怪・その38

「祖母の助け」



今から30年以上前、私が25歳位の頃。

その頃の女性は「クリスマスケーキ」と言われ、
25歳で結婚するのが女の花道と言われていました。

その考えを私に吹き込んだのは、母でした。
母は専業主婦で、
結婚と同時に関西から関東に移り住み
友達もおらず、
娘の結婚を願うだけの人生の何が幸せなのか。
結婚なんて絶対嫌だと思う私に
しつこく毎日

「あんたいつ結婚するの?」
「(会社の同期の)○○君はどうなの」

私は
「うるさい!」
「あんな人は絶対嫌」
と毎日言い合いを続け、
無視していたら
「誰かいるの」
「いないわよ!」
と毎日追い詰められ、
だんだん私も精神的におかしくなっていました。

その日の夜も母と言い合いし、
辛い気持ちで寝ていた明け方、
どこからともなく
「許したって〜」
という声が聞こえて来ました。

その声は、会うことも少なかった、
7、8年前に亡くなったはずの
母方の祖母のものだったと思います。

その時、とても幸せな、
ほっとした気持ちになりました。

でも目が覚めたら、
結局何も変わらない自分がいて
がっかりしたことを覚えています。

その後結婚し、口うるさい母親から逃れ、
私の人格を認めて
自由にさせてくれる主人のお陰で
気持ちも安定し、やりたい仕事も見つかり、
私の運も開けて来ました。

あまりわかりあうことの出来なかった母は
去年亡くなりました。
あの時、どうして祖母が私を
助けてくれたのかわかりませんが、
あの声がなかったら
私はどうにかなってしまっていたと思います。

でも、結婚のお陰で幸せになれたのですから、
母には感謝しないといけませんね。

(k)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る

「ほぼ日の怪談」トップへ

2023-08-29-TUE