異動してからは、毎日泣いていた。
以前と仕事内容が全く異なる上、
特殊な部署へ異動になったので、転職した様な気分だった。
最初こそ前向きだったが、
仕事を覚えるのが遅い自分への嫌悪感が
日に日に増していくようになった。
なんで、こんなことができないの…?
以前の部署は人数が多く活気があったが
今いる部署は少人数。
皆黙々と仕事を進めていた。
くだらない話は一切なし。笑い声すら聞こえない。
はあ…
ため息がでるくらい、当初は馴染めなかった。
早く仕事を覚えなくては、と張り切るものの
ミスをすることで空回りし、怒られる。
よし、と立ち直ってはみるものの、またミスをする。
胸がきゅうっと苦しくなる。
じーん。目頭がだんだん熱くなる。
涙が流れないよう、口をつぐんでじっとがまんした。
私って、こんなに仕事ができなかったんだ。
自分にがっかりした。
自信のない心を見透かされるのが嫌で
気丈に振る舞ったが、分かる人には一目瞭然だったようだ。
「最近疲れてない?」「顔が暗いけど…大丈夫?」
正直限界だった。
以前の部署には4年在籍していた分、
気負わずに仕事ができるようになっていた。
「人よりちょっとできる」
勝手に決めつけていたプライドがズタズタになった。
自分の脆さを認めたくなかったのだと思う。
退社し、暗い夜道を歩き始めると
ようやくほっとしたのか、涙がどんどん溢れてきた。
人気を避け、マンション脇にある木の下で1人泣いていた。
涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになるのも気にせず、泣いた。

悔しい悔しい悔しい…!
怒り、絶望、焦燥感。
様々な感情が私を襲った。
異動して2ヶ月経ったころには、
左右の頬から首にかけて赤いニキビができた。
ストレス性のもので、触れるとチクっと痛い。
中々治らず、更に苦しくなった。
もう、だめだ。
始めて会社を辞めたいと思った。
すっかり気力を失くしていた頃、
カメレオンからメールが入った。
「今週の金〜土にかけて、徹夜で編集作業やります!」
うわぁ…疲れているのに、タイミング悪いな。
とは思ったものの、
今号は、始めて関わることができているフリーペーパーだ。
発行まで1ヶ月を切っていた。
取材、ライティング、写真選定は終わっている。
あとは校正をし、先方チェックをすれば終了なのだ。
仕事では役立たずだけど、
フリーペーパーは完成までしっかり関わりたい。
…協力したい。
夜22時過ぎ、最寄りの駅を出発し鎌倉へ向かった。
役に立てるだろうか…。
不安はあったが、
みんなに会える、という事実が背中を押した。
早く会いたい。
その一心で、鎌倉へ向かった。
(つづく)