
- 糸井
-
僕は最初、田中さんを書く人っていう
認識はなかったですけど、
東京コピーライターズクラブのリレーコラムを
誰かが紹介してたんですよ。
思えば僕もコピーライターで、
コピーライターズクラブの人間だったんで、
今はこんなことやってるのかって読み始めたら
おもしろくて、誰これ?っていうのが、
まだ2年くらい前。
もって銘すべしであろうか。
RT @hironobutnk: とにかくなんでも最後に
「軍靴の音が聞こえてくる」
と書けばエッセーは完成するのです。東京コピーライターズクラブ
リレーコラム
『エッセーの書き方』https://t.co/LSNKAHcJbS— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) 2016年3月3日
- 糸井
-
それまで、田中泰延名義で、
個人で書くことはなかったんですか?
- 田中
-
一切なかったんです。
コピーライターの仕事で、
キャッチコピー20文字程度、ボディコピー200文字とか。
- 糸井
- はいはい。
- 田中
- それ以上長いものを書いたことが、なかったです‥‥
- 一同
- (笑)
- 田中
-
まったくもう、書くことが苦手で、書くって言ったら、
2010年にツイッターに出会ってからですね。
140文字までしか書けないので、
広告のコピー書いてる身としては、
こんなのは楽だっていうことで始めました
- 糸井
- ちょうどいいんですよね。

- 田中
-
それで2年前、2015年の3月に
西島さん(街角のクリエイティブ編集長の西島知宏さん)が
突然大阪の僕の所に訪ねて来られて、
「明日会いましょう」
「なんですか?」って行くと
大阪のヒルトンホテルで、いい和食が用意してあって
そうしたらもう、
「食べましたね。食べましたね、今」
「食べましたよ」
「お願いがあります。うちで連載してください」と。
糸井さんも見られた、東京コピーライターズクラブのコラムと
ツイッターで、昨日見た映画、ここがおもしろかったって
2、3行書いてたんですね。
それを見て、いらっしゃったみたいです。
それで、「分量はどれくらいでいいですか?」って聞いたら
「ツイッターで映画評されているので、2、3行でいいです」。
- 糸井
- (笑)

- 田中
-
「いいの?2、3行で?」、「そうです」って言うから、
映画を観て、次の週にとりあえず7,000字書いて送りました。
- 一同
- (笑)
- 糸井
- 溜まった欲が。
- 田中
-
そう。書いてみると、やっぱりね。
2、3行のはずが7,000字になってたんです。
初めて、勝手に無駄話が止まらないっていう経験をしました。
キーボードに向かって俺は何をやっているんだ、眠いのに。
- 糸井
- うれしさ?
- 田中
-
なんでしょう。まぁちょっと、
「これを明日ネットで流せば、絶対笑うやつがいるだろう」
と想像すると
ちょっと取り付かれたようになったんですよね。
- 糸井
-
書くことを「嫌いだ」とか「好きだ」とかは
思ってなかったんですか?
- 田中
- 読むのが好きで。
- 糸井
- あぁ。
- 田中
-
読むのはずっと好きで、
夏の皆さんとの雑談でも、「ひたすら読んでました」
っていうのはあったんですけど、
自分がまさかダラダラと何かを書くとは夢にも思わず。

- 糸井
-
今、頭の中でちょっと考えていたんですけど、
読み手として書いてるタイプの人っていて。
自分にもそういうところがあって、
コピーライターって、書いてる人っていうより、
読んでる人として書いてる気がするんですよ。
- 田中
- はい、すごくわかります。
- 糸井
-
うーん‥‥、
視線は読者に向かってるんじゃなくて、
自分が読者で、自分が書いてくれるのを待ってる。
- 田中
- おっしゃるとおり、それすごく、すっごくわかります。
- 糸井
-
初めて今、思いました。
これ説明するのむずかしいですねぇ。
- 田中
-
むずかしいですね。
でも、発信してるんじゃないんですよね。
- 糸井
- 受信してるんです。
- 田中
- はい。
- 糸井
-
だから、自分に言うことがない人間は書かない
って思ってたら大間違いで。
- 田中
- そうなんです。
- 糸井
-
読み手というか
受け手であるっていうことを、
「思い切り伸び伸びと自由にこう、味わいたい!」
って思って
「それを誰がやってくれるのかな」
「俺だよ」っていう。
- 田中
- そうなんです。
- 糸井
-
あぁ、なんて言っていいんだろう、これ。
今の言い方しかできないなぁ。
- 田中
-
映画を観るときも、まずその映画を観ますよね。
次にいろんな人が今、ネットでも雑誌でも
評論をするじゃないですか。
そうしたら
「何でこの中に、この見方はないのか?」
それで、探してあったら、
もう自分は書かなくていいんですけど
「この見方、なんでないの?じゃあ、今夜俺書くの?」
っていうことになるんですよね。
- 糸井
-
受け取り方は、発信しなくても個性なんですよね。
そこでピタッと来るものを探してたら、
人がなかなか書いてくれないから
「え、俺がやるの?」っていう。
それが仕事になってたんですね。
- 田中
- そうですね。
- 糸井
- 自分がやってることも今わかったわ。