田口商店 五代目継承の物語。 田口商店 五代目継承の物語。
下北沢にある「夢眠書店」は、
店主・夢眠ねむさんと、料理担当・まあさんが
ふたりで営んでいる本屋さんです。



ねむさんと、まあさんは、実の姉妹。



ふたりは三重県伊賀市にある老舗、
「田口商店」に生まれました。
乾物や鮮魚を販売するお店の、長女と次女です。



その「田口商店」が、
「生活のたのしみ展」に初出店します!
おいしいかつお節などを、たっぷりとご用意して。



しかもこれを機会に、代々続いた「田口商店」の屋号を、
長女・まあさんが五代目として継承するとか。
つまり、五代目として初のお仕事が、
「生活のたのしみ展2026」ということです。



なぜ、いま、継承することになったのか。
東京で活動するまあさんは、
どういうかたちで「田口商店」を継ぐのか‥‥。



継承までの経緯を、ほぼ日が追いかけました。
「生活のたのしみ展2026」にお越しくださる前に、
その物語をお読みください。



第八回 妹・ねむの気もち
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ねむさんにも「いいだしっぺ」として、
「たのしみ展」にご参加いただきます。
ねむ
たしかに、いいだしっぺという存在(笑)。
了解です。
シンプルに労働させてください。
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よろしくお願いします。
来ていただける範囲でかまいませんので。



で、ねむさんには、どういうかたちで
「生活のたのしみ展」に参加していただこう
と考えたときに、
格好の肩書きがあることを思い出しました。
ねむさん、実は、
三重県の観光大使でもあるという。
ねむ
はい。「みえの国観光大使」を
もう、10年やっております。
────
そうなんですよね。



三重県にある「田口商店」ですから、
三重全般をご紹介と思ったんですが、
ちょっとそれでは幅広いということで‥‥
ねむ
実家から徒歩5分圏内にあるお店の商品を
今回の「たのしみ展」のブースに、
いっしょに並べさせていただきます!
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この前の伊賀取材で、
ふたつのお店に急にお邪魔しました。
ねむ
凸でした。
「やってますー?」みたいな(笑)。
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どちらのお店もすごくいい方々で。
ねむ
そうなんですよ。
じゃあ最初は、「宮崎屋」さんから。
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ほんとにお家から数分のところでしたね。
ねむ
数分どころか、1分ちょいです。
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仲のよいご近所さんだと
お邪魔してすぐにわかりました。
「ふたりとも立派になってぇ!」みたいな。
ねむ
そう(笑)、ここも実家の匂いがする。
まあ
そうだね(笑)。
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「宮崎屋」さんの「養肝漬(ようかんづけ)」、
衝撃的でした。
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ねむ
はじめての人には衝撃だと思います。
きのう姉と話したんですけど、
「養肝漬」って、
ちっちゃいときに食べてないんですよ。
「大人の味」と思ってて。
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ああ、わかります。
正直、はじめて食べたときに、
ちょっとあの‥‥。
ねむ
ダメかも、みたいな?
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がありました、正直。
ねむ
クセが強い。
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はい、かなり。
ねむ
わたしたちもちいさいころは食べてなくて、
じわじわと「これおいしいな」と。
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そうなんです、じわじわと。
おみやげに買って帰ったのを
すこしずつ食べるうちに、
ちょっとずつおいしく感じてきて、
最終的にはヤミツキになってました。
ねむ
あー、素質ありますね(笑)。
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とくにこの、「養肝漬」の中身。
これがきっかけで馴染みはじめました。
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ねむ
はいはいはい。
入門にはこれがいいです。
クセはまわりの瓜にありますからね。
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「一年熟成仕込み」と
「二年熟成仕込み」があって、
二年の方は、かなり。
ねむ
かなり強い。
藤堂高虎さんが陣中で常備していたという。
武士の士気を養うためのもので、
肝っ玉を養う漬物ということで「養肝漬」。
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最初は「んん?!」と思う味です。
っていうのは、
お伝えしておいたほうがいいですよね? 
ねむ
言っておいたほうがいいです。
でもぜひ、ひよらないでほしい! 
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そうなんです! 
ねむ
「生活のたのしみ展」のお客様たちなら、
きっとハマるのではないかと。
「わかり手の味」みたいな(笑)。
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ほかにないですからねぇ。
ねむ
ないです。
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いま食べましょうか。
ねむさんの食べっぷりが見たいので(笑)。
ねむ
あ、そういうのはまかせてください。
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ねむ
ワインとかチーズみたいに、
熟成を重ねると味が深まるんですよねぇ。
ま、それだけに玄人向けではあります。
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ねむ
薄く切っても、一膳ご飯ペロッといけますよ。
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ねむ
ほんとに何もないときは、
これ1枚にごはんだけの
お弁当でいいかもしれない。
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ねむ
ううー、よだれ出る(笑)。
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ねむ
いただきまーす。



‥‥ああ、やっぱりクセとか、
あたりまえだけど、ぜんぜん余裕だね。
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ねむ
この発酵の感じがいいのにねー。
納豆とかだめな人はだめなのかな? 
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ねむ
‥‥私だけが、ただ食べている時間(笑)。
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ねむ
すみません、ごはんあとすこし。
仏様に差し上げるくらいで‥‥。
ありがとうございます! 
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ねむ
ふーー。
私だけで、食べきってしまった。
ごちそうさまでしたー。
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ありがとうございます、みごとです(笑)。



つづきまして、もう1軒のお店。
ねむ
はい。
「鎌田製菓」さん。
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やはりご近所で。
ねむ
そうですね。
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「かたやき」。
ねむ
おじいちゃんとおばあちゃんの家が
そこの斜め前にあったんです。
学校から帰り道に、
かたやきを焼いている香りがするんです。
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こちらも突然、お邪魔しました。
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▲急にお邪魔しました。いい匂い!
ねむ
まさに焼いてたじゃないですか。
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はい、鉄板にギューッとおさえつけて。
ねむ
あれを何度も何度も、8回とか? 
繰り返してカチカチになるまで焼きしめていく。
────
「焼きしめて」っていい言葉ですね。
ねむ
「焼きしめて」。
あれ、3回くらい焼きしめた段階だと
まだやわらかいんです。
だから学校の帰りに焼いてるのを見つけたら、
急いで帰って「今焼いてた!」とか言って、
お小遣い持って、やらかい状態のを買って、
ハフハフ食べながらお城に遊びに行くっていう。
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へえー、ちっちゃいねむさんが(笑)。
ねむ
でも、お邪魔した日はもう最終段階だった。
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▲焼きしめられる「かたやき」。
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すでに焼きしめ切っていました。
カッチカチで。
おいしかったです、素朴で。
でも、信じられないくらい堅い(笑)。
ねむ
伊賀には何種類か
「かたやき」がありまして。
これは、観光大使として
言うべきか悩ましいですが‥‥
「鎌田製菓」さんのがいちばん好きです。
────
おお、そうですか。
ねむ
もうこれは、すいません!
わたしの思い出補正かもですが、
ここのがいちばんおいしいと思います。
‥‥怒られる?(笑)
まあ
いいと思う、好みやから(笑)。
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あちらのお店でおもしろかったのは、
「これ忍者の携帯食なんですよね?」
ってご主人に聞いたら、
「いや、忍者の時代に
小麦粉なかったから違うと思う」って(笑)。
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▲「いや、小麦粉なかったからね」
ねむ
ズコーー!(笑)
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でもね、あとで調べたんですけど、
あながち違うとも言えないようなんです。
ねむ
そうなんですか? 
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たしかに小麦粉はあまりなかったから、
穀物を焼きしめていたそうです。
ねむ
やっぱり忍者は、かたやきを! 
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言い伝えとしては、あるそうです。
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ねむ
よかったぁ。
わたしこども新聞の記事に書いたり、
ことあるごとに
「かたやきは忍者の非常食」
って言ってきたから。
「武器にもなるんです」と。
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武器(笑)。
でもたしかに、それくらい堅いです。
ねむ
これも「たのしみ展」で売りますけど、
気をつけてください、
笑うくらい堅いんで。
歯が欠ける危険もあります。



食べ方をお教えしましょう。
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お願いします、観光大使。
ねむ
こうやって、これ同士を打ちつける。
(カン!)
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なるほど。
ダイヤモンドはダイヤモンドで削る、
みたいな。
ねむ
そうそう、
「かたやきはかたやきで割れ」。
よっ! 
(カン! パキッ!っと、かたやき割れる)
はいーー。
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おみごと! 
ねむ
口に入るサイズになれば、こっちのもの。
じわじわと溶かしながら食べる。
音を立てずに身を潜める忍者は、
じわじわと栄養をとるんです。
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そのじわじわがおいしいですよね。
ねむ
おいしいです。
でもお気をつけてお召し上がりください。
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はい。ではこれも、
このブースでおたのしみにということで。
ねむ
はい!
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そして、せっかくですから
「夢眠書店」のレトルトカレーも置きたいです。
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ねむ
「夢眠書店カレー アップルシナモン」味。
これ、知り合いのカレー屋さんに
弟子入りしてつくりました。
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ぼくは何度も食べてますが、
これまたクセになります。
ねむ
ありがとうございます。
こちら「神田カレーグランプリ」で、
優勝しております。
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一同
(拍手)
ねむ
ただ、子どもは食べられません。
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そうでしたっけ? 
アップルシナモン味なのに? 
ねむ
けっこう辛いから。
うちは女性がたくさん来る店なので、
冷え性で悩んでる方が多いから、
血行促進に期待できるシナモンは、
そういう悩みによさそう、
みたいな感じでもあって。
あと、わたしがシナモン好き。
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────
はい(笑)。
ねむ
子どもは一切視野に入れてません(きっぱり)。
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そうでしたかー、なるほど。
ねむ
でもですね、「夢眠書店」のカレーは、
まあちゃんのだしに関係ないだろうと。
ただこれを売るだけか? 夢眠ねむよ、と。
在庫をハケさせたいのか? と。
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売るだけでもいいとは思いますが‥‥。
ねむ
違うんです。
おおいに関係があるんです。
────
なんでしょう。
ねむ
「夢眠書店」では、
カレーうどんを出してます。
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はい。
‥‥ああ! 
ねむ
あれは、
「これカレーうどんにしたら
おいしいんちゃうかな」って、
まあちゃんがつくったんです。
そしたら、おいしい。
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だしと、すごく関係がありました。
ねむ
でしょう? 
「だしパック」でうどんをつくって、
その上に
このレトルトカレーをかければ
「夢眠書店」のカレーができます! 
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────
なるほど! 
一同
(拍手)
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ではまた、まあさんも加わって、
おふたりお並びください。
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────
最後に、今度こそおふたりから、
意気込みをうかがいましょうか。
ねむ
意気込み‥‥。



あの、まあちゃんって、
想いはすっごいあるんですけど、
なんていうんですか、
なかなか思い切れないところがあるんです、
性格的に。
まあ
うん。
後ろから蹴飛ばしてもらわんと
できないタイプなんです。
ねむ
でも蹴飛ばすにも、蹴飛ばし方があって(笑)。
まあ
たしかに、ただ蹴飛ばされても(笑)。
ねむ
ただ今回は、もうほんとに! 
こんなすばらしい舞台があるから、
思い切って蹴飛ばせます。
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そう思っていただけるとうれしいです。
ねむ
参加させていただけて感謝です。
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こちらこそです。
ねむ
姉は、あまりしゃべらないですけど、
味で表現すると思います。
わたしは口担当なので、
会場でなにか聞きたい方は妹にどうぞ。
まあ
(笑)
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ねむ
そして、四代目の妻・左智子も登場します。
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いらっしゃいます、はい。
ねむ
母はしゃべりたがりなのに怖がり、
というわたしたち姉妹の中間みたいな性格なので、
実際に会場でどんな感じになるか
わからないのですが、よろしくお願いします。
まあ
(笑)
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お母様にはご無理のないように。
でも、会場でお会いしたいです。
ねむ
‥‥母が考えてつくった「だしパック」を
たくさんの人たちが飲んでる様子を
母に見せてあげたいし、
「ほら、みんなおいしいって言ってるよ」
って言ってあげたい。
娘たちとしては、そういう気もちがあります。
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▲だしパック、花かつおは、今回のための
新パッケージです。(デザイン:ほぼ日・田口)
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ああ‥‥。
まあ
はじめての親孝行。
ねむ
初? 
わたしはしてるけど、たぶん(笑)。
まあ
うん。
わたしははじめての親孝行。
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そうなんですか?
ねむ
まあちゃん、
思いはあれど、表現が苦手だから。
まあ
そうだね(笑)。
ねむ
わたしなんか、
思いがなくてもいろいろ言えちゃうんで(笑)。
────
いやいや、そんな(笑)。
ねむ
母も姉にはずっと
「好き」とか「心配してる」とか
言わないできたんです。
でも、わたしにはぜんぶ言う。
だから、ふたりの思いはわたししか知らない。
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そういうご関係の中で、
「実際にお店を継ぐのはまあさん」
っていうのが、すてきですね。
ドラマを感じます。
ねむ
みなさん、泣いてもいいんですよ?(笑)
一同
(笑)
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────
ありがとうございます、すばらしい。
「生活のたのしみ展」がたのしみです! 
ねむ
ほんとうに、ありがとうございました!
(おわります。
生活のたのしみ展で会いしましょう!)
2026-05-19-TUE