- 糸井
- 震災がなくて、そういう話を考えなかったら、
今、僕らはこんなことしてませんよ。 - 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- どうしてたんだか、わからないです。
- 古賀
-
震災に関わると、慈善活動のように見えたり、
いい面と悪い面があるじゃないですか。
糸井さんやほぼ日の活動を見てると、
しっかりと正しい道を選んでるなという感じがします。僕達はいいことをやってるんだ、
っていうふうに自分を規定しちゃうと、
けっこう間違ったことをしがちで……。だから、その「友達」っていう基準が、
ほかと違うんだろうなと思いますね。

- 糸井
-
やっぱり、吉本隆明さんの影響がありますよね。
吉本さんは、
「いいことやってる時は悪いことやってると思え。
悪いことやってる時はいいことやってると思え」
と全く逆に考えるんです。それは、大元では、浄土真宗の親鸞という人のことを
考えてる時に思いついたことなんだろうけど、
吉本さん自身もそうしよう、と思って生きてたってことは、
よくわかるんですよ。※吉本隆明さん(1924〜2012年)思想家、詩人、文芸批評家。工場に勤務しながら、詩作や評論活動を続け、「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。小説家よしもとばななさんの父。
- 古賀
- はい。
- 糸井
- 例えば、僕らも何かのチケットをもらったりしてますけど、
本来は、並んだり、電話をかけて取るのが基本です。
しっかり入場料を払うのが当たり前というようなことは、
吉本さんを見てて思うんですよね。 -
その姿勢がベースにあるので、
邪魔だ、邪魔だって火消しが行くのは違うわけです。
邪魔だ、邪魔だって言えないで、列に順番に並ぶよりも、
人を突き飛ばして前に出た方が、
もっといいことができるかもしれない。
それで、何かが無駄になるかもしれない。
それでも、そこをコストだ、ぐらいに考えようというのは、
ずっと、ずっと吉本さんを見て思っていることで。 - 古賀
- はい。
- 糸井
- そんな吉本さんが「僕は偽物だ」って書いたんです。
それで、吉本さんちの奥さんまで、
「お父ちゃんは偽物だ」って言うわけで。 - 古賀
- (笑)
- 糸井
- 「おじいさん(吉本さんのお父さん)は本物だった。
でも、うちのお父ちゃんは、
そうなろうとしてなってるから本物じゃない。
お父ちゃんは本当にいい人だけど」って。
でも、今さら吉本さんは本物にはなれない(笑) - 古賀
- はい(笑)。
- 糸井
- つまり、吉本さん自身が偽物になろうとしたから、
偽物になってるんですよ。 - 古賀
- はい。
- 糸井
- 谷川俊太郎さんも、
「僕は偽物で、本物の真似をしてる」
というようなことを平気で言いますよね。
同じような姿勢じゃないでしょうか。
そういう、吉本さんの方法しかないんですよ。

- 糸井
- 僕ね、お葬式用の写真を
絶えず更新しているんですよ。 - 古賀
- そうなんですか。
- 糸井
- うん。今、候補が2枚あって、
今日死ぬと、どっちかになるんです。
それはもう人にも言ってあるし。 -
ものすごい楽しみにしてるんです。
その未来に向かって、今日を生きてるんですよ、たぶん。
それはなんか、いいものですよ、なかなか(笑)。

- 糸井
- まあ、古賀さんもここまで、
僕の年までの間がものすごい長いですから、
いっぱい面白いことありますよ。 - 古賀
- 楽しみです。

- 糸井
- はい、楽しみだと思うんです。
そして、楽しみにされるようなおじさんでも、
いたいですよね。 - (終わります)
