中学に進学したぼくには、はじめての同級生ができた。
ひとクラスだけで、25人しかいなかったけど、
ぼくにとってはじめての同級生。
各学年ひとクラスの中学校は、
全校生徒100名に届かないくらいのところだったけど、
そんな中学校でぼくは、上下関係というものを覚えた。
1年後に入学してきた恵介は、
いつしか敬語に変わっていた。
ぼくにとって、恵介から敬語を使われるのは違和感だったから、
よく「敬語じゃなくて、いいから」って言っていた。
でも、きっとぼくは「敬語にしろよ」って態度を
とっていたんだと思う。
幼馴染だったぼくらは、
いつしか仲の良い先輩後輩に変わってしまっていた。
それは、ぼくが招いた結果だった。
自分の小さなプライド、ずっと一緒だった奴に負けたくない気持ち。悔しさ。
そんな気持ちからぼくは、恵介との関係を、変えてしまった。
お互い、ギクシャクしていた気がする。
進路のこととか、話したいことはたくさんあった。
だけど、当たり障りのない会話ばかりで、深い話はしなかった。
いや、できなかった。中学校はそうやって終わっていく。
ぼくは中学校を卒業して、札幌の高校に進学した。
1年後、恵介は奈良の高校に進学した。
二人とも実家を飛び出し、まったく知らない土地に行った。
高校時代はほとんど会わなかった、
時間が合わなかったというのもある。距離的な遠さもある。
だけど、今思うと、
そこまでお互いに会おうとしていなかっただけかもしれない。
高校を卒業すると、僕は東京の大学へ、
恵介は、広島の大学へ進学した。
大学進学後、2回だけ会った。
恵介が東京に来た時にぼくの家に泊まり、
ぼくが広島に遊びに行ったときに、恵介の家に泊まった。
でも、そこでも恵介は敬語だった。
ぼくは、ぎこちない感じを覚えながらも、
なんだか訂正するのも違うかなと思ったりもしていた。
けど、いやだなと思ったときには、
「敬語やめていいよ」って言っていた。
今考えると、むちゃくちゃなことを言っていたなあと思う。
ぼくの言葉と態度が違うから。
「敬語でしゃべらなくていいし、俺らは仲の良い幼馴染だけど、
俺のほうが先輩だから、敬え」
と言われている感じを、きっと恵介は受けたと思う。
そんな、ぼくらの関係が大きく変わったのは、昨年。
恵介がぼくに、結婚の報告をしてくれたときだ。
(あと2回、つづきます)