怪・その36

「突き当たりの家」

わたしがまだ
小学校4年生くらいだった
30年以上むかしのことです。

当時の住まいは、両親と3人で暮らす
平家建ての小さな借家で、
比較的大きな2軒の家の、
塀と塀に挟まれた
道幅1メートル程度の小路の
突き当たりに建っていました。

通り抜けができないので、
この小路に入って来るのは、
我が家に来る人だけです。

ある日、真夜中に目が覚めてしまったわたしは
その小路を、家に向かって来るような
奇妙なうめき声に気づきました。

聞いた途端に鳥肌が立つような声です。

とても苦しそうに唸りながら、
少しずつ家に近づいて来ます。
小路には砂利が敷かれているのに、
足音はまったく聞こえません。

生きている人間ではない!

と、直感的に思った怖がりのわたしは
布団を頭からかぶって震えながら
早く何処かへ行ってください、と祈りました。

わたしの部屋は
玄関のすぐ隣りだったのですが、
うめき声は
玄関前で
ピタリと立ち止まったようです。

声の主は絶え間なくうめき続け、
わたしは冷や汗の出そうな恐怖で
隣りの部屋で寝ている両親のところへ駆け込もうか
迷いました。

でも、部屋から出たら
それと鉢合わせするような気がして
布団をかぶったまま震えることしかできません。

しばらく耐えていたら、それは、
うめきながら小路を戻るように
遠ざかって行きました。

誰かにその話しをする事もなく、
10代の終わりに差し掛かり、
海外でホームステイ中に知り合った
同い年の女の子とお泊まり会をした時に、
その子は霊感がとても強いと言うので
その時の体験を話してみました。

すると、

その街で大きな火事があった時に
亡くなった女性だね、

と言うのです。

出身地が違うので、
彼女は知らないはずなのですが、
確かにわたしが当時住んでいた街には
ずいぶんむかしに
◯◯大火と呼ばれる大火事がありました。

そして、あの夜は
その霊によってわたしが
危険な目に遭いそうだったのを
ついているふたりの守護霊が
守ってくれたのだそうです。

それ以降も何度か怖い目に遭っているのですが、
彼女がしてくれた守護霊の話を聞いてからは
きっと守ってくれているような気がして
なんとなく安心しています。

(y)

こわいね!
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2020-08-27-THU