怪・その15

「駅への道で」



雨が降ってきたから、
車で駅まで迎えに来てと、
バイト帰りの息子からLINEがありました。

時間は日付の変わる頃でした。

家の近くには田んぼや水車があり、
元々、人通りは多くない道です。

駅へ向かう道の右側に
少しだけアパートや住宅が建ち、
左側には小さな川と、
その奥は、
人が入れないような切立った山があります。

道の右手に、
白髪のおばあさんが
傘もささずに立っているのが見えました。

こんな時間におばあさんが?
と思いましたが、
道を渡るようでしたので、私は停車しました。

おばあさんは
私の車の前を
右から左にゆっくり歩きはじめ、
渡り切る頃、
すうっと消えました。

周りを見回しましたが
おばあさんはどこにもいません。

私は夢でも見てるのか、
いや人が見えたから停車したはずなのに、
でもこの時間に
山に向かっていく用事ってある‥‥?

急いで息子を迎えに行き、
そのおばあさんが消えた場所で
ここでいなくなったと話しました。

すると息子が

「お母さん、
この辺りは出るんだと思うよ。
僕はそこのアパートの
バイクが止まってる時だけ
女の人の霊を見るよ。

だからそのバイクに
憑いているのかなって思ってる。
最近はそのバイクがないから
その霊も見ないけど」

私は、女の人は
生きている人間じゃないのか、
と聞きましたが、
息子は、
絶対に生きている人間じゃない、と。

今もその道は通ります。

でも、
雨の日の夜中の運転は
やっぱり怖いです。

(c)

こわいね!
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2021-08-11-WED