怪・その52
「狐に化かされた」
離島で生まれ育った母が
幼い頃のことです。
そのころお風呂は薪でお湯を沸かしていて、
大変なので、近所で「もらい風呂」
(ご近所さんがお風呂を沸かしたとき、
使わせてもらうこと)を
させてもらうことが多かったそうです。
その日も自宅から100メートルほど山手にある隣家へ、
祖母が長男と母を連れて、
もらい風呂に行くことにしました。
祖父は島の会合にでていて、
次男は留守番だったそうです。
隣家で脱衣していると、
自宅の方から「火事だー!!」と
次男の叫ぶ声が聞こえてきて、
祖母は慌てて、
それこそ坂道を転がる勢いで自宅に戻ったそうです。
しかし家で火は出ておらず、
あわてた祖母の様子に
ポカンとする次男がいたそうです。
「狐に化かされた」。
田舎ではそういったことが珍しくなかったそうです。
(いそだ)