書くって、かっくいい
第4回 キラキラとした存在に。
- 古賀
- 糸井さんが、30歳あたりから
いろいろなメディアに出始めた活動って、
コピーライターっていう仕事を世間に認知させる
っていう意識もあったんじゃないかと思うんです。
ぼくも、本のライターというのがどういう仕事なのか、
というのを声高に言った方がいいのか、
それはそれとして、裏方の人間として
このままマイクや拡声器の役に徹しているのがいいのか
まだちょっとわからなくて。

- 糸井
- うん。
- 古賀
- 例えば、極端な話ですけど、
糸井さんが当時
「たった1行でそんなお金もらっていいね」
みたいな言われ方するじゃないですか。
- 糸井
- はい、はい。
- 古賀
- それに対して、
「いやそんなことないよ」って言いたい気持ちと、
あえてそこに乗っかって
「おれは1行で1000万なんだ!」みたいに吹聴する気持ち、
両方あったと思うんですけど。
- 糸井
- それはね、当時は自分でもよくわかってなくて。
言ってたことが、厳密に言うと嘘だったと思うんです。
つまり、何歳になろうが、大手にいようが中小にいようが
「業界のために」っていう言い方、
ものすごくするんですよ。
真田幸村の物語で言えば
「長野県のために」といった言い方と、
自分の「その方が楽だから」っていう気持ちとが
混ざるんですよね。
例えば、自分がサーカスの団長だったとして、
「サーカスおもしろいよ」って
ぼくらが言われるようになって、
「これからもサーカスの火を絶やさずにね、
ほんとサーカスっておもしろいですから」
っていうのは、自然に言えますよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- つまり、サーカス業が上手くいってた方が
自分も上手くいくから。
エゴだっていう言葉で言い切るつもりもないんですけど、
自分の居やすい状況を、人は誰でも作りたいんですよ。
だから売れてないけども「業界のために」
っていうのを声高に言うのは、
実は自分でもよくわかんなくなっちゃうこと
だと思うんですよね。
ぼくも、コピーライターっていう職業があって
「それはすごいんだぞ!」って言ってくれるんだったら、
自分でも相乗りして言ってたんだけど。
あれは、何だろうな‥‥。
極端に追求すると、「ほんとかな?」と思っていますね。

- 古賀
- それは、今振り返って。
- 糸井
- 振り返ってです。
だからわかんないです、ずっと。
業界のために一生懸命やってくれる人がいるのも
ありがたいことだと思いますし、
その業界に人出が入って来るっていうのも
考えてみればライバルを作ってるようなものですからね。
お笑い芸人の人がよく言うじゃないですか
「いい若手なんか芽を摘んでやる」って。
- 古賀
- はいはい、言いますね。
- 糸井
- あの方が、ちょっと本気な気がして。
「お笑い業界、どんどんいい若手が
入って来たらいいですね」
ってプレイヤーとして言うとか。
- 古賀
- ああ、そうですね、たしかに。
- 糸井
- 本当に「ほんとか?」って
三日三晩1人で自問自答したら、
ちょっと混ざりもののある‥‥(笑)。
- 古賀
- そうですね(笑)。
- 糸井
- なんでその商売をやってるかっていうことを、
生まれたときから思ってた人なんて、
あまりいないじゃないですか。
歌舞伎の御曹司とかは別ですけどね。
あれは“業界が私”だからね。人生が職業なんですよ。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- ライターやコピーライターって商売は、
例えば、古賀さんがすごく自転車を好きになって
素敵な自転車屋作って、どんどん上手くいったら、
「ライターの仕事どうしていますか?」ったら、
「うん、たまにやりたくなるんだよね」って(笑)。
- 古賀
- はいはいはい、そうですね、うん(笑)。

- 古賀
- ぼくは、やっぱり、
つい「業界のため」って言っちゃうし、考えるんです。
例えば、今自分らが
「わたしが新人だったころは
こんな格好いい先輩達がいたんだよ」
って言われるような存在になれているんだろうかとか。
若くて優秀な人が「格好いいな」「入りたいな」って
思う場所になっているかっていうのは、
たぶん、ネット業界とかの方が
キラキラして見えると思うので。
だから、サッカーの本田圭佑さんが
白いスーツ着て、ポルシェに乗ってやって来るとか、
そういうキラキラとした演出も
出版業界やぼくらみたいな立場の人間が、
やった方がいいのかなという思いも若干あるんです。
でも、今の糸井さんの話を聞いて、
三日三晩自分に、もしそれを問いかけたら‥‥(笑)。
- 糸井
- はははは(笑)。
そうなりますよね。
-
- (つづきます。)