- 古賀
- 目立ちたいと思うことって、
ありませんか。 - 糸井
- そう聞かれたら、ぼくは、
「ものすごくありますよ」
って答えますね。
ただそれは、
どういう種類のものかと言えば・・・ - 古賀
- はい。
- 糸井
- 「いやいや、やっぱり要らないかも」
くらいの(笑) - 古賀
- (笑)
- 糸井
- たぶん、
浅いところでは目立ちたがりですけど、
ちょっと掘るだけで
急にどうでもよくなりますね。 - 古賀
- それは、
それこそ30歳くらいの時に、
目立って痛い目にあった経験があるからですか? - 糸井
- そうじゃないですね。
たかがっていうのが、
ものすごく見えた感じがするんです。
一番目立ちたがりだったのって、
高校生くらいの時じゃないですか。
その時期って、何をしてでも目立ちたいわけで。
みんなおれを見てくれ!って(笑) - 古賀
- そうですね(笑)

- 糸井
- 自然ですよね。
動物の毛色みたいな。
やがてそういうものを残しながらも、
本当の喜びを知っていくんだと思います。 - 古賀
- なるほど。
- 糸井
- だってね、アイドルグループの子達だって、
すごく人気があるとしても、
実際の個人としてモテてたわけじゃないでしょ。 - 古賀
- 遠くに居るファンの人たちにモテるっていう。
- 糸井
- そうなんです、
距離があるんですよ。
商品に手を付けることは禁じられているわけで。
やっぱり近くに居る人から
モテることのほうが嬉しいですよね。
若い頃の彼女の存在って、
一番理想的だと思います。 - 古賀
- うんうん。

- 糸井
- そこの実態の話ですよね。
いまはみんな、
遠くのものに目がいきがちだけど、
いずれ分かっちゃうんじゃないですか。
距離がある5万人や50万人にモテるより、
毎日彼女と三畳一間で寝られるほうが
圧倒的にいいですから(笑) - 古賀
- (笑)そうですね。
- 糸井
- ぼくは、
まだ足りないっていうふうに思わないんです。
大体足りたなって思いますね。
たとえば、
華やかに見えるネット業界の楽しさって
けいれん的なものじゃないですか。
ぼくの時代が月単位、
つまり月刊誌の尺度で動いていたとしたら、
いまって週刊すら超えて
時間単位で動いてますよね。

- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- コピーライターをやってるときに、
それの浅いやつはありましたよ。
相手を追い抜く方法を
自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つ、みたいな。
でも、
「おれは裏の裏まで読んでる」ごっこを
ピリピリしながらやっても、
何にも育たない気がするんですよ(笑) - 古賀
- 先日「今日のダーリン。」の中で、
時間軸について書かれていましたよね。
3年先の話というテーマで。 - 糸井
- うん、あれビリビリくるでしょ。
いままで、
1年先に何が起こるか分からないのに、
3年先のことが分かるはずないと言っていたけど。
一緒に船に乗ろうとしている人に対して、
「分からない」と反射的に答えるのは、
あまりにも無責任だと気付いたんです。

- 古賀
- はい。
- 糸井
- 必ずしも分からないことばかりじゃない。
方向性を決めるっていうだけでも、
いまから考えるべきことが見える気がするし。 - 古賀
- そこの時間軸を
どういうふうに設定できるかって、
すごく大事ですよね。
見えもしない10年後20年後を語りたがる人って、
結構たくさん居ますけど。 - 糸井
- まずそれは嫌だよね。
- 古賀
- 若い人でも、
ある程度年齢がいってる人でも、
やっぱりそこで満足してる人たちは居ますよね。

- 糸井
- そうですね。
- 古賀
- ぼくもどちらかと言えば、
「先のことは分からないから
今日明日を懸命に生きよう」
っていうタイプだったんですけど。
でも、考えに考えたら、
3年先の大きな方向性に向かって
ハンドルを切れるんじゃないのって。
あれは結構ビリビリくる内容でしたね。 - 糸井
- ぼくは、
今の年齢になって分かったわけです(笑) - 古賀
- あああ〜。(笑)
- 糸井
- 古賀さんたちの年代でも、
分かる人には分かるのかもしれない。
だけど、簡単にその考えにおさまりたくない、
っていうところで抵抗するんじゃないですかね。
(つづきます)
