もくじ
第1回鎌倉に憧れて 2017-05-16-Tue
第2回カメレオンとの出会い 2017-05-16-Tue
第3回26歳の転機 2017-05-16-Tue
第4回自分が嫌いになった 2017-05-16-Tue
第5回ありがとう 2017-05-16-Tue
カメレオンと、私。

カメレオンと、私。

担当・萩原有美子

第5回 ありがとう

鎌倉に着いたのは深夜24時前だった。
ホームに降り立ったのは数人しかいない。
週末になると観光客でいっぱいになる改札は
がらんとして、ひっそりしていた。

でもここは鎌倉だ。
大丈夫。私には仲間がいる。
1人じゃない。
はやる気持を抑えきれず、
早足でみんながいる場所へ向かった。

早く会いたい。早く、早く。

扉を開けると、みんなが振り返る。
瞬間、ふっと肩の力が抜けた。

「お!おつかれさま〜。遠くからありがとうね」

ううん、全然。

「今日は長いよ。よろしくね」

もちろん。
やれることは、全部やるよ。がんばるよ。

心にぽっと灯りがついて、じわじわと
嫌なものを溶かしてくれるようだった。
会っただけ、話しただけなのに、すごいパワーだ。

聞いていた通り、校了に向けての作業はハードだった。
原稿には赤が入り、修正するだけで精一杯だった。

寝てしまった人、息抜きにアイドルの動画を見ている人、
必死にPCとにらめっこしている人。
みんなそれぞれのペースで進めていた。

余裕がない私は、必死で原稿修正をしていたが、
ここにいる、という事実が何よりの原動力だった。

夢中で作業をつづけた。

みんなとげらげら笑っていた時、
あれ。笑いすぎて頬がいたい、と思った。
こんな感覚、久しぶりだった。
自分の笑い声を久しぶりに聞いた。

カメレオンでは、
私は自分の意見が言えて素直になれる。
役に立つこともできる。
私を必要としてくれる人たちがいる。

失っていた自信、自分を信じる気持ちが
むくむくと蘇ってきた。
人って、案外単純だ。

はー。

大きく息を吐いて、思った。

「ありがとう」

–4年後。
私は仕事も、カメレオンの活動も続けている。

苦しい時もあったが、
仕事は少しずつ前向きに取り組むことができた。
今では仕事もカメレオンと同じくらい大切なことだ。

辛い時に、仲間がいてくれてよかった。
鎌倉での活動に力を入れることで、自信がついた。
営業、取材、イベント企画など。
任せてもらえることがどんどん増えていったのだ。

私にもできるんだ。

経験を重ねることで得た自信は、
仕事に対する”意欲“へ変わっていった。
くよくよしていたら、もったいない。
きっと、仕事でも夢中になれることがあるはずだ。

部署が異動になった頃は、
暗くぼやけていた道を行き先も分からぬまま、
恐る恐る歩いていた。
前に進んでいるかも、分からなかったと思う。

今は、景色がはっきり見える道を
着実に1歩1歩進んでいる、という実感がある。

本当に感謝している。

鎌倉は私にとって「特別」な場所。
出会った仲間は私の「宝」だ。

この先も「ああもうだめだ」と辛くなる時が
きっとあるだろう。
またか、と絶望するだろう。
選択を誤り、後悔することもあるかもしれない。

きっと大丈夫。

鎌倉で得たかけがえのないひと時を
もう一度思い出し、前を向いて歩いていきたい。
きっとまた、進むべき道を見つけることができると思う。

(おわります。
最後まで読んでいただきありがとうございます!)