BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 今どきの祭りは……

第2回 おそるべし“とんまつり”

第3回 人みなハジケる

第4回
女の出番
糸井 祭りは日常を壊すものという話がありましたけど、
僕、台風報道を見ると気持ちが高ぶるんです。
風がおさまる寸前に車で外に出て行って、
街路樹の枝が道にいっぱい落ちているのを
踏みしめながら、スローで走るときの喜び。
あれ、アーバンな祭りみたいな気がするなぁ。
森田 日常が壊れて、カオスになるわけですからね。
糸井 なんか、普段、ストレスが高いほど、
祭りって嬉しい。
みうら 自分の中での祭りはいいけど、
祭り自体は基本的に体育会系ですからね。
あのパワーは、
文科系として生きてきた僕からすると、
ちょっと怖いですよ。
その上、酒飲んでますから、ずーっと。
相撲大会なんかに
ぜったいに駆り出されたくないって感じ。
糸井 僕も、自ら御輿を担いでみたいとか、
そんな気持ちはないですね。
祭りには、一応、
基本のかたちがあるじゃないですか。
様式があって異界に行くときには、
その様式のところで
守らなきゃいけない事柄がまたある。
それが好きじゃないんですね。
森田 僕も、祭りの研究なんかしてると、
お祭り好きだとよく誤解されてます。
いえ、嫌いじゃないですよ。
でも自分が中に入ってしまったら、
祭りについて書けなくなります。
みうらさんもそうだと思うけど、
ツッコむためには、少し離れていないとね。
糸井 祭り気質が濃いような地域って、あるんですか?
なんか関西あたり、濃そうな気がしますけど。
森田 かもしれませんね。
ただ祭りそのものに関しては、
地域色があるかと思えば、
全国に祇園祭の系統が見られたり、
水かけや泥かけのように
広く分布している奇祭もある。
祭りを始めるときに、
そのときどきの流行を取り入れるでしょう。
とくに後世になるほど
情報が行き渡るようになりますから、
同じようなものが各地に伝播するんですね。
みうら とんまつり、それもエロ系に関しては、
愛知が多いですよ。
やっぱり、愛を知る……。(笑)
糸井 祭りというと
男がハジケちゃう話ばかりになりますが、
女の人はどうなんでしょう。
ハレとケで言えば、
ケを守る役割ばかりを押しつけられてますが。
森田 祇園祭だと、ちまきをつくるとか、
伝統的に裏方は女の人がしてますね。
糸井 ちまきつくるんじゃ、ハジケられないですねぇ。
森田 ハジケてたら、ちまきはできません。(笑)
糸井 どうしましょ。
森田 昔は自分が支えることで
ダンナがハジケてくれたらいいわ、というので
話はすみましたけど、今はそうはいきません。
それで、自分も表に出ていく。
参加自由型の「よさこいソーラン」系では、
7、8割が女の人です。
圧倒的に女性のほうが多い。
糸井 あれは、踊るんですか?
森田 踊ります。
みうら コギャルがやってるパラパラですよね。
森田 パラパラより、もっと激しいでしょう。
全身運動だし。
みうら ダイエットも入ってるんじゃないですか。
足腰をひねる金魚運動もある(笑)。
そう言えば沼田の『天狗祭り』では、
ものすごいデッカイ鼻をした天狗のお面を
女の人が担ぐんですよ。
糸井 群馬は女が男だからね。
みうら それで女の人がメインになる。
森田 伝統的な『だんじり祭り』でも、
神戸あたりでは、
ちょっとずつ女の人が入ってきてます。
長老の人たちに聞くと、
「しょうがないなあ、時代だから」と。
実際、今は茶髪とか紫髪の若い人たちが
やってたりしますからね。
糸井 奉納相撲があったり、
相撲も神事の祭りからきてると思いますけど、
土俵に女の人を上げないというのも、
昔からのしきたりの問題ですよね。
森田 そうなんです。
伝統と時代性、
そこの兼ね合いが難しいところですね。
みうら 相撲と言えば、愛媛県の大三島で
“一人相撲”を見ましたよ。
『抜き穂祭』という秋祭りでやってるんです。
言葉ではよく
「それは一人相撲だな」って聞きますけど。
糸井 そこでは文字通り……?
みうら 一人で相撲をとる。
「一力山」と呼ばれる人が闘うのは、
見えない「聖霊山」という神様なんです。
インビジブルな相手と
がっぷり四つに組んだり、投げられたり。
見てて、プーッと吹き出すじゃないですか。
だけど俺一人笑ってて、
まわりはクスリとも言わない。
もう麻痺してんのか、拍手するだけでね。
それで、神様が2本勝って、人間が1本勝つ。
糸井 神様と2勝1敗って、よくできてるね。
お父さんと子どもの相撲で、
「お父さん、負けちゃったよ」というような。
みうら わざと1本は負けてね。
森田 日本の神様は、
人間とかなり近いところがありましてね。
大阪の今宮神社だと、お参りに来た人が、
「えべっさん、お賽銭あげたんやから、
 ちゃんと聞いとくれなはれや」
と言って、みんなドンドン蹴飛ばしていくし、
全国のえべっさんの本社と言われている
西宮戎では、
えべっさんがお饅頭の形になってる。
神様が蹴飛ばされたり、
食べられたりしてるのって、
あんまり他の国ではないですね。
みうら 日本の神様は心が広いです。
お祭りは無礼講だし。
(つづく)

第5回 消えるもの、残るもの

2003-03-26-TUE

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