社会人4年目の私は、進路に悩んでいた。
「ずっとここで働きつづけるべきか…?」
仕事は嫌いではなかったが、小学生の頃から
自己流で小説や漫画を作成するなど、
書いて表現をすることが大好きだった私。
編集者になりたい、という夢も捨てきれずにいた。
でも、私にできるだろうか。
自信がない。
勤務時間、待遇が安定した現職を
手放すほど勇気がなかったのだと思う。
最近は責任ある業務を任せてもらえるようになり、
やりがいは感じていた。
でも…。いっそのこと留学も憧れるな。
いや、転職でしょ。でも…。
ぐるぐるぐる。
様々なカードが私の前に並ぶが、
どれもしっくりこなかった。
しかし、chameleon(以下:カメレオン)には夢中になった。
幸い面接に合格し、メンバーの一員になれた。
好きで好きでしょうがない鎌倉へ通えるだけで
ラッキーだったが、フリーペーパーを作れるなんて。
憧れの“編集者として”活動できるなんて。
企画出し、取材対象者へのアポイント、ライティング…
全ては私にとって新しいこと、興味があることばかり。
嬉しかった。
今すぐ家を飛び出して山の頂上から
「やったよーーーーーー!」と叫びたいくらい。
やっと好きなことを見つけた喜びでいっぱいだった。
編集長は、私と同じ26歳。
19~28歳のメンバーが10名ほど所属する、
若い団体だった。
本業とは別に、みんな趣味として集まっていた。
何か面白いことを企もうと、いつも考えていた。
企画がすんなり通って、
事がスムーズに進み始める日もあったが、
いいことばかりではなかった。
意見が並行線のまま、中々まとまらない時もあった。
妥協はしたくないので、ひたすら答えを探そうと
時間だけが刻々と過ぎていく辛い日もあった。
それでも、心待ちにしていたことがあった。
編集会議を夕方には切り上げて、
ビールや、焼き鳥、ピザなどを買い出しに行く。
これが楽しかった。
観光客に混ざってコロッケ屋さんに並んだり、
海の近くにある、安くて美味しいピザ屋を目指して
走って買いに行ったり。

おつかれ〜!
と杯を交わすことで、一気に緊張が緩む。
夕陽がみんなの顔をきらきらと照らし、
夜になると、月夜の灯りが私たちを優しく包みこんだ。
帰る頃にはみんなが玄関まで送りに来てくれる。
兄弟みたいに、仲がよいのだ。

取材、ライティング、営業に関しての
基礎的なことは教えてもらったがすぐに現場へ出た。
分からないことがあれば、随時聞く。
その繰り返しでどんどん経験を積んでいった。
ゲストハウスを取材しようと、実際泊まってみたり、
宿のオーナーと2時間くらい鎌倉のこと、
宿事情のことを真剣に語り合ったり。
取材を通して、想像していた以上の刺激、
新しい出会い、気づきを得ることができた。
幸せだった。
カメレオンに入って、半年。
全てがうまくいっているように思えていた。
しかし、ここで転機が訪れる。
やりがいを感じていた
(会社の)部署を異動することになってしまったのだ。
(つづく)