書くって、かっくいい
第2回 チヤホヤされたいきもち。
- 古賀
- 糸井さんの中で、
吉本隆明さんや矢沢永吉さんといった
ヒーローのような人たちがいて、
その出版のお手伝いをされてきたわけじゃないですか。
- 糸井
- はい。
- 古賀
- そのときの糸井さんの気持ちっていうのは、
自分が前に出るというよりも、
やっぱり「この人の言葉を聞いてくれ!」
みたいな感じなんですか?

- 糸井
- ぼくの本は間接話法なんですね。
「ぼくはとっても驚いたよ」とか
「ぼくはとってもいいなと思ったよ」とか。
だから自分を前に出す必要はまったくなくて。
おいしいリンゴを売ってる八百屋はいい八百屋で、
そういう八百屋から買ってくれる人がいたら
またいいリンゴを売れるじゃないですか。
「リンゴがあまり買ってもらえないから
作るのやめようと思うんだよね」っていう人に、
「おれ売るから、ちょっと作ってよ」って(笑)。
そういうやり方。
その商売のしくみって、アートを作るときの
建造物としてのアートってあるじゃないですか、
ああいうのに似てますよね。
- 古賀
- はい、はい。
- 糸井
- 古賀さんは、そういう仕事してますね。
- 古賀
- そうですね。
今だったら、いろんな出版社さんに知り合いがいますし、
やりたい企画ができるような状態にはなりました。
けど、自分のやりたいことがなかなか実現しなかったり
向こうから頼まれた仕事だけしかできない時期、
というのが結構長くて。
糸井さんが、例えば
矢沢永吉さんの『成りあがり』という本とか、
ああいうものでやったことが、今『ほぼ日』の中で
毎日のようにできてるんだと思うんですよね。
おもしろい人がいるから、
場所を作って、紹介していく。
- 糸井
- はい。
- 古賀
- そういうことは、ぼくが今やりたいことと
すごく重なる部分があるんです。
『ほぼ日』の中で、「今日のダーリン」という
大きなコンテンツはあるんですけど、
糸井さんが「おれがおれが」って前に出てる場所では
ないじゃないですか。
それよりも、「こんなおもしろい人がいてね」
っていう場所になっていて。
その姿勢というのは、
『成りあがり』のころから一貫してるんですか?
- 糸井
- 「あなたには目立ちたいってことはないんですか?」
って聞かれたら、
「ものすごくありますよ」って言うんじゃないですかね。
ただそれはどういう種類のものかっていうと、
「いや、いいかも、要らないかも(笑)」っていう。
浅いところでは目立ちたがりですよ、ぼく。たぶん。

- 古賀
- それは、30歳ぐらいのときに
目立って痛い目に遭ったりした経験があるから…?
- 糸井
- じゃないですね。
たかがっていうの、ものすごく見えた感じがする。
一番目立ちたがりだったのって、
たぶん高校生のときじゃないですか。
- 古賀
- はいはい(笑)。
- 糸井
- 性欲の代わりに表現力が出るみたいな。
- 古賀
- そうですね。問い詰めると、
どこかにはチヤホヤして欲しい気持ちはあるので、
それを良くないことと片付けるのは
あまりにも勿体ないんです。
それも原動力ですし。
- 糸井
- 人間じゃなくなっちゃうってとこが
ありますからね。
- 古賀
- はい。
だから、チヤホヤされたい気持ちとどう向き合って、
そこを下品にならないようにとか、
人を傷つけたりしないようにする中で
自分を前に進めていくというのが、
今やるべきことなのかなという気はします。
-
- (つづきます。)