- 糸井
- ということは、初めて書いたのは2、3年前。
- 田中
-
そうですね。最初は東京コピーライターズクラブのコラムで。800字くらい。
でもそのうちの中身にあたるものはほとんどなくて、800字のうち600字くらいは、どうでもいいことだけが書いてあるっていう文章です。
- 糸井
-
そうそう、それがすごく面白かったんですよ。
そして映画評みたいなものが次ですか?
- 田中
-
そうです。
もともと、Twitterでたまに、「昨日見た映画、ここがおもしろかった」っていうのを2、3行書いてたんですが、それを見て、連載の依頼をいただきました。
- 糸井
- ほぉ。
- 田中
-
それで「分量は?」って聞くと、「2、3行でいい」と。
「え、本当にいいの?2、3行で?」と思ったけど、「いい」って言われたので、映画を観て、次の週にとりあえず7,000字書いて送りました。
- 糸井
-
あはは(笑)
2、3行のはずが7,000字。7,000字、結構多いですよ。
- 田中
- 多いですね。

- 糸井
- それは、書き始めたらいつの間にか、そんなに長くなっちゃったんですか?
- 田中
- なっちゃったんです。
- 糸井
- それまではそんなに長い文章なんて書いたことなかったのに。
- 田中
- 広告業界にいたときは、キャッチコピーが20文字程度で、ボディコピーが200文字とか。あとは大学の卒業論文くらいで‥‥。
- 糸井
- 友達同士での、メールのやりとりとかは?
- 田中
- あんまりしてなかったですね。
- 糸井
- ラブレターも?
- 田中
- そういうのはまったくもう、苦手で。
- 糸井
- いやぁ、すごいたまり方してたんでしょうね。書くことへの欲求が(笑)
- 田中
- もうすごいですよね。たまりにたまった何かがバーンと。

- 田中
- 本当は、2、3行書いて終わるつもりだったんですよ。だけど書いているうちに、勝手に無駄話が止まらなくなってきてしまって。初めての経験でした。
- 糸井
- あぁ。
- 田中
- キーボードに向かいながら、「一体俺は何をやっているんだ、眠いのに」っていう。
- 糸井
- それは、書けることがうれしくて?
- 田中
-
なんでしょう‥‥。
「これを明日ネットで流せば、絶対笑うやつがいるだろう」と想像すると、ちょっと取り憑かれたようになって。
「自由に文字を書いて、必ず明日には誰かが見るんだ」と思うと、うれしくなったんですよね。
- 糸井
- あぁ、なるほど。今までなかった感覚が新鮮だったんですね。それはうれしいだろうなぁ。
- 田中
- 未だに僕は、そのときの感覚があって、何かを書いたら、「おもしろい」とか、「全部読んだよ」とか、「この結論は納得した」とかいう、読んでくれた人からの声が報酬になってますね。
(つづきます)