北海道にある清水町という人口1万人ほどの小さな町で、
ぼくと恵介は育ちました。
どんな出会いだったかは、覚えていません。
恵介が2歳、ぼくが3歳のころに出会ったから、
お互いもう出会ったころの記憶なんてない。
記憶が残っているときにはもう、恵介と一緒に過ごしていました。
年齢は、ぼくがひとつ年上。
ぼくたちは全校生徒が20名ほどしかいない、
小さな規模の小学校に通っていて、
小学校を卒業するまで同級生がいなかったぼくにとって、
ひとつ年下だったけど、
幼馴染の恵介はよく遊ぶ、とても仲の良い友だちでした。
雪山で遊んだり、雪合戦をしたり。
サッカー、野球、スピードスケート、ドッチボール。
相撲や、百人一首、テレビゲームで競いあったり。
秘密基地や、かまくらを一緒につくったり。
自転車で何十キロも離れた町に遊びに行ったこともある。
本当にあげだしたらきりがないくらい、たくさん遊んだ。
そして、たくさん遊ぶと同時に、たくさんケンカもした。
ケンカの原因は、ぼくでした。
ぼくが一方的に恵介に突っかかっていました。
柔道を習っていた恵介。たくさんの大会で優勝していて、
さらに、柔道だけじゃなくて、どんなスポーツもできた。
サッカーをしたら、左足から強烈なシュートを決める。
野球をしたら、ものすごい打球を放ち、肩も強かった。
スピードスケートも上手だったなあ。足も速かった。
さらにはスポーツだけじゃなくて、勉強もできた。
エレクトーンを習っていたから、学習発表会ではピアノも弾いていた。
本当になんでもできて、それでいて、性格が良かった。
誰に対しても優しくて、みんなの人気者だった。
ぼくは、そんな恵介の姿を見て、怖かった。
ずっと一緒だった幼馴染がどこかに行ってしまうような気がして。
おいていかれるような気持ちだったんだと思う。
だから、たくさんケンカした。ぼくが一方的につっかかった。
素直に「おめでとう」とか「すごいね」って言葉を
恵介に言うことはできなかった。
さっきはキレイに「どこかに行ってしまうような気がして怖かった」って言ったけど、
ただ悔しかっただけだったかもしれない。
同じところで育ち、同じような体格で、ずっと一緒だったのに、
恵介はなんでもできて、性格もいい。
ぼくはわがままで、くちばっか。性格もよくない。
負けたくなかった。同じような人生を過ごすと思っていたのに、
勝手に遠くに行かれたような気がして、さびしくて。
恵介のことを認めてしまうと、
もうぼくのことなんて相手にしてくれないような、
そんな気がしていて、怖かったんだと思う。
もしかしたら、ただ恵介の優しさに甘えていただけかもしれない。
そして、もっとかまってほしかったのかもしれない。
だけど、当時はそんな気持ちなんて、気がつきもしなかったから、
とにかくたくさん遊んで、たくさんケンカしていた。
そして、ぼくらは中学生なり、
関係が変わっていった。
(あと3回、つづきます)