- 古賀
- 糸井さんの中で、
ヒットの定義ってありますか。 - 糸井
- 『ほぼ日』をはじめてからは、
もうヒット多様性になりましたね。 - 古賀
- ヒット多様性。

- 糸井
- 生物多様性みたいな。
たくさんあるゲームボードの上で、
これはヒット、
こっちは結構売れたけどヒットじゃない、
っていうルールをいっぱい持つようになりました。 - 古賀
- コンテンツごとに
ヒットの基準があるということですか。 - 糸井
- うーん。
たとえば、
引越しって金銭的に考えたらマイナスだけど、
別の視点から見たらヒットになるじゃないですか。
みんなとは違う場所に価値基準を置くということを、
『ほぼ日』を始めてからするようになったんだと思います。 - 古賀
- じゃあ、
一山当てたいみたいな
気持ちってあるんですか。 - 糸井
- いまのヒット論みたいに言えば、
いつも一山当てたいですよ。
楽になりたくて仕事してるわけだから。

- 古賀
- それ、よくおっしゃいますよね。
- 糸井
- 苦しくてしょうがないわけですよ、ぼくは。
めんどくさいし。 - 古賀
- 『ほぼ日』が始まった頃に、
働くことが流行ってるという記事を
書かれてたじゃないですか。
あの時期と今では、
仕事に対する感覚って違いますか。 - 糸井
- あの時期も、我慢はしてたと思いますよ。
でも、自分にとって、
釣りを一生懸命やる感覚と、
働くことが流行ってるという感覚が
同じだったんですよね。
たとえば、
友達の分まで釣り道具をセットして、
車を運転して、迎えに行くのって、
苦労じゃないですか。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- でも、楽しいからいいんですよね。
それと同じで、
ぼくにとって『ほぼ日』をやることは
釣りをするぐらい面白かったんです。

- 古賀
- なるほど。
- 糸井
- 思い返せば、
友だちと釣りをして、
車で最終に間に合うように送って、
そこから帰って仕事をして・・・って。
バカらしいけど楽しかったですよね。 - 古賀
- いいですね。
- 糸井
- ちょっとずつ形は変わってますけど、
いまの自分の仕事に対する感覚って
当時と似てる気がしますね。
1つ1つの仕事については、
ああ、嫌だな、嫌だなって思うけど(笑) - 古賀
- (笑)まあそうですよね。
ぼくも、本書くの嫌です(笑)

- 糸井
- 楽しくないですよね。
- 古賀
- うん、楽しくないです、本当は(笑)
辛いです。 - 糸井
- 辛いですよね。

- 古賀
- ほんとに辛いです(笑)
でも、子供の頃にドラクエや
スーパーマリオにはまってたのと、
あまり変わらないですよね。
面白さと辛さが両方あって。 - 糸井
- はいはい。
- 古賀
- 感覚的には、
ドラクエをやってるときの、
早く竜王に行きたいけど
スライムの相手をしなきゃいけない!
みたいなもどかしさに近いですね。 - 糸井
- おお。
- 古賀
- 仕事も、
1個1個はほんとに
めんどくさいじゃないですか。
それこそ、スライムと戦うような日々だけど、
そうしないと竜王には会えないし。 - 糸井
- なるほど。
- 古賀
- ゲームをクリアしたからといって、
大きな喜びがあるわけじゃないんですけどね。
でも、クリアに向かって動きたくなるのって、
仕事で目の前に課題があったら
解かずにはいられなくなる感覚に近い気がします。 - 糸井
- それは、バトンズという組織を
作ってから思ったことですか。
それとも、前から同じですか。 - 古賀
- 前から同じです。
でも、1人のときの方が、
もっと露骨な出世欲がありました。
ライターの中で一番になりたいとか、
あいつには負けたくないとか、
チンケな欲がすごくあって。
でもそれって、
ごく限られた世界のなかの話ですよね。 - 糸井
- そうですね。
- 古賀
- いまは、
そこで競争して消耗するのは
もったいないという気持ちがあります。
外に目を向けた時の面白さを、
ようやく知りつつある感じですね。 - 糸井
- その意味でも、
組織を作ってよかったですね。 - 古賀
- ほんとによかったと思います。
(つづきます)
