第5回 まったくの白紙です。


糸井 さて、2014年。
去年、お話をうかがったときは、
「連覇」を目標に掲げてらっしゃいましたが、
あと一歩のところで逃してしまいました。
今年は、どういう気持ちで臨むんでしょう。
おっしゃったように、
去年は連覇できなかったということで
課題の残った年でした。
でも、課題を残した年っていうのは、
つぎの年を迎えるのがたのしみなんですよ。
糸井 ああー、そうか。
逆に、完璧な結果を残したつぎの年のほうが、
モチベーションを維持するのが難しい。
やっぱり、なにかやり残したときっていうのは、
悔しさはあるけれども、
必ず、つぎにつながりますよね。
また、抱えている課題というものこそが、
自分たちの成長の糧となる。
糸井 ちょっとうかがった話では、
昨年、日本シリーズの連覇を
逃したこともあって、
今年は、ペナントを戦う長期の戦いと、
ポストシーズンでの短期の戦いと、
両方強いチームになりたい、と。
そうですね。
まぁ、144試合という長丁場の
ペナントレースでは結果を出すけれども、
短期決戦では、なかなか結果を
出しづらい選手というのがいます。
とくにこの2年間、日本シリーズという舞台を
連続で経験したことによって、
短期決戦に向いている選手、向いてない選手、
というのが、はっきりしてきた。
糸井 はい、はい。

だから、それを踏まえた
選手の登用というものを、今年は考えようと。
だから、どうしても短期決戦で
力を発揮しづらい選手がいたら、
そういう選手は最初から重要な役割を
与えずにのびのびやらせるとか、
あるいは、短期決戦の状況を
きちんと設定した練習をさせるとか。

糸井 ああー、なるほど。
むしろ、そこへ向けた準備そのものが、
ペナントレースなんだよ、
というくらいにとらえたいですね。
糸井 そのあたりのことは、
監督の考えだけではなく、
チームの方針として
もう、スタッフのみなさんと
すでにお話し合いをしているんですか。
もちろんです。
スタッフ会議のなかで、今年の指針として、
最後に付け加えた1項目ですね。
やっぱり短期決戦に強いチームをつくると。
ペナントレースはもちろんだけれども、
短期決戦で力が出せるチームをつくることが
今季のひとつの指針だ、ということを言いました。
糸井 一年を通して戦うペナントレースに関しては、
去年もものすごく工夫されていて、
主力選手を思い切って休ませるとか、
新しい人を集中的に使ったりとか、
非常に方針のはっきりしたことを
思い切りよくやってらっしゃいましたよね。
ま、去年は、そういうチーム構成だったから
ああいった方針になったと思います。
2013年のチームというのは、
2012年のチームとはガラッと変わって、
非常に若返ったチームになりました。
そこで、打順に関しても、ローテーションも、
かなり動かしましたよね。
糸井 はい。今年も同じような傾向に?
今年はさらに動かすかもしれません。
また、それに耐えうる
選手層があると感じています。
層の厚さ、バランスでいえば、
ジャイアンツの80年の歴史のなかでも、
トップレベルではないかと思います。
糸井 おおー、そうですか。
選手の質の高さというか、
バランスのよさという意味においては。
しかし、やはり、だからといって、
そのチームが勝つ保証はないですよね。
開幕してからも、たぶん夏ぐらいまでは、
なかなか、ベストオーダーというのは
定まらないと思います。
それは、悪いことではなくて、
可能性を持った選手たちが多いからだと思います。
糸井 いいですね。
ですから、まずは、
チーム内でのレベルの高い競争。
それに勝ち抜いてレギュラーとして試合に出る人は、
必ず、いい成績を残すと思います。
そういう選手をひとりひとり見極めながら、
チームをつくっていこうと。
だからもう、今年のレギュラーに関しては
まったくの白紙です。
糸井 それは、ほんとうになにも考えてない?
白紙なんです。
どういうオーダー組もうか、白紙です。
糸井 まあ、阿部選手みたいな人は別にして。
いえ、慎之助も、何番を打つのかというと
それはこれから決めることですから。
一昨年は四番、去年はおもに三番。
今年はどうなるんだといったら、
また、いろんな可能性がありますから。
糸井 そうかー。
じゃあ、一番バッターは誰か。
長野、勇人、あるいは、片岡。
で、二番は? ってなると、
また、候補はたくさんいるわけです。
今年入ってきた外国人のアンダーソン、
これも、おもしろい選手です。
彼がクリーンナップの一角を担ったら、
もしかしたて、勇人が七番、八番?
みたいなことだってありうるわけです。
糸井 なるほど、なるほど。
というときにね、
ぼくはあえて、無理に考えるのをやめようと。
で、時が経つことによって、
その選手たちの力が見えてきますから、
その時点で、固めていきたい。
糸井 ほんとうに誰も確定していないんですね。
思えば、去年もそういう
動かし方をしてましたよね。
たとえば、シーズン終盤に
四番を打っていた村田は、
九番にいたときもありましたから。
糸井 そうでした(笑)。
でも、やっぱりね、そういうことも
いまに生きてるんだと思うんですよ。
その、九番にしたから
よくなったとは言いませんけど、
彼は7月からはもう、
打率も4割近くまで上がって、
誰もが認める四番バッターになりました。
糸井 そうですね。
夏から終盤にかけての安定感は見事でした。
とてつもない四番バッターですよね。
打てることはもちろん、あれだけ守れて、
ときに犠牲バントもできる。
そういうことができる
四番バッターというのはね、
歴代の巨人のなかでも
なかなか希有な存在じゃないでしょうか。
糸井 そんな人が調子次第では
九番を打つこともありうる。
いやあ、おもしろいチームですね。

2014-04-03-THU
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