もくじ
第1回リンダリンダをきいて電通を退職 2017-03-28-Tue
第2回ミスター手土産 2017-03-28-Tue
第3回「ジ・アザーズ、ら、他の話」から中座 2017-03-28-Tue
第4回自由に書ける、という快感を知る 2017-03-28-Tue
第5回書き手ではなく、読み手として。 2017-03-28-Tue

寒さに弱い北海道出身。経理、飲食業、旅人など様々な職業を経て、いまは日本酒ライターです。「后バー有楽」の女将もやってます。待ってます。
Twitter :@otomi0119

【近所の人気者でいたい】</br>田中泰延と糸井重里

【近所の人気者でいたい】
田中泰延と糸井重里

担当・友美

第2回 ミスター手土産

田中
今日は、このモンドセレクションを、
2年連続金を出して受賞した、
大阪キャラメルプリンケーキです。
糸井
いつもありがとうございます。
いつも、今日のように、
いくつかの紙袋に、手土産が入ってて。
僕は「ミスター手土産」って認識しています。
田中
いつそんなことになったんでしょうか(笑)
糸井
いやいや(笑)
どうしてあんなに手土産を?
むかし営業やってらっしゃったんですか?
田中
営業はやったことないですけど、
自分が貰うとうれしい
っていう経験がすごく大きくて。
糸井
大きくて。
田中
自分が持っていくものは、大体つまんないんですけど、
逆に、ほぼ日さんに伺う時は、
ジャムとか、カレーの恩返しとか、
メッチャいいもの貰えるじゃないですか。
糸井
なるほど。
田中
やっぱり貰うとうれしいし、
あと、家族が喜ぶんでね。
糸井
家族って言葉が、田中さんの口から出てきたのは、
ちょっと珍しいですね。
田中
珍しいですね(笑)
糸井
やっぱり、電通をお辞めになって、
無職になったことが大きいですね。
田中
そうですね。そうなんです。

糸井
僕もむかしは、手土産好きな人間だったんですけど、
そのころ、手土産に対する考え方をくれたのが、土屋耕一さん。
田中
はい。コピーライターの。
糸井
同業で、神みたいな土屋耕一さんが、
若い時に、アルバイトで資生堂の宣伝部に入って。
そこで、
「みんなで一杯やるから、なにか買って来いよ」
って、松屋の地下によくおつかいに行かされて。
その時の買ってくるものが気が利いているんで、
「それで俺は社員になったんだよ」と。
田中
あぁ。なるほど。
糸井
いいでしょう?
田中
そういうのありますね。
「つまんないものです」って手土産持っていくのって、
すごい良いコミュニケーションですよ。
 
むかし田村正和さんに、喜んでもらえるだろうと思いつつね、
田村さんが、テレビドラマの中で乗ってた車のミニカーを、
「つまんないものですけど」って渡したら、
表裏じっくり見て、
「本当につまらないね」って、あの口調で(笑)。
糸井
あぁ(笑)
田中
でも、そう言いながらもね、
楽屋に置かずに、かばんにしまったんですよ。
だから、それ、すごいいいなぁと思って。
糸井
駅なのか、いつもどこで買うのかわからないけど、
「つまんない」の、ハードルをものすごく下げた状態で、
だいたい田中さんは選んでこられますよね。
田中
だいたい、新幹線に乗る直前に買うんですけど(笑)
大阪のいいところは、「面白い恋人」とか、
ネーミング自体がくだらない(笑)
糸井
はいはいはい、すでにね。
田中
中身のおいしさとか
まったく問われないところで、
コミュニケーションツールになる。
糸井
うんうん(笑)
あ!でもこの間の、
目黒の揚げ煎餅と揚げ饅頭のセット。
田中
あれは本気です。
糸井
ねぇ。「これ、うまいじゃん」ってなって、
僕のなかで、田中さん像がちょっとぼやけてちゃって(笑)
田中
あれは、塩野米松さんがいらっしゃったからです。
東北から来られた塩野さんに、
いきなり、
お約束の「面白い恋人」とか、あげてもね。
「なんじゃ、これは?」ってなりますからね。
糸井
あぁ。微妙にこう使い分けて。
ちょっとね、
この辺が土屋耕一になるタイプ。
田中
いやいやいや(笑)。
糸井
手土産みたいなものでも、
僕らはきっと、コミュニケーションしてるわけですよ。
田中
はい、はい。

糸井
あと、今だから、もう言える秘密が僕らの間に1つあって。
田中
はい。
糸井
お花見問題。
田中
はいはいっ。大問題ですね。

糸井
田中さんが、電通関西支社にいらっしゃったとき、
よく言えば、梁山泊みたいな所なんです。
田中
はぐれものの集りですよ。
堀井博次さんっていう親玉が40年ほど前に現れて、
秋山晶さんとか、それこそ土屋耕一さんとか、
東京の方たちが作っているカッコいい広告に対して、
大阪からカウンターパンチを食らわせよう!と。
京都や大阪のこの関西のノリで、どんどん人が集まっていって、
梁山泊みたいな集団になってしまって。
 
そこに石井達矢さんとか、
その後電通の専務になった田井中邦彦さんとか、
おかしな人がいっぱい集まったんですけど、
なぜかそこに、糸井さんが(笑)
堀井さんが30年くらい前に「糸井さん、一緒に仕事をしよう」っ繋がってて、
久しぶりの再会がそのお花見だったんですよね。
糸井
飲み会みたいな所では会ってるんですけど、
電通の関西チームに揃って会うのは、初めて。
田中
あの30何人の大集団に。
糸井
その大集団は、アクの強い人たちだらけなわけで(笑)
田中
はいはい。
糸井
そこで、若手の田中さんの案内で、お花見に行ったんですよ。
その時初対面なんですね。
田中
はい。
糸井
で、ツイッターとツイッターのメッセージで、やり取りして、
「やぁやぁやぁ、どうもどうも」
って、京都駅で待ち合わせたわけですね。
その時も、複数の紙袋下げてるわけです(笑)
田中
(笑)
糸井
「糸井さんにお渡しするものなんですけれども、
荷物になりますから、つまらないものですが、
これはそのまま僕が帰りまで持っています」って。
渡さないっていうのにもちょっと知恵を使っているわけです。
 
で、もう1つ。
それは、一升瓶なんですね。
「あの梁山泊の方々は、とにかく酒があれば機嫌がいいので、
これは糸井さんからの差し入れだっていうことで、
申し訳ないですけど、勝手に用意させていただいたんで、
これを、お渡しする時だけ持っていただけませんか」っていう。
何、歌舞伎のプロンプターみたいな(笑)
で、この人は何十年営業畑にいたんだろう?
と思ったんですけど、営業畑にはいないんですよね。
田中
まったくやったことがないんですよ。
そのお酒っていうのは、
開けると、のしに大きい筆文字で、「糸井」って書いてあるんですよね。
糸井
もうすでに(笑)
だから、もう、なんていうの、
いいんだけど、騙されてるような気がする(笑)。
田中
この小賢しさっていうね(笑)。
糸井
で、その念の入り方があんまりなんで、
もう笑うしかなくて(笑)
ただ、その梁山泊の連中は、人を疑うことにかけても手練れだし、
言っちゃったほうがいいのか?言わないほうがいいのか?その加減もわかんないんです。
田中
はい。
糸井
で、まぁここは任せておこうと思って、
僕は芝居ができない人間なんで、
言われた通りに、「これ」って言って渡したら、
案の定、湧くんですよ。
田中
糸井さんをお連れするから、特別ゲストだから、
みんなが既に座って、ちょっと飲んでいる所にお連れしたんですよね。
糸井さん、すごい小さい声で、「あのぅ、これ、僕が」って(笑)
田中
そうしたら、みんなが「ワーッ!」っと盛り上がって。
酔っ払いだから、包み紙をグシャグシャって取ると、
「糸井」って書いてあって、お酒が出てくるから、「ウワァーッ!」って(笑)。
糸井
すごいんだよ。
ガソリンを、焚火に投入したみたいに。
あぁ、これだったら、持ってきたほうがいいんだなぁって。
東京のであれやったら、
「あぁ」って言ってお終いですよね。
田中
あぁ、なるほど。
手に取った瞬時に開けてましたね。
糸井
そうですね。
田中
ひょっとしたら、
糸井コールが起きるんじゃないか、くらいの盛りあがり。
糸井
酒。
田中
「酒あるぞ!」、全員一斉に注いで、一気に飲んでましたね。
糸井
なんですかね。
いやぁ、見事な芝居のようでしたね、あの場所はね。
糸井
田中泰延っていう人が、
このチームの中でどういう存在なのか、
まったくわからないんですよ。
誰もわかんないチームだね、あれは。
田中
そうですね。

(つづきます)

第3回 「ジ・アザーズ、ら、他の話」から中座