怪・その39

「早朝のエレベーター」



近所の公園にある花壇に、
水やりするボランティアをしている。

いつも早朝6時前には
終えるようなタイミングで向かう。

ある日、
いつものように水やりを終え、
自宅マンションに戻り、
エントランスでエレベーターを待っていると、
背後に人の気配が。

振り返ると、
いつの間にか初老の女性が立っている。

やっと来たエレベーターに乗り込むと、
彼女も無言で乗り込む。

「何階ですか?」と訊くと

「同じ階です」と、俯いたまま答える。

(見たことない人だけど、
こんな早朝に手ぶらで、何だろう‥‥。)

と思いつつ到着し、
先にどうぞ、と促すと、
降りて先を歩いて行く。

どこへ行くのか見届けたい気持ちと、
見てはいけないものを見ているかも?
と、気持ちがせめぎ合い、
結局、すぐ自分のうちのドアの中へ入ることに。

我が家の先は2軒しかない。

後日、両方の住人の方に早朝あったことを話すと、
そんな訪問者は居ない、と口を揃えておっしゃる。

あとで思えば、エレベーター待ちの時、
彼女が立つ位置は、
背後にある自動ドアが開くような位置。
それなのに、自動ドアは無反応だった。

その後は、まったく会うことがない。

(m)

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2023-08-29-TUE