もくじ
第1回「なんでもいい」って、言ってるよ 2017-05-16-Tue
第2回いろんな種類の「なんでもいい」 2017-05-16-Tue
第3回自分はどうして「なんでもいい」のか? 2017-05-16-Tue

好きな時に好きなことをする平成元年生まれ。優等生をやめました。いまはフリーランスで、文章を書くお仕事をしています。Twitterは@matsuo_mk

「なにが食べたい?」</br>「なんでもいいよ」

担当・マツオカミキ

第2回 いろんな種類の「なんでもいい」

自分の「なんでもいい」を考えようとした時、
「そもそも他の人はどうなんだろう?」と、気になった。
というのも、食べたいものが思い浮かばなくて
「なんでもいい」と言うこと自体、
そんなに特別なことじゃないのかもしれないと思ったからだ。

そこで、友人3人に聞いてみることにした。
「ご飯を決める時に、パッと食べたいものが
思い浮かぶかどうか」について、
誰かと一緒に外食する時と、
自分ひとり用のご飯の時、
両方のシチュエーションで質問してみる。

***

まずはいつもニコニコ優しい
友人のユキさんに質問してみた。
わたしとユキさんは数カ月に一度ご飯を食べに行く仲だが、
ユキさんがお店を決めているのを見たことがなかった。
だから「きっと『なんでもいい派』だろうな」と
心の中では思いながら、質問してみた。
 

ユキさんって、今日のご飯になにを食べるか考える時、
パッと思い浮かびますか?
ユキ
うーん、わたし、食べたいものがたくさんあるんだよね。
だから誰かと外食をする時は、
どんなお店に行っても食べたいものを見つけられるから、
「なんでもいい」って言って
お店は相手にまかせちゃうことが多いかな。
 

わたしと同じ「食べたいものがないから、なんでもいい派」だと
思っていたけど、ユキさんはむしろ
「食べたいものがありすぎて、なんでもいい派」だったのだ。
そういうパターンもあるのかと、わたしは少し驚いた。
 

家で自分のためだけにご飯をつくる時は、どう?
ユキ
食べたいものが常にあるから、
だいたいパッと思いつくよ~。
 

ユキさんは、家でも外でも食べたいものがたくさんあるんだ。
一緒にご飯に行くときに「なんでもいい」って言っているのは、
「場所やジャンルはなんでもいい」という意味であって、
実際に自分が食べるものについて
「なんでもいい」というワケじゃないんだな。
「食べたいものがたくさんあって‥‥」と言うユキさんを、
ちょっとだけうらやましく感じた。

***

次に「なんでもいいと言わなさそうな人にも聞いてみよう」と思って、
料理上手でおいしいお店もたくさん知っている
友人のミワコさんに聞いてみた。
 

ミワコさんって、今日のご飯になにを食べるか考える時、
パッと思い浮かびますか?
ミワコ
うーん、わたしはパッと決められないタイプかなぁ。
 

‥‥ここでわたしは、このインタビューの難しさを実感した。
インタビューの難しさというか、
自分が無意識に「この人はきっとこうだ!」と
決めつけてしまっているがゆえの難しさだ。
ユキさんともミワコさんとも
もう8年ほどの長い付き合いなのに、
自分が思っていた「この人はきっとこうだろう」が
ことごとくハズれていて、なんだかおもしろかった。
 

ミワコさんは、いつも良いお店を教えてくれるし、
パッと決められるタイプかと思ってた。
ミワコ
食べることが好きだから、行ってみたいなと思う場所は
たくさんあるんだけど、誰かと行くとなると
「このメンバーでその料理っていうのは、ベストなのかな?」
とか考えちゃったり。
だからお店だけ提案して「わたしはなんでもいいよ」と伝えて、
最終的にはいつも決めてもらうよね?
 

たしかに、過去を振り返ってみれば、
ミワコさんとご飯に行く時は
何件か行ってみたいお店を出してもらって、
最終的にはわたしが「ココにしよう」と決めていたかも‥‥。
 

ミワコ
自分ひとりが食べるものだったら、割とすぐ決められるよ。
家でも夫がいたりすると、
自分が食べたいものだけをつくるというワケにもいかなくて、
すごく悩むんだけど‥‥。
 

ミワコさんは、「自分の食べたいもの」はあるけど、
他人のことを考えると決められないという感じなのかなと思った。
自分以外の人の「食べたいもの」を気づかって、
「なんでもいいよ」と言ってしまうっていうのは、
すごくわかるなぁと思った。

***

最後に、身体は細いのにたくさん食べる
友人のヒトミさんに聞いてみた。
これまで2人の友人に聞いてみたが、
「この人は、きっとこうだろう」という予想が外れていたので、
もう先入観を持たずに聞くことにした。
 

ヒトミさんって、今日のご飯になにを食べるか考える時、
パッと思い浮かびますか?
ヒトミ
誰かと一緒に食べる時に「なにが食べたい?」って聞かれたら、
「麺」って即答するよ。
麺、かぁ。いつでもそうなの?
ヒトミ
うん、だいたい、そうだね。
麺を食べておいしくなかったことはないし、
ラーメンでもうどんでも素麺でも、麺ならなんでも好きだから。
「麺」って幅をもって相手に伝えて、
相手が麺に乗り気じゃなかったら
「なんでもいいよ」って言うかな。相手に合わせる。
 

なるほど、「なにが食べたい?」と聞かれた時に、
ピンポイントで料理名を言うんじゃなくて、
幅を持たせてジャンルで答えるという返し方もあるんだな。
 

ヒトミ
ひとりでご飯を食べる時も、麺にすることが多いなぁ。
食べたいものの中からどれにするか悩むことはあるけど、
食べたいものがなくて困ることはあんまりないなぁ。
 

「いつでも食べたい!」というものは、
わたしにはちょっと想像できなかったから、
「麺はいつ食べても美味しいよ!」と力説する
ヒトミさんの考え方が、わたしにとってはとても新鮮だった。

***

友人3人に聞いてみた結果、
3人とも「なんでもいい」と言うことがあるとわかった。
でもその「なんでもいい」と言うシチュエーションや背景は
3人とも違っていた。
ひょっとして「なんでもいい」っていうシンプルな言葉は、
実はいろんな意味を内包したものなのかもしれない。

「なんでもいい」にいろんな種類があるとわかったところで、
じゃあ、わたしは「なんでもいい」を
一体どんな意味で使っているんだろう?

(つづきます)

第3回 自分はどうして「なんでもいい」のか?