古賀さんと糸井さんの飽きない仕事のはなし

第3回 だれからモテたいのか
- 糸井
- あなたには目立ちたい気持ちはないんですか?
と聞かれたら、
ものすごくありますよって答えると思うけど、
じゃあどんな種類のものなんですか?
と聞かれたら、
いや、いらないかもってなる(笑)
-
浅いところでは目立ちたがりですけど、
ちょっと掘るだけで急にどうでもよくなりますよ。
- 古賀
- それは30くらいの頃に目立って
痛い目にあったりしたからとかではなく、
- 糸井
- じゃないですね。
「たかが」っていうのが、
ものすごく見えた感じがする。
- 古賀
- ほぉ。
- 糸井
- 高校生の頃が一番目立ちたがりじゃないですか。

- 古賀
- はいはいはい(笑)
- 糸井
- たぶん性欲の代わりに表現力が出てくるような。
その時期っていうのは
なにをしてでも目立ちたいもので。
- 古賀
- うんうん。
- 糸井
- みんながもっと俺のこと見てくれないかなとか、
言葉にするとそういうふうに思っているのを
服装を変えてみたりとか。
それは動物の毛皮の色ようなことで、
自然なことですよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- やがてそれを残しながらも、
やっぱりなにがうれしいって
近くにいる人にモテちゃうっていうのが
一番うれしいですよね。
- 古賀
- ほぉー
- 糸井
- 彼女がいるっていうのが一番理想ですよね、
若い時なんかは。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- こないだ上村一夫さんの娘さんと対談したとき
「同棲時代」っていう悲劇的な漫画を
当時すごくうらやましかった話をしたんですよ。
だって気狂っちゃうし貧乏だけど、
彼女がいるんだから、ね。

- 糸井
- それさえあれば俺は何もいらない、みたいな。
恋愛至上主義に近いんですよ、若い時って。
だから、そこに突っ込んで行きたかったんですよね。
それとネタ自体を天秤にかけたら、女ですよ、圧倒的に。
- 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- 僕みたいな加減で目立ちたがったり、
目立ちたがらなかったりしている例が、
古賀さんの世代にも見えていますよね。
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
1つの面白い世界はやれるんだなってこと。
- 古賀
- うんうん。
- 糸井
- アイドルグループの子達だって、
すごく人気があるとしても、
実際の個人としてモテてたわけじゃないでしょ。
- 古賀
- 遠くでモテて。
- 糸井
- そう、距離なんですよ。
-
それよりも、たまたま行った送別会で隣の女の子から
「ちょっと送ってってほしいんだけど」
って言われたら、もうバリバリに鼻の下伸ばしますよね(笑)

- 古賀
- でも遠くの50万人にモテている俺っていうのを
喜ぶ人も確実にいますよね。
- 糸井
- それはものすごく面白いゲームで。
僕のなかにそういう気持ちがなくもないんだけど、
何人読んでくれてるのかって。
まさしく100万人は「えー!」っていう
嬉しさがあるじゃないですか。
-
あの、アルプスかヒマラヤ、
ああいうのが見える場所に立ったことあります?
- 古賀
- いや、ないです。

- 糸井
- そうですか。
たまたまそういうのを前にしたときに
「大きいなー」って思うじゃないですか。
- 古賀
- ナイアガラの滝で感じました(笑)
- 糸井
- いいですよね。
「来てよかったなー」って思うじゃないですか。
- 古賀
- 思います、はい。
- 糸井
- 「近く通るんだったら絶対行ったほうがいいよ」
って思うじゃない、あれだね。
- 古賀
- はああ。
- 糸井
- だから「どうだ俺すごいだろう」
じゃなくて、
仲間も一緒に連れてって
「本当だー」って言ってくれると、
自分以上に、嬉しいですよね。
-
ほら、最近あったじゃない。
- 古賀
- そう。自分の会社の子が10万部ヒットって、
自分のこと以上に嬉しかったですね。

- 糸井
- 人に喜んでくれることが自分の嬉しいことって、
綺麗ごととして言葉にすると、すごく通じないんだけど、
例えば、お母さんが苺食べないで、
こどもにその苺をあげて喜ぶ顔を見るとか。
-
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなりますよね。