もくじ
第1回たくさん遊んで、たくさんケンカした。 2017-05-16-Tue
第2回敬語とタメ語 2017-05-16-Tue
第3回恵介の覚悟 2017-05-16-Tue
第4回結婚式のスピーチ 2017-05-16-Tue

座っているときは小さく見えるそうですが、実際は身長189㎝。
立ち上がると驚かれます。
北海道という広大な土地で、のびのび育ちました。

ぼくの幼馴染

ぼくの幼馴染

担当・那須野達也

2017年5月13日。幼馴染の恵介が結婚します。
ぼくは結婚式でスピーチをすることになりました。

スピーチをするにあたり、
幼馴染とぼくの今までを振り返り、
そして、よくわからなくなりました。

2歳か、3歳ころか、
もうお互いどんな出会いだったのかも、
覚えていない時期からの付き合い。

ぼくらの関係は、なんだろう。
幼馴染?親友?腐れ縁?

二人の関係を振り返りながら、
この文章を書いてみました。

この文章の入稿は、2017年5月8日。
結婚式は2017年5月13日。
公開は、2017年5月16日。

結婚式が終わり、スピーチも終わったあとで、
公開された文章を恵介に送りたいと思います。

第1回 たくさん遊んで、たくさんケンカした。

北海道にある清水町という人口1万人ほどの小さな町で、
ぼくと恵介は育ちました。

どんな出会いだったかは、覚えていません。
恵介が2歳、ぼくが3歳のころに出会ったから、
お互いもう出会ったころの記憶なんてない。
記憶が残っているときにはもう、恵介と一緒に過ごしていました。

年齢は、ぼくがひとつ年上。
ぼくたちは全校生徒が20名ほどしかいない、
小さな規模の小学校に通っていて、
小学校を卒業するまで同級生がいなかったぼくにとって、
ひとつ年下だったけど、
幼馴染の恵介はよく遊ぶ、とても仲の良い友だちでした。

雪山で遊んだり、雪合戦をしたり。
サッカー、野球、スピードスケート、ドッチボール。
相撲や、百人一首、テレビゲームで競いあったり。
秘密基地や、かまくらを一緒につくったり。
自転車で何十キロも離れた町に遊びに行ったこともある。

本当にあげだしたらきりがないくらい、たくさん遊んだ。
そして、たくさん遊ぶと同時に、たくさんケンカもした。

ケンカの原因は、ぼくでした。
ぼくが一方的に恵介に突っかかっていました。

柔道を習っていた恵介。たくさんの大会で優勝していて、
さらに、柔道だけじゃなくて、どんなスポーツもできた。
サッカーをしたら、左足から強烈なシュートを決める。
野球をしたら、ものすごい打球を放ち、肩も強かった。
スピードスケートも上手だったなあ。足も速かった。
さらにはスポーツだけじゃなくて、勉強もできた。
エレクトーンを習っていたから、学習発表会ではピアノも弾いていた。

本当になんでもできて、それでいて、性格が良かった。
誰に対しても優しくて、みんなの人気者だった。

ぼくは、そんな恵介の姿を見て、怖かった。
ずっと一緒だった幼馴染がどこかに行ってしまうような気がして。
おいていかれるような気持ちだったんだと思う。

だから、たくさんケンカした。ぼくが一方的につっかかった。
素直に「おめでとう」とか「すごいね」って言葉を
恵介に言うことはできなかった。
さっきはキレイに「どこかに行ってしまうような気がして怖かった」って言ったけど、
ただ悔しかっただけだったかもしれない。
同じところで育ち、同じような体格で、ずっと一緒だったのに、
恵介はなんでもできて、性格もいい。
ぼくはわがままで、くちばっか。性格もよくない。
負けたくなかった。同じような人生を過ごすと思っていたのに、
勝手に遠くに行かれたような気がして、さびしくて。
恵介のことを認めてしまうと、
もうぼくのことなんて相手にしてくれないような、
そんな気がしていて、怖かったんだと思う。

もしかしたら、ただ恵介の優しさに甘えていただけかもしれない。
そして、もっとかまってほしかったのかもしれない。
だけど、当時はそんな気持ちなんて、気がつきもしなかったから、
とにかくたくさん遊んで、たくさんケンカしていた。

そして、ぼくらは中学生なり、
関係が変わっていった。

(あと3回、つづきます)

第2回 敬語とタメ語