田口商店 五代目継承の物語。 田口商店 五代目継承の物語。
下北沢にある「夢眠書店」は、
店主・夢眠ねむさんと、料理担当・まあさんが
ふたりで営んでいる本屋さんです。



ねむさんと、まあさんは、実の姉妹。



ふたりは三重県伊賀市にある老舗、
「田口商店」に生まれました。
乾物や鮮魚を販売するお店の、長女と次女です。



その「田口商店」が、
「生活のたのしみ展」に初出店します!
おいしいかつお節などを、たっぷりとご用意して。



しかもこれを機会に、代々続いた「田口商店」の屋号を、
長女・まあさんが五代目として継承するとか。
つまり、五代目として初のお仕事が、
「生活のたのしみ展2026」ということです。



なぜ、いま、継承することになったのか。
東京で活動するまあさんは、
どういうかたちで「田口商店」を継ぐのか‥‥。



継承までの経緯を、ほぼ日が追いかけました。
「生活のたのしみ展2026」にお越しくださる前に、
その物語をお読みください。



第三回 伊賀編「うわさのマシン登場」
「夢眠書店」で行った作戦会議の数カ月後、
山下、田口、宮野のほぼ日チームは、
三重県伊賀市の「田口商店」を訪ねました。
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伊賀の町並みに、
「田口商店」の屋号紋「ヤマツ」が。
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出迎えてくださったのは、
ひとあし先に到着していた夢眠ねむさん、
お姉さんの、まあさん。
そしておふたりのお母さまでした。



「遠いところをわざわざ」
「いえいえ、おしかけてすみません」
「どうぞ、お入りください」
と、はじめましてのご挨拶もそこそこに、
ぼくらはお店の中へとご案内いただきました。
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鮮魚と乾物を扱っているお店なのですが、
この日はお店がお休みの日だったので、
乾物だけが写っています。
いつもはお父様が買い付けにいく、
鮮魚も店頭に並んでいるのだそうです。
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写真
見るからにおいしそうな
花かつおや煮干しなどを眺めていると、
お母さまは、お店のほぼ中央で足を止めて、
「これなんです」
と、すこし申し訳なさそうにおっしゃいました。
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────
ん? なんでしょう? 
布がかけられていますが‥‥。
ねむ
機械ですよ、例の。
まあ
かつお節を削る。
────
あ。ああー、はいはい。
削り節の機械が、この中に。
お母さま
見えないように隠してるんです。
ねむ
隠してる(笑)。
見るとしょんぼりしちゃうから? 
お母さま
まあ、そうかな‥‥。
ねむ
ん? なんか濁してるな‥‥。
────
あの‥‥よろしければ、
見せていただけますでしょうか。
お母さま
わかりました。
(しばし、布を取りながら話す)
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────
娘さんたちには、
買うかどうかご相談してたんですよね? 
ねむ
ご相談というより、
「欲しいなぁ」って言ってたよね。
お母さま
わたしはなんでも、いつも、
「欲しいな」って言ったときには、
もう買ってあります(笑)。
ねむ
100万円で。
お母さま
100万と違うよ、140万。
まあ
え? 
ねむ
100じゃないの? 
お母さま
送料とか備品とか、
いろいろ込みで140万円くらいです。
ねむ
ふわあ~~。
────
いつごろ購入されたんですか? 
お母さま
わたし、たまたま入院したんですよ。
といっても、たいしたことなくて。
悪いとこあったんで取ったら終わりの入院で。
でも、時間があるからテレビを見てたら、
この機械の実演をやってたんです。
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────
テレビでご覧になった。
お母さま
かつお節が0.01ミリの薄さに削れますって。
────
0.01ミリ。
それはすごいんですね。
お母さま
ここの裏に工場があるんですけど、
うちにある機械では
そんなに薄くは削れません。



実演を見てたら、ふわっふわに削れてる。
「これ、ぜったい欲しい」と思いました。
時間があるから入院中にネットで調べて、
退院してきて買いました。



これです。
写真
────
わあー、すごい!
かっこいいですね。
たしかにアクリル。スケルトンです。



退院して、これを購入された。
ねむ
そういえば自動販売機を買ったのも、
お父さんの入院中だよね?
────
自動販売機。
この前うかがった、
おだしが買える自動販売機ですね。
まあ
そうです。
ここから歩いていけるところにあるんです。
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▲翌日、写真を撮りました。これが自動販売機。
お母さま
自販機も、すごく欲しかったんですよ。
でも主人に反対されて、
しばらくがまんしてたんですけど、
ある日、主人が入院したんですね。
ちょっとたいへんな病気で。
ねむ
そうそう、たいへんだった。
お母さま
手術に5時間も6時間もかかって、
すごくドキドキして待ってたんです。
それで、手術が終わって、
「どうぞ会ってください」と言われて
ベッドのところに行って、
「わたし心臓ドキドキで止まりそうやったわ」
って言ったら、お父さんが、
「今、心臓動いてるんやったら大丈夫やん」
って言ったんです。
────
すぐにお話ができたんですね。
お母さま
はい。
それを聞いたら、
「あ、これは治るわ」と思いました。
ねむ
で、チャンス到来で自販機を買った。
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お母さま
そうそう、もう心配ないと思って、
帰ってからこっそり買いました(笑)。
ねむ
すごっ。
お母さま
でも、わたし負けたんです。
────
負けた? 
お母さま
わたしは自販機だったんですけど、
主人は自販機よりたっかいバイクを買いました。
1800のバイク買って、
それに乗って帰って来たんですよ。
────
え?! 病院から? 
お母さま
そう。入院中は時間があるから、
ネットで調べて買ったって。
────
おふたりとも似ていることを(笑)。
ねむ
‥‥なんか、
自販機とバイクの話になってないですか? 
まあ
この機械の話をしにきたのに。
写真
お母さま
じゃあ、ちょっと削ってみますね。
(電源を入れる)
マシン
ウィンウィンウィンウィン‥‥。
────
回り出しました。
お母さま
ここに、かつお節を入れます‥‥。
写真
マシン
シュシュシュシュシュシュ‥‥。
お母さま
‥‥ちょっとかつお節を押します。
マシン
シュシュシュシュシュシュ‥‥。
ねむ
‥‥‥‥‥。
まあ
‥‥‥‥‥。
マシン
シュシュシュシュシュシュ‥‥。
写真
────
‥‥削れてます、たしかに薄いです。
マシン
シュシュシュシュシュシュ‥‥。
ねむ
‥‥‥‥‥。
まあ
‥‥‥‥‥。
────
‥‥こんなに時間がかかって、
ちょっとずつなんですね。
マシン
シュシュシュシュシュシュ‥‥。
写真
お母さま
そうなんですよ‥‥。



いっかい、止めます。
(電源オフ)
マシン
ウィーーン。(回転止まる)
お母さま
どうぞ、食べてみてください。
────
ありがとうございます。
では、失礼して(手を入れて表面をつまむ)。



わわわ、ふわっふわだ。
いただきます(食べる)。
写真
まあ
どうです? 
────
んん? 溶けた! 一瞬で溶けた!
‥‥で、かつおの風味が! 
すごいです、これ。
ねむ
(食べている)ほんとだー! 
まあ
(食べている)すごい‥‥。
────
すばらしい機械ですよ。
お母さま
でも、時間がかかって‥‥。
「こんなに時間かかるの?」
と言われるとちょっと傷つきます(笑)。
写真
────
あ、ご、ごめんなさい!
ねむ
でた、ナイーブ(笑)。
お母さま
だからもう、しまっとこうと。
見られんように布をかぶせてました。
────
いやいや、お母さん、
これは、すばらしく、おいしいです。
高価ですが、確かな価値があります。
もったいないですよ。
まあ
このマシンのメーカーさんのサイトで
動画を見たんですけど、
0.01ミリがどんどん削れてるんです。
────
そうですか‥‥。
ということは、きっと微調整ですね。
コツというか。
それを知れば大丈夫なはずです。
お母さま
そうなんですかねぇ。
───
メーカーさんに問い合わせます。
使い方をちゃんと教えてもらいます。
メーカーさんは、ええと‥‥
「エムズネットヤマキタ KCー4」。
写真
まあ
大阪のメーカーさんです。
───
使い方をきちんと教わって、
「生活のたのしみ展」で活躍させましょう。
お母さま
そうなるといいんですけど。
───
大丈夫です。
いい買い物をしているはずなので。



‥‥それはそうと、あの、
まだきちんとご挨拶もできていませんし、
そもそものところからのお話を
よろしいでしょうか(笑)。
まあ
そうですよね(笑)。
ねむ
みんな、いったん落ち着こう(笑)。
(落ち着きましょう。つづきます)
2026-05-14-THU