定式や入社式、新人研修、というイベントを経て、
社員としてバリバリ働いている中で、
自分だけがまだ「半人前」であるような気がして、
劣等感を持っていました。
(今考えると、正社員であることと、
「一人前」であるかどうかは別の問題だと思うのですが
そのときの私は、それがすごく大事なことのように思っていたのです)
なので、その5年間は、
人生の“もやもや期”だったと思います。
今もそうですが、
私は、悩んでいることや考えていることがあると、
そのことと、映画のストーリーを
勝手に重ね合わせてしまうところがあります。
極端に言えば、就職活動で悩んでいるときは、
恋愛映画でも、SF映画でも、
全部「就活がんばれ」というメッセージに
自分の中で勝手に変換して受け止めてしまう。
だから、悩むことが多い時期には、
あらゆる問題を映画に重ね合わせて、
「私もがんばろう」というエネルギーに
変えていたのだと思います。
だから、今回、この文章を書くにあたって、
改めて、自分の好きな作品は何だろうと
振り返り、書き出してみたら、
やっぱり、その“もやもや期”に観た作品に偏っていました。
前置きが長くなりましたが、
次回からは、私がもやもやしたときに繰り返し観て、
元気をもらっている作品を紹介します。
(つづきます)