怪・その50

「黒い服の男」



これは今から8年前の事です。

当時私の祖母は持病の糖尿病が悪化し、
80歳を過ぎた頃に失明したため、
老人介護施設に入所。

私の母はその介護施設のご厚意で
施設の事務員として働きながら、
自分の親の面倒を見ておりました。

ある日の夕方、祖母が施設の自室のベッドで
横になっていると、様子を見に来た母に

「私の枕元にずっと立っている黒い服の男は誰だい?」

と聞いてきたそうです。

目が見えないはずの祖母が
「黒い服の男」というので、母は驚きましたが、
何か夢か幻でも見ているのだろうと
「そんな人いないよ」と答えました。

しかし祖母は

「いや、誰か来てる、真っ黒い人。
黒い帽子に黒い服。
何もしゃべらない、枕元でずっと私を見ている。」

と繰り返し話すので、
不思議に思ったそうですが、
「大丈夫、誰もいないよ」と
適当にあしらっていたそうです。

その2日後、祖母は亡くなりました。

母は葬儀の席でこの話を親族にしたところ、
親族は口々に
「旦那さん(私の祖父)が迎えに来てくれたんだねぇ」
と言っていました。

しかし、母は私には

「絶対違う。おばあちゃんはあの時、
まるで知らない人が来ているような言い方だったし、
なぜかとても怖がってた」

と話していました。

あの時、盲目の祖母だけに見えていた
黒い服の男は何者だったのでしょうか。

(さりゅ)

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2021-09-08-WED