怪・その7

「気持ちに隙があると」



今住んでいるアパートに引っ越して
初めて入浴していた時のことです。

目を閉じて下を向き
シャンプーを流している間ずっと、
左の肩の辺りから
誰かが私の横顔を覗いている気配がしていました。

顔のすごく近くに気配を感じていて、
怖かったなと思いながら顔を上げると、
後ろから誰かに触られました。

左肩から右肩に向かって、
ピアノを一気に弾く時のような素早い動きでした。

乾いた指の感触もあり、
さすがに怖くなりすぐに浴室から出ました。

また別の日には、
夜中にふと目を覚ますと
いつも寝る時にしている耳栓が片方外れていて、
あ、外れてるなーと思いながら
常夜灯の小さい光をボーっと眺めていたら、
耳栓をしていない方の耳に急に、
ゴーッというかボコボコというか、
水の中に潜った時のように
こもった音が聞こえてきました。

あ、これは本当にやばい、
と考えるより先に体が反応して
すぐ起き上がると音は止みました。

アパートの斜め向かいにはお寺があるので、
シャンプーに夢中になっている時とか、
寝ていて耳栓が外れているとか、
どこか気持ちに隙があると
変なものが寄ってくるのかなと思い、
気をつけて過ごすようにしています。
(k)

こわいね!
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