- 古賀
- ちょっと話は戻るんですが。
吉本隆明さんや、矢沢永吉さんのような
ヒーローのような方々のお手伝いを
されてきたわけですよね。 - 糸井
- ああ、そうですね。
- 古賀
- その時の糸井さんの気持ちはやっぱり、
俺が前に出るというよりも、
この人の言葉を聞いてくれ、
という感じでしょうか。 - 糸井
-
僕はとってもいいなと思ったとか、
間接話法で自分の本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要がないんです。あるリンゴが美味しいと思うから、
それを作ってる人が
「あんまり買ってもらえないからもう作るのやめよう」
っていうときに、
「おれ売るから、ちょっと作ってよ」
っていう。その商売ですよね。
古賀さんもそういう仕事してますね。 - 古賀
-
そうですね。
10年前はなかなか実現しなかったですが、
いまは色んな出版社さんにも知り合いがいますし、
やりたい企画ができるようにはなりました。糸井さんもほぼ日の中で、
こんなおもしろい人がいるから
対談して紹介したり、
展覧会を開いたり…… - 糸井
- 場所づくりを。
- 古賀
- というのが、僕がいまやりたいことと
すごく重なります。
ほぼ日は、
俺が俺が!と前にでる場所ではない。
「こんなおもしろい人がいてね……」
っていう場所になっている。
その姿勢は矢沢さんの「成りあがり」の頃から
一貫してるのかなと。

- 糸井
- あなたに目立ちたいことは?と聞かれたら
ものすごくあります。というんじゃないですかね。
でも、どういう種類のもの?と聞かれると
「いや、いらないかも」っていう。
たぶん浅いところでは目立ちたがり屋なんです。 - 古賀
- それは、30くらいの時に
痛い目にあったからではなく…… - 糸井
- ではなく。
そんなに目立とうとしなくても
面白いことはやれるんだなと。
それくらいの方が楽しいんですよ。
アイドルグループの子達だって、
すごく人気があるとしても、
実際の個人としてモテてたわけじゃないでしょ。 - 古賀
- 遠くでモテてる。
- 糸井
- そうなんです。距離感なんですよ。
その遠くに突っ込んでいったら大変だし。
だから、あんまり足らないって思わない。
だいたい足りた、って思うんです。 - 古賀
- でも、「遠くの数十万にモテてる俺」を
よろこぶ人もいますよね。 - 糸井
-
何人読んでくれてるかっていう点で、
僕のなかにもそれはなくはないんだけど。最近、古賀さんのところでヒットを出したことが
あったじゃないですか。 - 古賀
- はい、うちの子が。
会社の子が10万部いって、
それは自分のこと以上にうれしかったです。
あれは気持ちいいですね。

- 糸井
- それはうれしいと思います。
たとえばお母さんが、
イチゴを自分が食べないで、
子供に食べさせるような。
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなります。 - 古賀
- そういうとき、
遠くの5万や10万のひとたちのことを考えて、
具体的なお金の想像はしますか? - 糸井
- 「お金好きです」という発言を
時々するようにしています。
お金が好きじゃないふりをしていたのに、
やっぱり好きじゃないか、と思われるのは嫌なので。 - 古賀
- むっつりスケベ、みたいな(笑)。
- 糸井
- (笑)
たとえば古賀さんが、
これはおもしろいぞってことをやるときに、
やればやるほど古賀さんが儲かるしくみなんだ、と
誰かが言ったら、動きにくいんですよ。
お金については具体的にこうですよ、
というのを見えるようにするには
管理しないとできないですね。 - 古賀
- 喜びの源泉として、目のまえの「1億円」とか
そういうものがあったりしますか。 - 糸井
- 全くないですね。
- 古賀
- ないですか。
- 糸井
- なぜなら、僕が求めて得られるような数字は、
ちっちゃいんです。
チンケなビルも建たない。 - 古賀
- (笑)
- 糸井
- それくらいのお金で何か勝負するには、
タネ銭にすぎないわけで。
それくらいのお金で儲かりましたね、というのは
「モテちゃって大変」というのと同じですよね。 - 古賀
- それに気づいたのは、いつぐらいですか?
- 糸井
- とっくにわかってました。
20代ではそういうタイプのお金は見えないです。
30代初めくらいで、
ずいぶん儲かったなって思うんですね。
でも実はみんなが思ってるのの半分ですよね、
税金でもっていかれるので。 - 古賀
- うんうん。そうですね。
- 糸井
-
いわゆる会社員の発想でお金を考えつづけると、
何もできなくなりますよね。
すごい大きいお金なんだけど、ちっちゃいですよね。何かをスタートする時に、
「俺達が出したお金どうしてくれるんだ」
となるとあんまりだから、
僕はとにかく借りないという発想になりがちですが、
それはわらしべ長者の方が、
最初からようかん1本もらうより
やりやすいからなんです。 - 古賀
- はい、はい。
でもそれと、じゃあお金はなしでやるよというのも、
また違いますよね。

- 糸井
- ぜんぜん違いますね。
そのお金でここまでしかできないとか、
その場合にはこうするとか、
ずるいことをせずにそれがやれたら、
古い言葉ですが、徳が身につきますよね。 - 古賀
- そうですね、うん。
(つづきます)
