怪・その13

「長生きの理由」



私が小5の時の話になります。

その日もいつも通りに終わり、
家族6人、川の字で床に着いていました。

兄弟の寝息が荒く、ふと目を覚ましたのですが、
何かがこちらを見ているのです。

当時の家はかなり狭く、
居間と寝室が
レースのカーテンで区切られていました。

気配を感じたのは、
区切られたカーテンの向こう側でした。
自然と目を向けると、
そこには、
ぼんやり人の形をした何かが立っていたのです。

細くて背の高い、
しかも黒のシルクハット、
黒のスーツにマントを身に纏い、
こちらを見ていました。

私は悪い夢を見たのだろうと何度も頬をつねり、
夢であって欲しいと自分に言い聞かせ、
やっとの思いでまた
区切られたカーテンの向こう側を見たのです。

「いる!!」

身体が硬直し
言葉を発せないくらいの恐怖でした。

もし、近づいてきたらと思うと、
ガタガタと震えが止まらず、
ひたすら目を閉じ
朝が来るのを待つしかありませんでした。

「なにをされるか、わからない」
「家族全員が危ない」

そんな思いが頭をよぎるのですが、
ただひたすら怖かったのを今でも覚えています。

翌朝、恐怖を引きずりながら学校に行き、
クラスの優等生の男の子に
昨夜の恐怖体験として話をしたのです。

その子は、黙って私の話を聞いた後、

「お前は死神を見たんだよ。
だからお前は長生きをするよ」

そう言いました。

数年後、狭い母屋の隣に
父がプレハブを建ててくれて、
4つに区切り、子供部屋ができたのですが、
妹が自分の部屋で同じものを見たと、
大人になってから話してくれたのです。

細くて背の高い、
黒いシルクハットに
黒のスーツとマントを身に纏った何かを見たと。

今現在、私は3度、
死にかけた経験を経て生きています。

そして、弟や夫、
周りの友人や知人はみな、
若くしてなくなっています。

(f)

こわいね!
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2021-08-11-WED