BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 今どきの祭りは……

第2回 おそるべし“とんまつり”

第3回 人みなハジケる

第4回 女の出番

第5回
消えるもの、残るもの
糸井 外国だけど、リオのカーニバルが
あんなにすごいことになってるのは
何でですかね。
森田 やはり社会的背景があって、
あそこでは、そのときでないと
ハジケられないと言うか、
そこではじめて自分を出せると言うか、
若干つらい立場にある人たちが
いっぱいいるんですね。
その人たちがチームを組み、
いわばプライドをかけて参加する。
そしてコンクールという形で、
評価されるシステムもできあがっている。
仕掛けがきちんとできていることが、
ずーっと残っていく祭りになるかどうかの
非常に大きな要素になります。
糸井 コミュニティがあるだけでは
祭りは成立しないわけで、
タイトルに近いものもいりますね。
テーマと言うか……。
森田 みんなで一緒に何かをするときの、
シンボルみたいなものがね。
そして、道具立てとして音楽や花火などもある。
糸井 人の理屈を取っ払うような……。
森田 直接、感情を揺さぶるようなものですね。
音や匂いもそうだし、疲れさせるのもそう。
伝統的な祭りで長く続いてきたものには、
仕掛けがいっぱいある。
みうら それで思い出したけど、
『ヘトマト祭り』の綱引きのとき、
判定してた人が一人いて、
どう見ても確実に赤組が勝ってるのに、
「白の勝ち!」ってやるんです。
勝敗は全部その人が勝手に決める。
これも仕掛けですね。
裸祭り系もそういうやつがいると思うんですよ。
盛り上げて喧嘩させるようにしてるもの。
森田 リーダーがしっかりしてると祭りは面白いです。
メジャーになってる祭りを見ると、
きちんとした仕掛けと同時に、
必ずリーダーシップをもつ
“祭りバカ”みたいな人たちがいる。
そういう人たちの存在が、
祭りを活性化させます。
糸井 そう考えると、矢沢永吉が今、
日本でいちばんの祭りの司祭ですね。
コンサートなんか行くと完璧に仕切ってる。
みうら そうそう。
武道館で、こっち側のファンと
あっち側のファンが喧嘩するじゃないですか。
すると、「ちょっ、ちょい待ち」って
永ちゃんが登場して、その場を仕切って、
仲良くさせてから始まりますからね。
これ、すごい祭りですよ。
森田 最初に自分が
強大なリーダーシップをとっていることを示す。
それが仕掛けになっているんですね。
みうら 最近は祭りに観光の要素も入ってきてるんで、
何か一つパンチがないと人が来ない。
それでエッチ系のやつも
日曜の昼間にやってるんです。
男女のまぐわいの儀式なんか、
多分、昔は夜中にやってたんですよ。
それが昼間だから、子どもも来てる。
で、お母さんに
「あれ、何やってはんのん」と聞いたりしててね。
糸井 困るよね。(笑)
みうら でも、それでテレビの取材があって、
人も見にくる。
秘儀みたいなものを公にすることで、
活性化を図ってるんだろうとは思いますね。
糸井 『だんじり祭り』も、僕ら、
この間まで知らなかったもの。
家を壊したとか、
テレビカメラが入るようになって、
インパクトの強さでメジャーになったけど。
森田 関西には“だんじりエリア”があって、
大阪湾岸、尼崎、神戸あたり、
ずーっとそうなんです。
岸和田が有名になりましたが。
みうら 節分も今、相撲取りとかタレントが
豆をまくじゃないですか。
それでテレビも来るし、
行事として生き残っていますよね。
巨大オチンチンが御神体の『田県祭り』は、
CNNで紹介されたらしいんです。
そしたら外国人の団体が
バスで来るようになった。
きっと、“ビッグ・コック・フェスティバル”
なんて呼ばれて、
祇園祭より有名みたいです。
大笑いして見てますけど、
内心「どうなってるんだ日本は」でしょうね。
「ここがヘンだよ」どころじゃない(笑)。
アメリカに帰って「すごかった」と言うでしょ、
また外国人が見に来る。
外国人が来ると日本人も集まるんです。
糸井 まあともかく、祭りって
「そんなことやっていいんか」というのと
隣り合わせのものじゃないとダメですね。
森田 長崎の精霊流しは、
さだまさしの歌ではしっとりしたイメージですが、
実際はメチャクチャ爆竹が鳴ってるし、
町中に煙が上がってますね。
糸井 「お祭りやってはりまんなぁ」なんて
静かに言ってるようじゃあ、
祭りとしては今後、危うい。
森田 派手さもいる。
そのためにも女性OK、
新しいものもOKにならないと。
大阪の『天神祭』なんか、
今やギャル御輿のイメージで有名になってます。
糸井 妙に立派で正しいお祭りって、
おもしろくないですね。
蹴鞠のニュース見てても、つまんなそうだもん。
みうら いや、蹴鞠で気になるのは、
衣装は平安時代なのにメガネかけてるでしょ。
『時代祭』もそうだけど、
伝統にこだわるなら、
コンタクトレンズにしとけって。
そこまで完璧にしてほしいですよ。
糸井 派手にやろうと計画したのに、
あとがつらかったのが埼玉の『秩父原人祭り』。
石器発掘が例の捏造疑惑で……。
みうら ああ……。
饅頭まで出てたのに。
開き直って、来年から
“ウソ原人祭り”をやるとウケると思いますよ。
“捏造コーナー”があって、
土にチョコエッグとか埋めるやつがいたり。
森田 「ご自由にお埋めください」ですか。(笑)
(おわり)

2003-03-30-SUN

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