もくじ
第1回陶芸、はじめまして。 2016-12-06-Tue
第2回背中を押してくれた存在。 2016-12-06-Tue
第3回いいとこどりしよう。 2016-12-06-Tue
第4回自分のスタイルをつくれるか。 2016-12-06-Tue

1991年生まれ。
放送局にいます。

いま、日本文化に
はまってます。

表現者の方を応援
することが好き。
ミーハーです。

陶芸だから、できること。

陶芸だから、できること。

担当・菊地将弘

第3回 いいとこどりしよう。

──
宇田川さん、本日はよろしくお願いします。
おふたりはお会いするのが3年ぶりと聞いています。
特殊メイク、造形のプロの立場からお話をうかがえればと。
宇田川
どうぞよろしく。
自由廊には、けっこうきてたんだ。
千代
定期的にですね。
宇田川
いくつか会社を転々としていたわけでしょ。
そこから何年かやって陶芸の方へ?
千代
一回、区切りのいいタイミングがあって
次を考えたときに彫刻とか、
本来やりたいことできてないなって。
宇田川
まあね。
千代
一度、業界から離れて、
まとまった時間をつくって
技術を上げていきたいなって。
宇田川
まあ、工房にいっちゃうと時間もないしねえ。
休みも多いとはいえないわな。
千代
夜も遅いですし。
宇田川
うん、うん。
千代
それで縁があって深大寺にある陶芸の窯で
仕事をすることにして。
宇田川
うん。
千代
陶芸なんですけど
少しでも自分のプラスになるかなって。
宇田川
でも陶芸がやりたかったわけではないんだよね。
千代
そうですね、そのときは。
宇田川
基本的には陶芸だけを扱っているんだ。
千代
そうですね、素材は陶器で、
樹脂でつくるってことは基本ないですね(笑)。
宇田川
素材は粘土で。
千代
はい、特殊メイクのときと変わらないです。
宇田川
変わらないんだ。
千代
種類によりますが、使い勝手はあまり変わらないですね。
陶器は、つくって焼いたものが
そのまま作品になるので、そこが魅力的で。
宇田川
ああ、なるほどね。
千代
原型自体が作品として完成品になるので、
その間の工程がないというか。
宇田川
魅力を感じちゃったわけね(笑)。
千代
そうなんです(笑)。
あと釉薬っていろんな色があるんですけど
いままで見たことなかった色や光沢があって。
宇田川
うん、あるね。
千代
そこから陶芸にのめり込んでいって。
宇田川
最近になって自分の作品が増えてきたみたいな?
千代
そうですね。
ちょくちょくつくっています。
宇田川
もう作品って、、、、
──
ご用意しています。
宇田川
見せてもらいましょうか。
──
ちょうど先ほど撮影をしてきた写真です。

宇田川
このカエルは置物?
パカってあける食器ではないんだ?
千代
そういうわけじゃないですね(笑)
一同
(笑)。
宇田川
陶器って焼かないとどうなるの?固まらないの?
千代
焼かないと、ただ粘土が乾いた状態になります。
宇田川
固くはなるの?
千代
固くなりますがもろいですね。
宇田川
ああ、焼くと強くなるの?
千代
焼くと粘土がしまるので丈夫になって、
けっこう縮みますね。
宇田川
縮むんだ。
千代
はい、粘土の状態から1〜2割ぐらい。
宇田川
あっ、こういうコーヒーカップでも
はじめはでかくて、みんな縮むんだ。
千代
そうですね、元は大きいですね。
一回、素焼きというものをまず800度で。
そのあとに絵や釉薬などを付けていって。
そこから本焼きというのを
1200度くらいで焼きます。
さらに縮むんですけど、強度は増しますね。
宇田川
床に落とさないかぎり割れないのね。
なるほどね、おもしろいものつくってるんだね。
千代
これが土鈴というものですね。

宇田川
この土鈴は一つずつ、つくっているの?
千代
いえ、複製しています。
原型をつくって石膏型にして、
それに粘土を押し当てて。

宇田川
でも石膏型だと抜けないんじゃない?
千代
それがいい具合に粘土の水分を
石膏が吸ってくれて、きれいに取れますね。
宇田川
へええ。
陶芸の系統のもので
量産できるっていうのはいいよね。

千代
はじめたころ、
陶芸だと縁起物がいいかなと思って
ダルマの喜怒哀楽の表情をつくってみようかなと。

宇田川
ほおお、なるほどね。
このネコも置物?
千代
そうですね。
宇田川
うん、黒いねえ(笑)。

千代
牙のところ以外は黒ですね。
宇田川
ふーん、
こういうのもつくっちゃうわけ?
千代
これはろくろでつくったのではなくて。
初期の作品です。

宇田川
ろくろではなさそうだね、
ゆがんでるかんじがあるね。
左右の形がちがう(笑)。
千代
(笑)。
ツボをつくって絵付けをしたいなあと思って、
つくってみたかんじですね。
宇田川
ろくろ使わずにそのかたちと薄さで、
手びねりでつくれちゃうわけ?
千代
実際は厚いです(笑)。
宇田川
ああ、厚いのね。なるほどね。
千代
ある程度をかたちつくって、
ちょっと乾いてきたら削っちゃう。
宇田川
上の方が薄そうにみえるけど、
そういうわけじゃないのか。
千代
いまだと、ろくろでつくりますね。
宇田川
ろくろって楽しいの?
千代
楽しいですけど、造形とか経験している人は
何回かやれば、「あっこういうかんじか」って
慣れるんじゃないですかね。
宇田川
まあ、ろくろでつくると
きれいものができあがるじゃない?
色とかさ絵柄でオリジナルでできてもさ、
そんなにびっくりするものは出てこないよね。
まあ、びっくりする必要があるかはわからないけどさ。
千代
ろくろだと模様の付け方で差をつけるとか。
宇田川
あの陶芸とか全然おれは知らないけど、
一回、脱線した話とかOK?
──
もちろんです!
宇田川
このまえさ、
怪獣系のとある展示会があって、
フィギュアのような造形とはちがうジャンルで
いろんな芸術家が作品を出していたのね。
特殊メイクの領域で
うちには声がかかったんだけど、
木彫りだったり、水墨だったり、
あと陶芸もあって。
芸術としてのアプローチで
素材が陶芸ってかんじ。
あれはおもしろかったよ。
そういうことを、やっていきたいの?
千代
方向性としては、そういうのに近いです。
宇田川
いわゆる茶碗とかさ、
色とか趣きがあるような作品ではないんだよね。
千代
はい。陶芸って、焼きが一番に重要らしいと、
聞いたことがあって。
そういう伝統的なアプローチは、
ぼくはできないかなって。
宇田川
まあね(笑)。
正統派が決して少ないなんてことはないと思うし、
そこを正面からこえていくのはむずかしいじゃん。
千代
歴史や伝統に対して、
どう向き合うかってことは考えますね。
宇田川
目立つ必要ないかもしれないけど、
そのなかに埋もれてしまったら
一本でやっていくのはきびしいよね。
しかもこれからやっていくならさ、
伝統の方に戻っていくよりは
特殊メイクやっていた経験も使ってさ。
千代
特殊メイク、造形の経験は活かしたくて。
今までの知識とあわせればって。
宇田川
ちなみにかわったものってあるの?
ほかの陶芸家でもいいけど。
千代
かわった作品でいうと
ぼくが陶芸を始めて良いなって思ったのは
明治の陶芸家なんですけど。
宇田川
明治時代の人が?
最近の人じゃないのか。
ずいぶん最先端の人が昔にいたんだ(笑)。
千代
宮川香山っていう。
宇田川
あっこれ陶芸作品なの?
へええ、これはすごいねたしかに。
千代
これが国宝になっていて
美術の歴史の教科書には載っている人ですね。
宇田川
ああ、おもしろいね。
千代
薩摩焼で昔は金をたくさん使うのが
流行っていたらしいんですけど
コストの問題や海外に流出するとやらで
他の方法がないかってことで。
で、彫刻で装飾をいっぱい付けて華やかにしようと。
宇田川
この方はツボだけじゃなく、造形もできる人だよね。
千代
そうですね、絵付けもうまいですね。
──
当時、海外の万博で絶賛されたみたいで。
宇田川
海外でもあまり見ないよね。
千代
これをみて衝撃を受けて
陶器でもここまでできるんだと思って。
宇田川
金でつくり続けていたら
こうやって名前は残っていないかもしれないね。
千代
それはあると思いますね。
転換が成功だったというか。
宇田川
こういう作品って
「これじゃないとだめ」になるから価値があるよね。
千代
ええ、それでないといけない理由があるというか。
宇田川
芸術の方向で成功する作品だよね。
たとえばさ陶芸の世界で考えればさ、
叱られるようなのを無視すれば
可能性的にはできるじゃん。
千代
可能性としては。
特殊メイクで学んだ知識で。
宇田川
そう。逆に陶芸しか学んでない人には
知り得ないこともあるわけ。
われわれがやる型取りって、
どうやって複製したかって
見当もつかないようなものもつくれるわけじゃん。
割れる素材でもさ、芯とか入れちゃうとか。
千代
はい。
ルールのようなものにとらわれずに、
応用がもっと利かせられるんじゃないかって。
宇田川
いろいろ実験じゃないけど
通用するかあれだけど
試してみてもおもしろいね、
芯があったり、運搬中にこわれるようなものも
作品にしていくことができるんじゃないの。
複雑な物に対して技術は身に付いているでしょ。
千代
そうですね。
宇田川
たとえば陶器も粘土以外で
複数の素材が混ざってもいいわけだよね。
千代
焼きに耐えられればですね。
焼いた後に合体させることも、やろうと思えば。
宇田川
極端にいえば
陶芸じゃない造形屋がつくる
リアルなものに敵わないわけじゃん。
だけどリアルなものを
樹脂でつくる造形屋にとって
陶芸の色や光沢でつくられたら、
造形屋はまねできないのよ。
千代
いいとこどりのような。
宇田川
ただ、リアルにつくる方向で
仕上がりをイメージしちゃうとさ。
千代
いままでの分野になってきますね。
宇田川
そう。それじゃあ勝てない。

(つづきます。)

第4回 自分のスタイルをつくれるか。