怪・その3

「理不尽な殺意」



いまから30年ほど前、大学入学して、
東京に一人住まいしていた時の話です。
入居当時は何も感じなかったのですが、
1年過ぎた辺りから、
徐々に変化が現れてきました。

帰宅してみると物の配置が変わっていたり、
無くなっていたり、
明らかに、今まで人がいたな?
と、いう気配があったり。
酷いときは、一升瓶が割れていたり、
部屋の中を、荒らされていたり。

と、おかしな現象が、現れてきました。

友人も泊まりに来ると、
寝ている時、足を触られたり、
引っ張られたりと。

私には霊感があるようで、
今までにも何度も幽霊は見てきましたし、
また殺されそうになった事もあります。

ただ、この部屋にいる何かの存在感は、
感じるのですが、何なのか、
また、なぜここに居るのか?
が、まったく解りませんでした。

怪奇現象が、現れてからのある夏、
夜中の3時頃だったと思います。

誰かが私の両方の足首を、握っています。

その両手が、
少しずつ上にあがって来ました。

身体は、金縛りのせいで全く動きません。

タオルケットには、明らかに誰かがが、
潜り来んでいるのでしょう。
ふっくらと膨らんでいます。

その人? が、胸まで、
さらにタオルケットから這い出して来た時には、
冷や汗で全身が、濡れていました。

でて来たのは、髪の長い女性でした。

その眼はつり上がり、
物凄い怨みや念を感じました。
事のおこりを、じっと見ていた私は、
その女性と、
しっかり眼が合ってしまいました。

するとその女性は、
ゆっくりと私の耳元に顔を近づけ、

“おまえを、殺してやる‥‥”

と、ゆっくり、はっきりと言い、
薄気味悪い笑いを浮かべ、
ゆっくりと消えていきました。

さすがに身の危険を感じた私は、
知り合いから魔除けの御札をいただき、
教えていただいた作法にのっとり、
御札を貼ったのです。

が、帰宅してみると、
御札は、
ビリビリに破かれ散乱してました。

出てきた女性に心当たりはまったく無いし、
当時、婚約者もいましたので、
彼女は一切部屋には近づけないようにして、
早々に物件を探し、引っ越ししました。

その後、
婚約者とは何故か関係が上手くいかなくなり、
結局は、破談。

仕事中、看板を脚立に乗って拭いている時、

“お前なんか、死んじゃえ‥‥”

と、胸を強い力で突き飛ばされ、
危うく、車の行き来が激しい車道に
落ちそうになったり。

しばらくは、
理不尽な殺意に付きまとわれました。

今でも、たまに嫌な感覚
(見られている、睨まれている)はありますが、
それが、あの女性なのか、
はたまた別な何かなのか、
それはわかりません。

(J)

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2023-08-01-TUE