もくじ
第1回手土産研究家の田中さん 2017-03-28-Tue
第2回受け手を味わうための、書き手 2017-03-28-Tue
第3回主張ではなく、お話がしたい 2017-03-28-Tue
第4回ブルーハーツと釣り 2017-03-28-Tue
第5回これからについての雑談 2017-03-28-Tue

ごま油が好きな
デザイン学生です。

偉くないけど、奥ぶかい</br>二人の書く理由

偉くないけど、奥ぶかい
二人の書く理由

第4回 ブルーハーツと釣り

田中
この間みんなで、
燃え殻さんとか永田さんとか古賀さんと、
雑談したじゃないですか。9月。
あの時点でまったく辞めると思ってなかったです。
 
辞めようと思ったのが、11月の末です。
で、辞めたのが12月31なんで、
1ヶ月しかなかったです。
辞めた理由は、
理由になってないような理由なんですけど、やっぱり、

糸井
ブルーハーツ?
田中
ブルーハーツですよ。
まだこんなね、50手前にオッサンになっても、
中身は20うん歳のつもりだから、
あ、これは、このように生きなくちゃいけないなって。
 
かと言って、何か伝えたいこととか、
「熱い俺のメッセージを聞け」とかないんですよ。
相変わらず、なんか見て聞いて、
「これはね」ってしゃべるだけの人なんですけど。
でも、ここは出なくちゃいけないなってなったんです。
糸井
僕にとっては、ブルーハーツに当たるのが
釣りだったんですよね。
誰もが平等に争いごとをするわけです、コンペティション。
その中で勝ったり負けたりっていうところで
血が沸くんですよ、やっぱりね。
田中
この間おもしろかった(笑)、
「始めた頃は、ちょっと水たまりを見ても、
魚がいるんじゃないか」って。

糸井
そう。
いるんだっていうのと、
それから、普段見えていない生き物が僕の、
その竿の向こうでひったくりやがるわけです。
ものすごい荒々しさで。
その実感がもうワイルドにしちゃったんですよ、僕を。
なんておもしろいんだろうって。
 
その後、プロ野球のキャンプに行く、
青島グランドホテルに向かうまでの道のりに
何回も水が見えて、
野球を観に行くはずなのに、水を見てるんです。
田中
水を見てる(笑)。
糸井
折りたたみにできる竿とかを、
野球のキャンプの見物に行くのに、持っているんです。
 
で、家族旅行で正月、温泉旅行に行った時も、
まったく根拠なく、真冬の砂浜で一生懸命投げてる。
海水浴やるようなビーチで。
田中
(笑)なんか釣れましたか、その時は?
糸井
まったく釣れません。
根拠のない釣りですから。
田中
(笑)

糸井
でも、根拠がなくても水があるんですよ。
一同
(笑)
糸井
これ、僕にとってのインターネットって、水なんですよ。
田中
なるほど。

糸井
今、初めて説明できた。
根拠はなくても水があるんです。
田中
根拠はなくても水がある。
糸井
水があれば、水たまりでも魚はいるんですね。
それが自分に火を点けた。
だから、僕の「リンダリンダ」は、水と魚です(笑)。
 
おもしろいんですよ。
朝1人で誰もいない所で釣りをしてると、
何も気配がなかった、静けさの田んぼの間の水路みたいな川で、
泥棒に遭ったかのようにひったくられるんですよ。
「俺の大事な荷物が今盗まれた!」っていう瞬間みたいに、
パーッと引かれるんですよ。
その喜び。
これがね、俺を変えたんじゃないですかね。
田中
なるほど。その話が、まさかインターネットにつながるとは。
糸井
思いついてなかったですね。
田中
でも、言われてみたら、きっとそういうことですよね。
糸井
広告を辞める、ここから逃げ出したいな
っていう気持ちと同時に、
「水さえあれば、魚がいる」っていう、その期待する気持ちに、
肉体が釣りでつなげたんでしょうね。
田中
なるほど。
糸井
うわぁ、素敵なお話ですね。
田中
いや、本当に(笑)。
第5回 これからについての雑談