怪・その36
「いつもの笑顔で」
以前働いていた会社は
派遣会社からの人も働いていていました。
みんな故郷から遠く離れて
この会社に来ていました。
その中の一人に
○○ちゃんという人がいました。
仕事を覚えるのも早く、
おばちゃんですが、愛嬌があり
みんなに可愛がられていました。
いつもお金のない人で、
一緒にごはんを食べに行っても私が出したり、
お金を貸したりしていましたが、
不思議と憎めない人でした。
一年くらい経った頃、
○○ちゃんは調子が悪いと病院へ行きました。
すると胃がんとわかり、しかも末期の状態でした。
入院中は面会に行ったりしましたが、
最期はホスピスで亡くなりました。
故郷とは遠く離れた場所でのお通夜でしたが、
仕事場のみんなが駆けつけ、
○○ちゃんは愛されていたんだなぁ、
と思いました。
お葬式は、仕事で出られませんでした。
たぶん、出棺の時間くらいだったと思います。
仕事の手を止め、
見るとはなしに正面のドアに目をやりました。
そこに○○ちゃんが立っていました。
いつもの笑顔で「✕✕ちゃん、ありがとう」と
手を振っていました。
もう涙が溢れて仕事になりませんでした。
イタズラ好きな○○ちゃんは
みんなのところに、
いろんなことをしながら現れたようです。
私はその時の○○ちゃんの笑顔に
今でも温かい気持ちになります。
そして支えてもらっています。
(m)