- 田中
- モノを書くようになってたった2年ですけど、書くことの落とし穴はすでに感じていて。「僕はこう考える」っていうこと毎日毎日書いていくうちに、どうしてもだんだんと、独善的になっていく気がします。
- 糸井
- なっていきますね。
- 田中
- 主張が偏ってしまう。
- 糸井
-
うんうん。多分、自分の世界像を安定させたくなるんだと思うんですよね。
でも世界像を安定させるとおそらく、ある種の全能感のようなものを感じてしまうんです。
- 田中
- はい、はい。恐ろしいことですよね、それは。
- 糸井
-
ですね。
その状態になることは、僕は避けたいなと思っています。
- 田中
- だから僕も、永遠に馬鹿馬鹿しいことをやっていたいんだけど、それはそれで一種の体力が必要で。
- 糸井
- 体力、必要ですね。

- 田中
- 体力使うんだけど、これをやらないところに陥った瞬間、独善的になっちゃう気がして。
- 糸井
- なりますよねぇ。やっぱり、田中さんも僕も、人に感心されて「いや、悪い気はしないよ」っていうポイントはやっぱりいっぱいあるわけだから。
- 田中
- はい、はい。
- 糸井
- どうしようかって思うんだよ。
- 田中
- どうしようか(笑)。そうですよね。

- 糸井
- で、そんななか、僕はどうありたいかなっていうのを考えると、「ご近所の人気者」なんですよ。
- 田中
- ご近所の人気者。
- 糸井
- 近い所で僕のことを知っていたり、書いたものを読んでくれたりしている人たちが、「あぁ糸井は今日も機嫌よくやってるな、なんかいいな」って思えるような。お互いにね。
- 田中
- はいはい、なるほど。偉そうにならず、ご近所の人として親しめるような。
- 糸井
-
そうそう。やっぱりそこに落ち着いていたいと思います。
最近は、ご近所のエリアが、本当の地理的なご近所と、気持ちのご近所と両方ありますしね。
それは「アマチュアでありたい」ということと一緒で。「そんなところから言うのはずるいよ」っていう場所から言いたい。そうしないと、いい「読み手としてのの書き手」にはなれないって思ったんです。
- 田中
- あぁなるほど‥‥。この話、対談を起こす人にどこまで伝わるかなぁ。これ、むずかしい話だなぁ‥‥。
- 糸井
-
まぁ、伝わらなくてもいいですけどね(笑)この場で言えれば、それでいいかなあと思って、言いました。
ではこのあたりで終わりにして。ありがとうございました。
- 田中
-
ありがとうございました。
‥‥ところで、ずっと思っていたんですけど、そのバッジはなんですか(笑)?
- 糸井
- え、これ?服着たら付いてた。

- ――
- 田中さんの。「ヒロノブ」バッジ。
- 田中
- シャツが白で、ジャケット黒だから、そういう模様かなと思っていたら。
- 糸井
- そう見せかけたんですよね。
- 田中
-
途中から、「あれ?」と思ってました。なんか光ってるし(笑)
いやいや、ありがとうございました。
(おわりです)