怪・その22

「仕事熱心な祖父」



もう30年前の話になります。

私が高校三年生の夏、
同居していた祖父が、
ガンのため、半年の入院の末亡くなりました。

祖父は大工をしており、
家にホコリや砂を持ち込まないようにと、
生前はいつも仕事から帰ってくると、
玄関ではなく、
お風呂の脱衣所に続く勝手口から
家に入っていました。

勝手口は家の裏手の、
倉庫兼物干し場の中にあり、
倉庫の入口から勝手口は
ちょうど家の台所のシンクに面していました。

なので、夕方台所で晩御飯の準備をしていると、
ジャリッジャリッという足音で
祖父の帰りが分かっていました。

祖父が亡くなって
しばらくした日の夕方、
私と母が台所で洗い物をしていると、
家の外、犬走りから
ジャリッという音がし出しました。

私も母も
その音に聞き覚えがあったので、
「??」と耳を澄ますと、
その足音は
私たちがいる台所の正面の倉庫の中を、
勝手口に向かって、
ジャリッジャリッと進みます。

そして、勝手口は少し高くなっていたので、
祖父お手製の木製階段が2段あるのですが、
そこから トントン と
2段上がる足音がしました。

ドアを開ける音はしませんでしたが、
2人同時に同じ音を聞いて、
「今じいちゃん帰ってきた!」と言いながら、
走って勝手口まで確認に行きました。

しかし姿はありませんでした。

不思議と怖い気持ちはなく、
それから49日がすぎる頃まで、
何度かその足音は聞こえました。

仕事熱心だった祖父は
亡くなっても仕事行ってたんかなーと
母と笑ってました。

(n)

こわいね!
Fearbookのランキングを見る

「ほぼ日の怪談」トップへ

2023-08-18-FRI